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チート渦巻く世界から  作者: 田中 隆司
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案内?

「おう!来たか!調子はどうだ?今の状況わかってっか?」

「うわっ!」

 びっくりしたー。意識が戻っていきなり大声出されたんだから当たり前だ。

 今いる場所は簡単に言うと部屋。

 見た感じ最低限しか家具はなく、小綺麗な感じだ。

 お世辞にも広いとは言えないが生活する分には申し分ないくらいの広さはある。

「おい!あたりを見渡す暇があるなら質問に答えろよ!聞いてんのか!?」

 そしてさっきから俺に話しかけている少年が一人。

 十中八九この少年が神様の言っていた案内人なのだろう。

 この少年に見放されたら俺は途方に暮れるしかなくなってしまう。

 少々……いや、かなり高圧的ではあるがおとなしく従っていたほうが身のためというものだろう。

「あ、はい。今神様にチートをもらって転生させてもらったところです。」

 あれ?チート持ってるってこと言ってよかったのかな?

 でも神様の口ぶり的に神様とつながってるっぽいし神の使徒みたいなもんなんじゃないかと思うしそんな問題はないはず。

「ああ、いい、いい、敬語なんか使うな。話しにくいし好きじゃねぇからな。で?あとは?」

 よかった。チートについてはスルーっぽい。

 敬語を使わなくてもいいのも正直助かる。

 中学生くらいの少年に敬語を使うのは違和感あったしな。

 けど、あとは?ってなに?ほかになんかあるの?

「え?他にはなんも聞いてないんだけど……?」

 そういう他ないよね?

 だってそれ以外言われてないんだもの。

 実は俺が聞き逃したってこと……はないな。

 長時間話したわけじゃないしあんな状況で神様の話を聞き逃すほど馬鹿じゃないし、聞き流したりするほど神経図太くないし。

「はぁ!?本気で言ってんのか!?そんなわけねぇだろ!?もしそうだとしたらお前の神はどうなってんだよ!無責任にもほどがあるぞ!?どういうことだよ!」

 どういうことはこっちのセリフだよ!?

 何!?神様説明してないことがまだあるの!?

 しかも案内人の慌てぶりから相当大切なこと言ってなかったって感じがするんだけど!?

「い、いや、どうしたも俺は神様からそれしか聞いてないんだけど……詳しくは案内人がいるからそっちに聞けって。」

 恐る恐るいうと案内人は一瞬フリーズしたかと思うと大きくため息をついて考え込んでしまった。

「あ、あの!できれば説明してほしいんだけど?俺はまだ何がどうなってるのかぜんぜんわかってないし!」

 俺はまだこの世界に来てから五分もたっていない。

 なんでこの小屋にいるのか、これから何をすればいいのか、これからどこに行けばいいのかもわかってないんだ。

 もしできることならなんで転生させてもらえたのかや、どうして俺が転生する必要があったのかも聞きたい。

「わかってるっての!ちょっと待て!今どうするのが一番いいか考えてっから!今は黙ってろ!」

「えぇ……」

 ま、まぁ、ちゃんと話してくれるっていうならせかす必要はないよな?

 最初に思ったよりもいい人っぽいし。

 けど悩むほどってことは想像以上に重大な内容が多くある気がするなぁ。

 まさか転生してすぐにこんなことになるなんて思ってもみなかった。

 あ!そういえば異世界に転生させてもらったってことを言い忘れてた!さっき俺は転生させてもらったとしか言ってなかったじゃないか!

 もしかして案内人はこの世界にある魔法や獣人とかについて説明しようとしてくれてるんじゃないだろうか?

 だとしたらこんなに悩んでもらって申し訳なかったなぁ。

「あ、あの、さっき言いわ――――」

「よし!決めた!ちょっと来い!現地研修するのが一番わかりやすい!」

 考え込んでずっとブツブツ独り言を言っていた案内人が俺の言葉を遮っていった。

 いうが早いか俺に近くに素早く近づき俺の手を取った。

 次の瞬間俺の視界が小綺麗な部屋からあたり一面緑色の草原に切り替わった。

「え!?今のってまさか瞬間移動!?すごい!俺もできるようになるのか!?」

 まさかこんなに早く魔法を体験できるなんて!

 俺も使えるようになりたいなぁ!

 いや、いきなりこんなすごい魔法じゃなくたっていい!

 早く魔法が使ってみたい!

「うるせぇ!興奮するのはわかるが黙ってみてろ!ただ、俺のそばを離れんじゃねぇぞ!?」

 そんなこと言われても無理に決まってる!

 異世界に来たって実感が体を駆け巡ってうずうずしてくる!

「いきなり何しに来たんだい?君ら。」

 誰だ!?初の村人とのエンカウント!?

 あたりを見渡すと離れたところに少年がいるのがわかる。

 浮かれてていて目に入っていなかったようだ。

「んなことみりゃわかんだろ?新人研修だよ。」

 ん?なんだ新人研修って?

 新人はもしかしなくても俺だろうけど新人ってどういうことだ?

 まぁ、新しく入ってきた人ではあるけど……?

「ああ、なるほど。でもいいのかい?お荷物抱えたまま僕に勝てると思ってる?」

 え?どういうこと!?

 なに!?今から戦うの!?なんで!?

 いきなり草原で出会った村人となんで戦わなくちゃなんないの!?

 急展開にもほどがあるだろう!?

「当然だろ?」

 案内人さん!?なにを平然と戦う宣言しちゃってんですか!?

 案内人は仮にも神の使徒だし村人なんかに負けるわけないだろうけど……っていうか村人相手に神の使徒が挑むって明らかにおかしいよね!?

 一瞬で村人蒸発するんじゃないか?

 そんな俺の心配をよそに二人は会話を続けていく。

「へぇー、なめられたものだね。それなら俺に勝ってみろよっ!」

 村人が語気を強めた瞬間俺の視界がまた一瞬で切り替わった。

 手を握ったままだったこともあり、さっき味わった感覚なので案内人の瞬間移動だとわかる。

 けどなんでだ?

 村人が何かしたのか?

「はっ!お前の攻撃なんて当たらねぇよ!これでもくらえ!」

 え!?今攻撃されたの!?

 俺の目にはなんも映らなかったんだけど!?

 もしかしてこの村人めちゃくちゃ強い!?

 俺が混乱している間に案内人が火の玉を四個ほど生み出して村人に投げつける!

 熱っ!結構火の玉と距離があったのに俺のところまで熱が届きやがった!

 それが真っすぐ村人に飛んでいき直撃した!

 これはあの村人ほんとに蒸発するんじゃないか!?

「こんなの効くわけないだろう?なめてるのかい?」

 嘘っ!?火の玉食らって平然としてやがる!?

 実はあの火の玉こけおどしだったとか?

 いやいや、そんなはずない!だって草原がめっちゃ燃えてんだもん!

 あれ?でも火が村人の周りに近づかない?

「おい!見ててわかったか!?あいつは不可視のバリアを張れるんだ!バリアの形をどこまで変えられるかはわかんねぇが、少なくともバリアを遠くに展開できるうえに広さはほぼ無限!破壊は例外を除いて不可能って代物だ!」

 はぁ!?なんだその能力!

 村人が持っていていい力じゃねぇじゃんか!

 絶対おかしい!

「なんだよそれ!破壊不可で広さ無限で出し入れ自由なんてチートじゃないか!」

 もしかしてこのレベルがこの世界の常識ってことか!?

 だとしたらチートがなきゃやっていけないってのもなっとくだ。

 だけど理不尽すぎやしませんかねぇ!

「ああそうだよ!正真正銘のチートだよ!あいつも転生者で神様からチートをもらってんだよ!」

 おいおい聞いてねぇぞ!?

 いや、まぁ俺もそうだから人のことは言えないけどさ!

 いや、でも、ねぇ!?

 そういうことは先に言っておいてくれないかなぁ!

「なにいってるんだか。君もおんなじなくせに。」

 えっとー……この君ってのは俺のことじゃないよな?

 てことは案内人が!?

「お前も転生者なのか!?」

 どうなってんだよ!

 しかも言い方からしてチートも持ってんだろ!?

 チート持ち転生者多すぎやしないか!?

「なんだい?新人君はそんなことも知らないのかい?」

 知らないも何も教えてもらってないんだけど!?

「ああそうだよ。どうもこいつにチートを与えた神がまるで説明をしなかったようだ。そんであとは俺に丸投げしてきやがった。」

「ああ、なるほど、それで新人研修か。大変だね。でもそれは俺が手を抜く理由にはならないかな。」

 こんどは言い切る前に視界が切り替わった。

 また瞬間移動したようだ。

 たぶん戦闘再開したんだよな?

 でも俺はまだ今の事態をまったくのみこめてないんだけど!?

 そもそもなんでこいつら殺しあってんだよ!

 俺の心境をよそに戦闘は続いている。

 こんどは村人改め転生者Bが連続攻撃を仕掛けていようで何度も何度も高速で瞬間移動が繰り返されている。

 はっきり言おう。

 視界がグルングルンして吐き気がする。

「ほらほら!逃げてるばかりじゃ僕には勝てないよ?」

「はっ!たかだかランキング十八位の雑魚に誰が逃げてるって?身の程はわきまえろ!」

 ランキングってなんだよ!また知らない設定か!?

 いや……今はそんなことどうだっていい。

 早く座って休みたい……。

「まるで成長せずにランキングが上がってない人が何言ってんだか。それも魔力無限なんて最強チートもってるくせにさ。むしろすごいですよ?」

 案内人改め転生者A!あんたそんな強いチート持ってんの!?

 あとで聞かなきゃ……ってまじで限界。

 もういい?ここで吐いていい?

「つけあがってんじゃねぇぞ?俺が本気出したらお前なんか――――」

 おえぇぇっ!

 ごめん、堪えきれなかったわ。

 感情の赴くままに四つん這いになり胃の中のものを吐き出す。

「おまっ!いきなり手を放すんじゃねぇ!」

 手を離したことで俺だけその場に取り残される。

「あ」

 誰の口から出た言葉かはわからなかった。

 次の瞬間俺は不可視のバリアに押しつぶされた。

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