黒い薔薇
「おーなんてお美し方なんでしょうか?ニューアムステルではあまり見かけない美人だ」
「いえいえ、どうもありがとうございます」
白いドレスに身を包み、潜入先の宮殿のパーティにエレナは潜入していた。
確かにそのお淑やかな立ち振る舞いに端麗な顔つきをして背も高いエレナはこういう場に来れば、よく声を掛けられる。
男性だけではなく、女性からもモテる。
以前、男装をして変装すると以前とある令嬢が恋に落ちてしまったとかもあった。
完全に貴族の令嬢を演じている。
夫カイウスが失踪するまでは、
舞台女優ナタリア・ホフマンという芸名で帝都グランベルグでは評判が高かった。
なぜか、それはエレナは生まれた国で、
国立演劇団の少年団員だった経験もあり高い演技力を持っており、将来有望だったという経歴もあるからだ。
エレナは軽やかに人混みを避けながら、パーティのメイン会場となっているホールを抜けていった。
屋敷の所どこにパーティのは似合わない武装をした私服の警備員がちらほら、確認することができた。
外の庭で先に潜入していたエージェントと合流予定となっているためそこに向かった。
「黒い」
周りに誰もいないことをは確認できたが、暗闇から声が聞こえてきた。
「薔薇は可憐い咲く」
合言葉の次の言葉がそう聞こえてきたので、エレナは声のする方に振り返ったするとそこにはメイド服に身を包む20代ぐらいの女性が立っていたよく見ると彼女には見覚えがあった。
「あら、ベス久々じゃない」
「あ、本当ですね。エレナさん」
ベスは警察時代に同じパトカーに乗って街を警邏していた相棒だ。彼女はまだニューアムステル市警察に籍を置いているということはこの作戦は公式に政府も一部噛んでいることが推測できた。
「とりあえず、怪しまれるのもいやだから。簡単にいいますよ」
ベスはそう言って、内偵捜査で分かった情報の共有を始めた。
王女はこの島の屋敷の中にある、地下牢の中に閉じ込められてるのをベス自身が確認していること、監視の警備はその地下牢がある地下室にはいないこと、そして、地下室への入り口は一回のエントランスに入った男子トイレの奥の個室であることを聞けた。
そして、ベスは今はエレナとは関係ない少女の連続失踪事件について捜査をしているらしくその関係でここに潜入していることも聞いた。
そして、個々の島の持ち主であるエリザベート夫人は帝国本土で幾度となく連続して貴族令嬢を誘拐しては反政府勢力に受け渡し、金銭を受理していたという話を聞いた。
その反政府勢力とは過去に夫が失踪した作戦にかかわっていた組織。自由解放軍であった。
幾度かニューアムステル市警で、
貴族令嬢の失踪事件や身代金目的の誘拐事件を取り扱いはしていたようだが、今回は王女殿下ということです秘密エージェント経由で任務を依頼したようだ。
エレナは、ベスからの情報を聞いて彼女が用意してくれた。武器一式と男装に変装する道具を貰った。
拐われた王女の名前はクリスティーナというらしい。彼女は麗人が好きなようで、カッコいい男性に救出されたいとベスに話したそうだ。
エレナは苦笑いをして、変装を変えた。
変装を変えれたエレナはベスに投げキッスをしてその場を去った。ベスは顔を赤らめてため息をついていた。
「まぁーなんてカッコいいのかしら....」
男装したエレナは今度は、パーティにいるご婦人方からそう言う感想を耳にすることのなった。
元々は背が高く男役が多かったので、本来の姿と言える変装だった。
歩き方も仕草もその役になりきる。
今回は頭の中で若い貴族の爽やかな青年をイメージしていた。
ため息が溢れる中、エレナは監禁先に繋がる男子トイレへと向かった。
トイレの中には誰もいないようで、個室の中に入ったエレナは懐に用意した小型の拳銃を取り出して先に消音器を取り付けた。
そして、壁に同化していたドアノブを見つけ地下室へと進んでいった。