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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

赤色

作者: 和泉野 喜一
掲載日:2018/08/06

夏のホラー2018参加作品です!

よろしくお願い致します。

「旅行代理店に勤めてるんだったら車ぐらい買って、自分の足で色々見て回ったら?」

この春、大学を卒業し都内の旅行代理店に就職した〝タケシ〞は友人と久々の酒を酌み交わしていた。

「車ねぇ・・・」

あまり気に止めることもなく、この日は遅くまで呑んだ。


それから数日経ったある日。

仕事を終え帰宅すると、郵便受けに1枚のチラシが入っていた。

「中古車か。そういえばアイツも車がどうとか言っていたな。」

友人の言葉を思い出した。

部屋に入り、冷蔵庫から缶ビールを取り出しパソコンの前に座る。

ネクタイを緩めながら〝中古車〞の文字を打つ。

「いっぱいあるんだな・・・」

膨大な検索結果に見る気が失せ電源を落とす。

「車なんて無くても不自由はないし、金掛かるからな。」

一旦忘れることとした。


翌日。

コンビニで中古車情報誌を購入し、出社した。

休憩中にだらだらとページを捲っていると、

「お前、車買うのか?」

「あ、先輩。いや、そのつもりは無いんですけど・・・いつかはいるかなって思って」

「車はいいぞ!好きな時に好きな場所へ行けるし、彼女と2人っきりになれるからな!」

「俺、彼女いないんで・・・」

「バカ!そういうこともあるって話だよ!」

「先輩は車持ってるんですか?」

「持ってるよ。本当はスポーツタイプに乗りたいけど、ウチは子供がいるからミニバンなんだよ。」

「そっか。生活によって車も変わるのか・・・」

「若い内しか乗れない車乗っとけよ!相談には乗ってやるから、」

アドバイスを貰い雑誌を閉じた。


その日の午後、

「タケシ、そろそろ行くぞ!」

旅行プランの企画を練るため2泊3日の出張へと出掛ける。

目的地は九州。

実はタケシは九州の出身であり、今回の目的地は実家の近所であった。

スケジュールをこなし、宿へ戻る。

「あ、先輩。実は地元の友人と会うこととなってまして・・・」

「おう!行って来い!」

送り出され待ち合わせの居酒屋へ。


「久しぶりだな!」

数人の友人と挨拶を交わし席につく。

皆の近況を聞きながら楽しい時間が過ぎていった。

「お前は今何やってるの?」

1人の友人に問う。

「俺は今、中古車売ってんだよ。」

「へぇー。そういえば俺、車買おうか悩んでんだけど・・・」

そう思うに至った経緯を話す。

「だったら東京の店紹介するよ!」

「よろしく!」


帰京し、さっそく紹介された店へと行く。

そこは都心から少し離れた場所にある小さな店であった。

「ごめんください。」

店に入り一通り話をして、表にある中古車を見て回る。

すると、1台の車に目が行った。

「あの、この車・・・」

「ああ、これ。値段は安いですけど、まだまだしっかりしてますよ。」

「はぁ・・・。」

あまりピンと来る物もなく帰路についた。


その日の夜。

仕事に備え床につくが、何故か今日見た車が頭から離れなかった。

「車を持ったら少しはモテるかな?」

そんなことを考えているうちに意識が遠のく。


気が付くと車を運転していた。

「あれ?この車は?」

キョロキョロしていると隣に赤いワンピースを着た髪の長い女性が座っていることに気付く。

(えっ!?誰?!)

一瞬驚き、戸惑いはしたものの不思議と違和感はなかった。

車内は暗く顔はよく見えないが、星形のピアスが見える。

視線を窓の外に移すと辺りも真っ暗であった。

かろうじてヘッドライトに照らされた白線だけが見える。

「ねぇ・・・」

女性が話そうとした瞬間、目覚ましの音が聞こえた。

「なんだ、夢か・・・」

それから数日間、同じ夢を見るようになった。

必ず同じ所で途切れる。

(あの娘は何て言ったんだろう?ていうか誰だったんだ?もしかして未来の彼女とか・・・まさかな。)


そんなことを考えながら仕事をしていると

「そういえばお前、車はどうなったんだ?」

先輩が声を掛けてきた。

「いや実は・・・」

友人に紹介された店へ行ったこと。

夢にそこで見た車と見知らぬ女性が出てきたことを話した。

「その車と縁があるんだよ!」

「そうなんですかねぇ。」

「絶対そうだって!車は縁だぞ!」


先輩の言葉に押され、再び車屋へ足を運んだ。

もう1度ちゃんと車を見てみようと思っただけであったが、

「あの、この車が欲しいんですが・・・」

自然と言葉が出た。

契約を済ませ、あとは納車を待つのみとなった。


その日も同じ夢を見た。

いや、少し違った。

女性が微笑んでいるように感じたのだ。

相変わらず顔は見えない。

しかし、明らかに雰囲気が違った。

「ねぇ、貴方・・・」

目覚ましが鳴り目が覚める。

(今まで〝ねぇ〞しか聞こえなかったのに!車を買ったからか?)


何故かわからないがドキドキした。

「先輩!俺、車買いましたよ!」

「そうか!今度乗せてくれよ!」

それからは納車が待ち遠しくなった。


待ちに待った納車の日。

到着は昼過ぎの予定であったが、朝早く目が覚めた。

旅行雑誌を読みドライブコースを考えながら待つ。

電話が鳴り、近くまで来たと知らされ表へ出た。

すると1台のトラックが目の前で止まった。

一通り説明を受け、鍵を受け取った。


さっそく近くのガソリンスタンドまで乗った。

「やっぱマイカーっていいな!」

会社へ車を乗って行くことは出来ない。

そのため、帰宅すると車に乗り込み近所を軽く流し楽しんだ。

しかし、不思議なことに納車されてから夢を見なくなった。

(車が待ち遠しかっただけなのかな?あの娘がこの車だったとか?ま、いいか。)

暫くすると夢のことさえ忘れていた。


「マイカーはどうよ?」

「先輩!楽しいですね!もっと早く買えばよかったです!」

「そうか!だが事故には気を付けろよ!」

車を手に入れてから、仕事は順調。おまけに彼女もできた。

(やっぱ縁だったんだな!)


もうすぐ長期連休へと入る。

せっかくだからと、車で九州まで帰省する計画を立てた。

「長距離は危ないよ!」

「大丈夫だって!」

彼女の注意を軽く流した。


出発の日。

「本当に大丈夫?気を付けてよ!」

「大丈夫だって!じゃ行って来る!」

意気揚々と車を発進させた。

一気に走れば九州までは約12時間程かかる。

しかし、観光を兼ねて各地を周りながらであったため、実家へは2日後到着の予定であった。


高速に乗り進路を西へ。

日はまだ高く、交通量も多いが渋滞には巻き込まれなかった。

数時間走らせ、昼食を取る。

「この辺は・・・」

観光マップを読み目的地を決めた。

1度高速を降り観光をする。

そんなことを繰り返しながら、ゆっくりと九州へ向かう。


「最後に絶景を見て行こう!」

観光マップにあった山中の展望台へ向かった。

綺麗な夕日を写真に納め、再び出発する。

日が落ち辺りはすっかり暗くなっていた。

(どこか宿ないかな)

辺りを見渡すが森が広がるのみ。

携帯を見ると圏外。

ナビはついていない。

(失敗したなあ)

とりあえず車を走らせる。


暫くすると強烈な眠気に襲われた。

(朝早かったし、だいぶ運転したからな・・・)

このままでは危険だと判断し、車を脇に停め仮眠を取ることに。

シートを倒すと直ぐにスーッと意識が遠のくのがわかる。

しかし、次の瞬間再びハンドルを握っていた。

(あれ?たしか仮眠を取ろうと・・・)

キョロキョロしていると隣に赤いワンピースを着た髪の長い女性が座っていることに気付く。

(あ!この娘は!)

何かを確かめる様に視線を窓の外に移す。

辺りは真っ暗で、かろうじてヘッドライトに照らされた白線だけが見える。

(やっぱり!)

夢だということに気が付くのに時間はかからなかった。

(いつもと同じなら・・・)

この先の展開はわかっていた。

しかし、

「ねぇ、貴方・・・」

(ここで目が覚める!・・・あれ?)

予想とは裏腹に途切れない。

女性の言葉が続く。

「貴方は赤って好き?」

ゆっくりとこちらを見た女性の顔は悲惨な物であった。

左側頭部は大きく陥没し、左頬は肉が削がれ歯茎が剥き出しになり顎からは血が滴っていた。

目線を落とすと、その血は女性の襟元へと落ちていた。

赤だと思っていたワンピース。

本当は白色であり、血で染まっていたことに気付く。

「ひぃっ!」

その姿に驚き、仰け反る。

しかし、狭い車内に逃げ場は無い。

車外に出ようとドアノブを探すが見当たらない。

(これは夢だ!これは夢だ!)

必死に言い聞かせる。

「ねぇ、貴方は赤色って好き?」

再び問いながら、女性はタケシの方へと身を乗り出してきた。

「うわぁーー!」

女性の顔が近づいてくる。

「やめろーー!」

叫んだ瞬間、映像が途切れ目が覚めた。

慌てて辺りを見渡すが1人っきりの車内。

全身汗だくであった。

「こ、これはシャレになんないって!」

エンジンを掛け車を走らせる。

携帯は相変わらず圏外。

どこでもいいから明るい所へ出ようと必死に走らせる。


ふとあることに気付いた。

「この道って夢と同じじゃ・・・」

辺りは深い森で真っ暗。

ヘッドライトの灯りが照らす白線が見えるのみ。

「いや!あれは夢だ!」

なるべく考えないようにする。

しかし、走れども走れども森を抜けない。

(どうなってんだよ!)

その時、ふと後ろが明るくなった気がした。

(後続車か?)

少し安心し、バックミラーを見る。

しかし車はいない。

気のせいかと視線を前へ戻すと同時に、隣に気配を感じた。

(冗談じゃねえぞ・・・!)

隣を見ない様、必死にハンドルを握る。

左半身に冷たさを感じた。

(振り向くな!振り向くな!)

前だけを見ることに集中した。

すると遠くに灯りが見えた。

(やった!街だ!)

そう思うのと同時に

「ねぇ、貴方は赤って好き?」

耳元ではっきりと聞こえた。

(ああ、ダメだ・・・)

そこで意識は途絶えた。


(なんだ?うるさいな・・・)

目を開くと、風景が上から下へと流れてゆく。

(なんだこりゃ?)

周りで何か聞こえるが聞き取れない。

再び意識は途絶えた。


次に目を覚ますと見知らぬ白い天井があった。

(ここはどこだ?)

「あ!目が覚めたのね!」

声の方を見ると彼女がいた。

「何でいるの?っていうかここは?」

「ここは病院よ!覚えてない?」

「確か、実家に帰る途中に展望台に寄って・・・」

「そう。その展望台がある山の麓で事故して担ぎ込まれたのよ!今、お医者さんと、お母さん呼んでくるからね!」

(そうか。俺、事故ったのか・・・)

横を見ると窓辺に自分の服が置いてあった。

白い服は血で赤く染まっていた。

その瞬間全ての記憶が甦る。

(赤いワンピース・・・!)

頭を振り考えないようにする。


幸い右手の骨折と頭を縫う程度の怪我で済み、直ぐに退院できた。

「そういえば、俺の車は?」

「それがね、ほとんど壊れていないのよ。」

「えっ?」

事故の後、実家に運ばれていた車と再会した。

前のバンパーが擦れた程度である。

(本当に壊れてない・・・!)

不思議に思いつつ、車内を覗く。

「あれ?綺麗だな?」

「血で汚れたままじゃ可哀想だから掃除したのよ!」

「そっか!ありがとう!」

ドアを開け、運転席に座る。

ふと真ん中の肘掛けを見るとシミの様なものが見えた。

(なんだ?)

よく見ると手の形をしているようだ。

しかし方向がおかしい。

指の方向が助手席から運転席へ向いていた。

それに気付いた瞬間ゾクッと寒気が走った。

(確かあの時身を乗り出して・・・)

「あ!そうだ!退院したばかりで何だけど、これ何!?」

突然、彼女は怒ったようにタケシにある物を見せた。

手には星形のピアスがあった。

目にした瞬間、全身の血の気が引いた。

「そ、それ、どうしたの?」

「助手席の下で見つけたのよ!あなたまさか浮気を・・・」

彼女の声など耳に入らず、ただただ恐怖が襲う。


その後、乗る気を失ったため地元で修理をして売却した。

それからは夢を見ることもなくなった。


事故から数年経ち、彼女と結婚し子供ができた。

仕事も辞め、地元に移り済みミニバンに乗っている。

バックミラーを見ると、ぐっすりと眠る子供と奥さんの姿。

(幸せだな。)

そんなことを思いながら車を走らせていると、あの時と同じ車とすれ違った。

一瞬戸惑いはしたが、思い違いだろうと気持ちを切り替える。


もしかすると乗り手が替わり、今も走っているかもしれない。


「ねぇ、貴方は赤色って好き?」

貴方には声が聞こえていませんか?

初のホラーですがいかがでしたでしょうか?

宜しければ応援お願い致します。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ∀・)これまでに読んだことないよう個性的な文体でしたね。独特の個性を作品のなかで放っていました。あっさりと落としこむ感じのホラーでしたね。わかり易く綴られているのも好印象でした。 [気にな…
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