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5.くまのぬいぐるみが人生について語りだしてきたときの反応

これは巷で話題になっている話のくだりをネタにし、お酒とつまみを飲み食いしながら宴の席ではなした…佐藤君のしょうもない内容の物語である。




5.くまのぬいぐるみが人生について語りだしてきたときの反応


 これは、僕が親元を離れて一人暮らしを始めた時の話である。


 「ありがとう故郷、ありがとうチンポジ2」


 故郷と枕にしていた丸い形のぬいぐるみ、チンポジ2に別れを告げ、僕は電車に乗った。


 「まもなく、発車いたします」


 電車のアナウンスが車内に響き渡ると同時に電車は走り始めた。


 車窓からは今まで見慣れた景色と沢山の思い出が見えていた。


 思わず目から涙が零れ落ちる…


 それにかまうこともなく、電車は走り続ける。


 まるで、これから先の人生を表しているかのように…


 そんなことを考えているからだろうか…、僕は涙をハンカチでふき取ると急に意識を失った…


 「…お…、おい、おいおいおい、起きろ佐藤!」


 耳元に大音量で響き渡った声にびっくりしながら僕は目を覚ました。


 街灯一つのない夜の田んぼ道を思い出すほど真っ暗な風景が辺り一面広がっていた。


 「佐藤、どこみてんだよ、こっちみろよこっち…って痛い痛い…」


 今度は僕の上半身の下あたりから声が聞こえた。


 かなり声質的にも耳障りだったので思いっきり後ろに体重をかけたところ、何かが僕の体にぶつかった…


 「いて~な~、何するんだよ…害児か?害児か!?」


 「お前の方が害児だよゴミが…ってチンポジマン!?」


 そこには僕の友達であり、高校を卒業するまで話しかけ続けていたくまのぬいぐるみ…チンポジマンの姿がそこにはあった。


 それにしてもおかしい…僕が話しかけた時は声なんか出さずに僕とテレパシー(妄想)で話していたチンポジマンが今、目の前で僕に話しかけてきているのだ。


 「やっと気づいたか佐藤よ、俺はあんたに大事な事を伝えに来た。よく聞いておけ!」


 僕とチンポジマンの久しぶりの再会を楽しむのもつかの間、チンポジマンから一方的な話が始まった…

  

 「俺があんたと話せるのはこれが最初で最後だと我が神ちゃんちぇいが言っていた。俺が伝えたいことはあんたがこの先ずっと苦労するということだ。ただの苦労なら別に気にしなかったのだが、あんたの場合の苦労はとても過酷だ。俺が詳細を話すと契約違反で死刑だから話せないが、いじめは日常茶飯事、職場はどこへ行っても不運に見舞われ、恋愛に関しても最悪だ。もしもこの場で引き返すなら神ちゃんちぇいがその運命のしがらみを幸せな方へ修正してくれるというが…」


 「僕のぬいぐるみ如きが僕の人生語るんじゃね~よ、僕は引き返さない。何があっても…」


 思わず口が出てしまった…


 やはり自分のことを偉そうに語られると僕はキレてしまうらしい。


 「本当にそれでいいのか佐藤…」


 予想外の回答に頭が混乱していたチンポジマンはおどおどしながら尋ねてきた。


 「ああ、これでいいんんだ…キラッ…」


 僕はチンポジマンに白い歯をみせながらナルシスト風にかっこよく言ってみた。


 「わかった。それなら最後に、俺をあんたのそばにずっと置いていてくれ、少しはいい人生歩ませてやるからよ…」


 チンポジマンも負けず劣らず、かっこよく返答してきた。


 「じゃあな、我が主佐藤よ…」


 「ま…まって…チンポジマ…」


 くまのぬいぐるみ、チンポジマンが消えた途端、景色が真っ白に変化した。


 「佐藤よ…、またくるのですよ…」


 チンポジマンとは違う…顔は見えなかったが大きな天使のような人物からそう言われた時、僕は目が覚めた。


 そこは電車の車内だった。


 電車は走り続けていて、携帯を確認すると昼には乗り換える駅に到着予定だったのに、もう日が沈み始めていた。


 この時事件は起こっていた。


 車内を見渡すと、人が全員倒れていて、運転席にいる運転手は何かにとりつかれているかのように運転していたのだった。


 しかも、電車は駅に停止することもなく同じ路線をループし続けていた。


 僕はこの時パニック状態になり、すぐに携帯で警察を呼んだあと過呼吸になりその場に倒れこんだ。


 後から知ったことなのだが、僕の乗っていた電車は何者かに襲撃、運転手はその時に洗脳され、乗客は薬物か何かで眠らされていたということだった。


 この事件は大きく報道されたが、あまり有名にならずに終わった。


 この後無事に僕は目的地までたどり着くことができた。


 チンポジマンを連れて…


 

 あれから数年後…


 「おい佐藤、色んな部署で問題を起こしまくってるあんたは私の部署で働かせるに値しない!お前は異動だ。さっさと支度しろ!!」


 「しねくそじじいが…」


 「ぁあ、なんかいったか!?」


 「いえ、何も…」



 僕、佐藤はいつも通り色んな部署に飛ばされているが、毎日充実した生活を送っている。


 

 チンポジマンから言われたことは現実になったかもしれないが、それでも僕は色んな人と、色んな仲間と、色んなぬいぐるみと、色んな建物とともに生活している。



 僕は思った…




 この素晴らしい生活に、心からの感謝を…


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