第一話 入学式と一人の少女
1年B組の教室に僕は入った。この教室から僕の高校生活が始まる。
教壇には、黒いスーツ姿の一人の教師が立っていた。
白と薄い青色の縞模様のネクタイをしている。
身長はそこまで大きくはない。
肌は薄く焼けていてスポーツマンであることがわかる。
顔は整っていて、女子には人気そうだ。
まだ20代だろうか?
クラスメイトが30人ほど席に着いている。何人か僕を一瞥した。
僕が最後の一人だったようだ。
僕は、教師の指示に従い、名前の貼られている席に着いた。
出席番号だろうか?
机には数字の8番が貼られている。
教室は、とても静かだ。
周りを見渡すと、みんな緊張しているのが伝わってくる。
「今日から君たちの担任となる。西島陸だ。よろしく」
「9時20分になったら、体育館に行くから、もう少し待ってね」
と先生はいった。
入学式は30分から行われる。それまでは、教室で待機のようだ。
先生が話し終えた後、元の静けさに戻った。教室の丸い時計を確認する。
時刻は、午前9時10分。
あと10分。始まるまで20分もある。
僕は、長いなと思いつつ、周りを見渡してみた。
モジモジした子や、リボンが気になるのか何度も結び直している子もいる。
僕はその時、一人の少女と目が合った。
何秒間か目が合い、恥ずかしそうに逸らされた。
(どこかであったことあるかな?)
と僕は考えた。
後ろでは何かを話している生徒がいる。もう友達になったのだろうか。
僕は、見渡すのをやめて時計の針を眺めていることにした。
それから少し時間が経過した、、、
その時、前に座っている子が振り返って、僕に話しかけてきた。
「僕、大槻蒼っていうんだ。よろしくね!」
と蒼はいった。
女の子みたいな名前で、友達が多そうな子だなと僕は思った。
こういう子は誰とでも仲良くなれる。
「うん、、僕は、〇〇。よろしくね」
と僕はいった。
「なんか、みんな静かだよね。お葬式みたいだね」
と誰にも聞こえないように、小さな声で蒼は言った。
「みんな緊張してるんだよ。えっと、蒼くんは緊張しないんだね」
と僕はいった。
「違うよー、僕も緊張してる」
「緊張しているから話しかけてるだ」
「それと蒼でいいよ!」
と蒼はいった。
「うん、わかった。蒼って呼ぶね」
「へ~、緊張しているようには見えないな」
「蒼って友達多そう」
と僕はいった。
「別に多くないよー」
と微笑みながら蒼は答えた。
「もうそろそろ行くから、廊下に机の番号順に並んでくれー!」
「席順に一列でいいからな」
と先生は大きな声で伝えた。
腕時計を確認しながら先生は廊下を出た。
僕は、時計を確認した。
時刻は、午前9時18分。少し早いなと僕は思った。
先生の指示通りに僕を含めたクラスメイトは廊下へ出た。
廊下に席順に一列に並んだ。
あの数字は、出席番号で合っていたらしい。
席順のままだから、前には蒼が来た。出席番号は7番なのだろう。
僕は、蒼に話しかけようとした。
その時、後ろから僕は声を掛けられた。
振り返えって見ると2人の少年が僕を見ていた。
「ねえ、君って〇〇線で来てたよね、さっき見かけたんだ!」
「俺は、北村敦。よろしくね!」
「俺は、川口敬一郎。よろしく」
「うん、僕は〇〇。よろしくね」
さっき、後ろで話していたのはこの2人だったようだ。
声が一緒である。
もう一度、先生が腕時計を確認して僕達は体育館に向かった。。。
体育館前まで来て、音楽とともに僕達は入場をした。
親御さんや先生方などに祝われながら、自分たちの席に座った。
司会が始まりを告げ、入学式が始まった。
校長先生やPTA、地域の方のお話などが始まった。
これがまた長い。。。
話が終わると校歌を歌った。
中学の時の入学式でも思ったが一年生に校歌を歌わせるのはどうかと思う。
入学早々、歌詞なんてわかるわけがない。
と僕は文句を思いつつ、時間は過ぎていった。。。
午前11時40分頃。入学式が終わった。
退屈で長い時間だった。長時間、椅子に座っていたためお尻が痛い。
(卒業式の時は早く終わってくれといいな)
とまだまだ先のことを僕は願った。
教室に戻り、それから一人ひとりの自己紹介を行った。
チャラそうな男の子から気弱な女の子。
オタクやスポーツマンなど、とにかく幅広く、面白いクラスになると思った。
最初は、みんな緊張していたが、これで少しは緊張がほぐれたようだ。
「自己紹介も終わったことだし、明日の連絡を伝えるぞ~」
と欠伸をしながら先生はいった。
眠そうだ。あまり寝れていないのかもしれない。
(そういえば、いつから終礼っていうようになったかな?)
と、どうでもいいことを僕は考えた。
小学生の時は、「帰りの会」と言っていたのを懐古する。
先生が連絡事項を告げ終え、終礼は終わった。
みんな、それぞれ教室を出た。
廊下では、親達が待っていて、その中から僕は母を見つけた。
「デパートでお昼と買い物して帰りましょ!」
と母は言った。
「海鮮食べて早く帰ろよ」
と僕は疲れたようにいった。
「そうね海鮮もいいわね、駅周辺を探してみましょ」
といい、携帯電話で調べることにした。
僕達は、駅に向かうことにした。
駅前は、お年寄りや制服を着た親子で溢れかえっていた。
お目当ての海鮮屋さんは思っていたよりも空いていて昼食を食べることができた。
僕は、鉄火丼で、母はサーモン丼を食べた。
鉄火丼は口の中で溶けるようで美味しかった。
母のサーモン丼も脂がのっていて美味しそうだった。
お昼を終え、僕達はデパートに向かった。
母は、お土産を買うために1階にいるからと言った。
僕は、本屋に行きたいと言い、デパートの1階で別れた。
僕は、本屋に向うため、エスカレーターで4階に昇った。
4階を歩いているうちに、本屋に前に着いた。
(広いし、大きなー)
と本屋に入りながら僕は思っていた。
地元の本屋が小さいから、大きく感じたのかもしれない。
これなら探している本も見つかるだろうと僕は思った。
僕は、本を探すため小説コーナーに向かった。
(どこにあるかなー?)
と表紙を一つ一つを確認していた。
探している最中、一人の少女が本を手にして読んでいるのが目に入った。
その子は、教室で目が合った子だった。
(何を読んでるのか訊いてみようかな)
と僕は気になった。
近づこうとした時!彼女と目が合った。
彼女は、本を戻して、逃げるように本屋を後にした。
「なんか嫌われてることしたかな?、、、」
と僕はなぜか少し悲しくなった。
僕は、彼女のいた本棚まで来て、何を読んでいたのか興味本位で確認した。
その本は、村上春樹さんの「ノルウェイの森」だった。
僕はこの小説を読んだことがある。僕の好きな作家の一人だ。
(彼女も好きなのだろうか?)
と首をかしげて僕は考えた。
僕は、本を戻して、探している小説を探した。
すぐに、お目当ての小説は見つかった。
僕は、本屋を出て、母のいる1階に向かうことにした。
母は、すぐに見つかった。
家族のために甘いお菓子を買っていた。
僕達は、デパートを出た。
僕は、携帯電話を出して時間を確認することにした。
時刻は、午後14時00分だった。
僕達は、駅に向かい改札を通って、電車に乗った。
電車での帰り道、流れていく景色を眺めながら僕は考えていた。
夢に出てきたあの少女のことを。。。