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グレイを愛してよ、  作者: 上森葉月
第2章
18/26

2-5 運命(1)

 翌日も天気は良く、外からの陽の光が僅かに部屋の中に入り込む。目覚めたリリィが食卓のある部屋に向かうと、おばぁは例の割烹着を着ながら朝ごはんをつくっていた。真紀もいる。


「おはよう、リリィ。」


 そういったのは真紀だった。おばぁもその声でリリィのことに気付き、おはようと声を掛けた。

 ご飯が完成し、三人で食卓を囲む。


「この割烹着、実はベルにもらったものなのよ。」

「え、そうだったの。」


 長くおばぁが使っていたその割烹着は、ベルから貰ったものだった。だからこそ、ずっと使っていたのだ。


「あの、すいません。」


 リリィの横に座っている真紀が右手を少し上げながら、おばぁに問う。


「ベルさんとは、友人でいらっしゃったんですか?」


 そういえばベルとどんな関係だったのかを聞いていない。


「彼女とは、そうね、友人ではあったわ。まぁ、今思っても不思議な関係ね。」

「どうゆうこと?」


 リリィが思わず、尋ねる。


「私、昔スティフォール家のメイドとして働いていたのよ。それでベルと出会ったの。向こうはお嬢様で、こっちは庶民なのに、なぜだか気が合ってね。主人とメイドという関係を越えて、いつの間にか友人になってたわ。」

「おばぁ、メイドさんだったの!」


 思い返せば、家事一般をはじめ手際よく、何でもテキパキとこなしていた。それはメイドの頃に培われたものだったのか。なんとなく合点がいき、納得してしまう。

 正面に座っていたおばぁが口を開いた。


「そういえばリリィ。どうしてSTグループのビルに行くことになったの?」

「それは……。」


 おばぁにそうなるに至った経緯を一通り話した。ここから発ったあの日、新しい家にたどり着く前に街中を散策しようと駅から歩いていたら、一人の男性を見つけたこと。その男性は、リリィの名を聞き、日常からの逸脱といって面白いものを見せてくれたこと。そのあと、その男性に美術展に行き写真を撮ってきてほしいと頼まれたこと。その美術展で真紀と出会い、スティフォール家の名に気付き、帰ってくるきっかけになったということ。


「へぇ、不思議な男性だね。名前はなんていうの?」

「ヤマさん。本名は確か、山津愁っていったはず。フォトグラファーなんだって。」

「えっ……。」


 おばぁは驚いた表情になり、リリィを見つめる。リリィもそんな反応を予想もしていなかったため、思わずおばぁのことを見つめる。


「ど、どうしたの?」

「リリィ、ベル・ローザ・スティフォールという女性があなたの母親だっていう話は昨日したわ。私もそれを伝えるのでいっぱいいっぱいになったし、あなたともそれ以上深く話すような感じではなかったから、言わなかったの。」

「おばぁ、いったい何のこと?」


 おばぁは真剣な表情で、なおも続ける。


「あなたの母親はベル・ローザ・スティフォール。そして、あなたの父親は、山津愁という人なの。リリィの出会ったヤマという人。おそらくその人がそう。」



……続く

次話、10/27(金)19:00更新。

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