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サクラ咲く。  作者: 好意 椎
学生編<平和>
23/26

戦いです!

カミーユの模擬戦開始の言葉に、サジとクサビは構える。

だが、相手であるジンは腕を組んで2人を見ているだけだった。

「ジン殿。何故構えない?」

サジは構えないジンに問いかける。

サジとしても、カミーユが言ったからではなく、本心で正々堂々と戦いたいため、戦う準備をしない相手に攻撃を仕掛けたくはなかった。

「....すまないが怒らないで聞いてくれるか?」

「ああ。なんだ?」

「...先手を譲る。そして二人の一番強い技を放ってくれ。だが勘違いしないでくれ。別に二人が弱いから技を受けても問題無いと思って言っているわけじゃない。」

「じゃあどういう意味だこらぁ!!」

ジンに対して剥き出しの怒りの感情を放つクサビを見つつ、ジンはその理由を話す。

「俺の目標は、この世界で誰よりも強くなり、主人を守ること。その為には越えなきゃいけない壁がまだたくさんある。だから二人には悪いが、ここで俺の踏み台になってもらう。俺が次の段階の強さに進む為に。」

ジンは鋭い視線で二人をみる。

そこには二人に対して悪い感情は一切見られない。

「ふっ。.......クサビ。あれを使うぞ。協力してくれ。」

「あぁ!?お前マジで言ってんのか!?あれを使ったらあいつ死ぬかも知れねえし、大体なんで俺がお前なんかの頼みを....」

「クサビ。私たちは貴族だ。その誇りを胸に今まで私は生きてきた。貴族の誇りとしてジン殿の挑戦を受けたい。それに私もジン殿と同じで強くなりたいと願っている。同じように思っているジン殿の思いを叶えてあげたい。」

サジはとなりにいるクサビを見る。

サジは知っている。

昔から仲の悪いクサビも、本当は自分と同じ思いで強くなりたいと願っていることを。

不真面目な態度を取っているが、実際はものすごい努力家である事を。

「....けっ!死んでも俺は責任はとらないからな。」

「もとよりそれはジン殿も承知なはず。そうであろう?」

「もちろんだ。例え死んでしまってもそれは俺がそれまでの人間だって事だ。自分の弱さを呪うことはあっても、二人を恨むことはない。」

ジンははっきりとした口調で二人に自分の気持ちを告げる。

ジンは知っている。

己の境遇から、この世界が弱肉強食の世界である事を。

人は死ぬ。それを自分の親が自分にその身をもって教えてくれた。

幼い自分には死ぬということがあまり理解できていなかったが、両親の死でそれがどう言うことか理解できた。

死なない為にはどうすればいいか?

大切な人ができたからこそ、ジンはそれを恐れた。

もう失いたくない。

幼かったジンは、大切な者が亡くなることを想像して布団の中で涙したこともあった。

そして必至にどうすればいいかを考えた。

思いついた答えは単純なものだった。

自分が強くなり、何者にも負けなければいい。

それが小さい時にジンが導き出した考えだ。

だからジンは死にものぐるいで修行をした。

そして強者を多く見て来た。

この世には自分がいくら背伸びしても届かない天井がたくさんあると言うことも理解していた。

だから自分が殺されたとしても、それは相手が悪いのではなく、自分が弱いからと思うようになった。


そのせいでより、力への渇望が大きくなる。

自分の主人は人が傷つくのを嫌う。

ましてや、死んでしまったら意図も簡単に彼女の心を壊すだろう。

だから死ねない。

だから強くなる。

自分が殺されても相手を恨む気は無い。

だが弱い自分を呪わない為に。

大切な人が傷つかないように。

「....まあジン君もサジ君とクサビ君も物騒な話をしているが、結界のお陰で死ぬことはないからあまり熱くならないようにね?....」

カミーユが声をかけるが、聞こえてないのか反応はない。

「ではいくぞ。ジン殿。....クサビ。やるぞ。」

「ああ。......ジン。俺たちが今から放つ技は万物を切ることができる。」

二人が放つ気が、大きく膨れ上がっていく。

それは、普通なら15歳の子供が放てるような気ではない。

一流と呼ばれている術師が放つそれとなんら遜色はない。

二つの気はゆっくりとサジは右手、クサビは左手に気が集められていく。

「だからジン殿。対処ができないと思ったら逃げてくれ。そうしないと死ぬから。」

二人は居合のような構えになり、ジンを見る。

ジンは二人の放つ光がどんどん強くなっていくのを確認する。

(こいつはすげぇ。離れてるのに肌がピリピリして来る。こいつは本気でいかねえとマジで死ぬな。)

ジンは体全体に自分の気を巡らる。

瞬時に、ジンの気はジンの身体を覆っていく。

それは先程の二人の気と同じくらいでかいものだ。

(まだだ。もっと集中させろ!!!)

「....はあ!!!!」

ジンは気合の掛け声を出し、気を爆発させる。

たちまちジンの気は、まるで天空に届くように柱となって上空に放たれる。

「....さすがジン殿だ。なあ?」

「ああ!認めねえ訳にはいかねえな!!くそ!!まさか同年代相手で自分が挑戦者になるなんてな!!くそ!!!」

「ああ!!そうだなクサビ!!...いくぞ!ジン殿!!」

二人は左右対称で居合の構えを取る。


「....!?なっ!?その構えは!!君たち待ちたまえ!!!」

カミーユは二人が放つ術に見当がついたのか焦って止めようとするがすでにそれは遅かった。


「「神剣術!蛇王十字斬り!!」」


二人は同時に、己が手に集めた気を放つ。

二人が放った気は名前の通り、十字の形でジンに襲いかかる。

ジンの視界にはすでに二人の気の刃しか見えない。

ジンの目の前は、急にスローモーションになったかの様に時間の流れが遅くなる様な感じがした。


(こいつはすげぇ。)


迫り来る気の刃は、自分の頬をチリチリとさせる。

二人の気を見て、ある程度は予想しているつもりだったが、この術はジンが思ったより何倍も強かった。

そして時間が遅くなる様な感じは過去に何度か体験したことがあった。

それはナギとの修行で死にそうになった時だ。

この術は自分を殺すことができる術。

そうジンは自分の中で意識した時、ジンの中で何かが弾ける。

それはまるで大きな水の流れが、今まで勢いを抑えていたダムを決壊させる様に。

ジンの中で気の量が格段に上がり、今まで見せてきた気の量の倍以上に膨れ上がる。

「...ジン君。ランちゃん、まさか...」

「ええ。サクラちゃん。ナギ様の封印が解けたみたいですわ。」

ジンはランほどの術の才はなかった。

だがそれでもナギはジンを徹底的に修行した。

それはサクラの従者になるからだけではなく、己を守るために。


ジンには術の才能はない。

だがそれを補うほどの術力がジンにはあった。

己が身体を蝕むほどの術力が。

その事にナギが気づいたのは術の修行をつけている時だった。

能力検査ではランとジンの二人には差があると言う報告を受けてはいなかったが、修行をしているうちにナギは違和感を感じた。

ジンは、ランと同じ量の修行を行なっていたのだが、ランがへばっているのに、ジンにはまだ余裕があるようだった。

最初は男女の差か、才能の違いかと思った。

ランは殆どの術を、一度か二度で物にしていった。

まさに天才といって過言ではなかった。

だがジンはなかなか形にする事が出来なかった。

それなので最初ナギはジンの才能が、ランに比べて劣っているため、力が有り余っているのかと思った。


だがすぐにナギは思い直す。

普通なら術を使うのに慣れてない者は、自分の中にある術力を過剰に消費してしまうことを。

それは熟練の術師でも起きてしまう事だ。

それほど、術を使うということは高度なコントロールが必要な事なのだ。

それに気づいたナギは、もう一度ジンを見る。

彼の中の術力の流れを。

予想通り、ジンは術に必要な術力を過剰に消費して発動していたのだ。

本来、術にはその術を発動するのに必要な術力が決まっている。

そして術を発動するには、術力をコントロールする技術が必要不可欠となる。

コントロール出来ないと、今のジンの様に発動しないからだ。

もちろん、術力を込めれば込めるほど威力を増すものもあるが、そういった術は上位の術である。

だが今ジンが練習しているのは下位の術であるため、過剰に込められた術力では上手く発動する事が出来ないのだ。

その事に気付いたナギは、ジンにもう一度能力検査を受けさせた。

だが今回は属性などの検査ではなく、体内にある術力量を調べる検査だ。

その結果はその場にいた、全ての人が驚く結果であった。

元首ナギは、この国最強の術師。

その座は、オウカ亡き後でも揺らいだことはない最強の術師。

彼が最強と言われる所以には、その術力量が関係していた。

その量はまさに規格外。

術力量が種族中でも多いと言われている妖族でも、彼の前ではその優位が無くなってしまうほど、彼は規格外だった。

だからこそ、今目の前で起こったことを見ている者は信じられなかった。

サクラの従者、ジン。

彼の叩き出した数値は、ナギの数値の倍を叩き出していた。

その数値を見たナギは、間違いがないか念のためもう一度検査したが、結果は変わらなかった。

それからナギは、ジンの修行内容を増やす事にした。

ジンの身体を強化するための修行の割合を多くした。

そしてジンの身体に、三つの封印術を施した。

強大すぎる術力は術師の身体に負担が大きい。

その事はナギが一番よく知っているからだ。


そして今、第一の封印が解ける。

三つの封印術には、ある条件が揃わないと解けない様になっている。

第一の封印はジンが命の危険を感じた時、解ける仕組みだ。

そしてジンは第一の封印にプラスしてもう一つ術を仕込んでいた。

それは時間遅延術。

ジンが命の危険を感じた時、対処するために施した術だ。

ジンの思考はそのままで、周りの時間の流れを遅くする、高等術だ。


迫り来る二人の術に対処するために、ジンは己の術力を大量に使う。

「うおおおおおおおおお!!!!」


ジンはその術力を使い、自分の前方に出す。

ジンから出る大量の術力は分厚い壁となり、サジとクサビが放った術とぶつかる。

その衝撃は凄まじく、カミーユが模擬戦が始まる前に周りに被害が出ない様に張った「守りの壁」を激しく揺さぶる。

「ちっ!?これが15歳の放つ術の威力か!?」

守りの壁に少しずつ、亀裂が入っていく。

壊れない様に、カミーユはもう一度、守りの壁に術力を込め、強化する。

すると亀裂は塞がっていくが、今度は違うところに亀裂が入っていく。

カミーユは次々に出てくる亀裂を、術力を使い塞いでいく。

(これ以上は彼らの身も危なくなる!そろそろ止めなければ!!)

カミーユは中の三人を止めるべく術力を高めていき、守りの壁の中に入ろうとした時、カミーユは中からの視線に気づく。

それはジンの視線だった。

その視線はカミーユを睨みつけ、余計な事をするなと言っているかに見えた。


(邪魔するな!!!バカエルフ!!!)

ジンは介入しようと術力を高めたカミーユに視線で訴える。

ジンは純粋にこの状態を喜んでいた。

自分にここまで力を使わせてくれる存在は、ナギとカミーユしかいなかった。

本当ならここにランの名前も入るが、ジンとしてはサクラとランは大切な存在なため、力を出すことはできない。

だからこそ同年代でここまでの力を出せる存在がいるというのは、ジンには初めてのことなので嬉しかった。

(ここまで力を出させてくれて、感謝する!!)

ジンは心の中で二人に感謝をし、第二の封印を解く。

第二の封印の解除は自分の意識で解く事ができる。

そしてジンの身体の中に溢れる術力が嵐となって身体の外に吹き荒れる。

(くっ!やはりまだ早いか!自分の力とはいえ、なんてじゃじゃ馬だ!)

その力はジンの手から離れる様に暴れ出そうとする。

だがジンは、その手綱を離さない様に力を振り絞り制御する。

目の前の術を破るために。

「かぁぁぁぁぁああああああ!!!!」

ジンは己の術力を二人の合体術にぶつける。

先ほどよりもさらに強い衝撃が壁にぶつかり、壁を壊そうとする!

「.....くっ!仕方ない!!大地に眠りし、精霊たちよ!!我にその力を貸したまえ!!」

カミーユは精霊の力を借りる精霊術を発動し、守りの壁を強化していく。

精霊の力を使った壁は、先ほどまで衝撃に耐えられず、亀裂が入っていた壁とは比べものにならないほど強度が上がり、周りの生徒を守る。

「「いっけぇぇーーーーー!!」」

「うおおおおおおおおおおお!!」

ジンの術力と二人の術は、その決着をつけるため、威力が上がっていく。

ジンの術力とサジとクサビの術はぶつかり合い、次第にその威力を増していき、そしてその中心部から強い光が、あたりを包み広がっていく。

「まずい!みんな!!伏せるんだ!!!」

カミーユが叫んだ瞬間、そこから爆発が起こった。

その衝撃は凄まじく、精霊の力を借りていなければ、確実に壁を壊し、その場にいた全員が巻き込まれてしまうほどの威力であった。

「じっジン君!!」

サクラは目に涙を浮かべ、ジンの名前を叫び爆発の中心部である場所を見る。

だが爆発直後なため、粉塵が舞い、中がどうなっているのか見えない。

サクラは居ても立っても居られず、ジンの元にいこうとするが、ランがサクラの目の前に立って、通せんぼをする。

「ランちゃん!じっジン君が死んじゃう!!」

「大丈夫ですわ。サクラちゃん。あのバカがあの程度で死ぬはずありませんわ。.....ほら。」

ランは粉塵が舞う方を指差し、サクラにそっちを見るように促す。

サクラはランが指をさした方を見ると、サジとクサビを抱えたジンが、苦笑いしながらサクラを見ていたのだった。

「....ジン君....」

「ご心配をおかけして申し訳ありません。サクラ様!」

サクラは目に涙を浮かべ、ジンに怪我がないか見るが、服が少し破れているだけで怪我はないことにホッとする。

そんなサクラの様子に内心心配してもらって嬉しいジンは頬を赤く染めながら、サクラに謝罪をするのだった。

「....くっ!?いつ!私は一体...」

「おっ?気がついたか。サジ。よし。今降ろすぞ?」

「....そうか。俺は....俺たちは負けたのか....」

「クサビも起きたか。二人とも降ろすぞ。」

意識を取り戻した二人を肩から降ろすと、サジとクサビの二人は、ジンに頭を下げた。

「サジはわかるが、クサビは意外だな。」

「ふん!俺だって認めるべきものはしっかり認めるさ!!......ちょっかいかけてすまなかった。俺はお前が学級委員になる事を認める。」

「なんでお前が上から目線で言ってるんだ。全く。....ジン殿。今回は私のわがままに付き合わせてしまい申し訳なかった。お陰でこれからの目標を明確にする事が出来た。感謝する。」

「へっ!いいってことよ!....ちなみに目標はなんだ?」

「決まっている。ジン殿を倒し、学級委員の座につくことだ。」

「....いいぜ。俺はいつでも挑戦を受ける。だからいつでも来い。」

サジとジンは互いに手を取り握手をする。

(なんとか、無事に終わりましたね。....このクラスはなにかと不安な要素が多いな。何か起こる前に早く担任を連れて来なければ大変なことになるな。)

カミーユは、このクラスが今後どんな事を巻き起こすのか、楽しみであり、不安でもあるため、早急に担任を連れてくる事を心に誓うのであった。

寒くて辛い

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