あわわ!です!
(まったく....めんどくさいですわ。)
ランは目の前で起こっている出来事に内心で悪態をつきつつ、この状況をどう対処するか考えていた。
ランとジンの目の前では3対3で睨み合いをしていた。
何故こうなってしまったのか?
それは少しだけ前に遡る。
ランとジンはナミに言われたように、教室にみんなが集まったところで、自分たちが学級委員になった事、また委員を決めることをみんなに伝えた。
二人の実力を知っているクラスメート達は、学級委員にランとジンが選ばれた事に対して、不満を表に出すものは誰もいなかったので、わりかしここまではスムーズに進行できていた。
だがホームルームの半ばあたりで、問題が起きてしまった。
そもそもの始りはジンに対して、睨み合いをしている片方が、学級委員をやらして欲しいと言ったことだった。
「.......俺が学級委員じゃ不満てことか?確か名前は.....」
「......アメノサジだ。君の実力は俺も知っている。君の実力が不足だと思っているわけではない。ただやはり何もしないでただ譲るのは俺の性分として認められないだけだ。だから是非挑戦させてほしい。」
サジの目は真っ直ぐジンを見ている。
ジンはサジの必死さに、学級委員になる事についてのメリットを思い出す。
この学園では、学級委員=学年で最強の称号となる。
それは学園に、養子を送っている貴族達にとって大切なことだった。
自分の家には学園で学級委員になったものがいる。
つまり、将来的に元首になれるかもしれない逸材がいると言っても過言ではないからだ。
そのため、毎年学級委員を決めるこの時は、乱闘騒ぎになったりするのも珍しくはないのだった。
だが今年はランとジンが試験で規格外の力を見せたため、ほとんどのものは納得するしかなかったのだ。
(なかなかおもしれえやつだな。楽しめそうだ。)
ジンはサジの言葉を聞き、真意を知り、その不器用な性格に好感を持ち、サジの挑戦を受けようと思い受けて立つと言おうとしたら、横から野次が入ってしまい、言うことが出来なかった。
「弱いくせに何粋がってんだか。お前ごときが叶うわけないだろ。これだから現実が見えない野郎は嫌なんだよ。なあ?」
「そうですよね!クサナギさん!クサナギさんならともかくアメノ如きが調子こかないでほしいですよね。」
ジンは喋ろうと思い開けた口を閉じ、野次を言っている者を見る。
(確かアイツはクサナギクサビ。.....なるほどね、アメノ家とクサナギ家か。)
この国は共和制を謳っている。
だがその内情は少し複雑だった。
というのも大戦中はこの国は君主制であった。
だが魔族の襲来時、当時の君主とその一族はその凶刃に倒れ、大戦の終わりまで、君主がいない状態になってしまったのだ。
貴族達はそんな中、自分が君主になろうと画策した。
オウカが魔族と戦うため、他の種族をまとめ上げたため、貴族達に少し余裕が出来てしまったためだ。
そして貴族達はオウカ達が戦っているというのに、私腹を肥やす事ばかりしていた。
そして、大戦が終わり、貴族達は君主になるため動こうとした時、事態は自分達が思い描いたこととは違うように動いた。
まずオウカは君主制を廃止して、共和制にする事を宣言する。
貴族達は反発したが、その時にはすでに、現在協力関係にある多種族がそれを認めてしまっていたのだ。
焦った貴族達は、内乱に持ち込もうとしたが、私腹を肥やす事しか頭になかった者についてくるものはいなく、結局オウカ達に押し切られてしまう形で共和制となってしまった。
オウカは本当は貴族というものも無くしたかったが、そこまではする事が出来なく、領土を管理する者が代表とし、元老院に参加できるようにしたのだった。
それが現在の貴族達であった。
そして今目の前で争っているアメノ家とクサナギ家は、古くからいる貴族であった。
昔からこの二つの家は争っていて仲が悪かった。
だが二つの家は他の貴族と違った。
アメノ家とクサナギ家は腐っていた貴族と同じになってはいけないとオウカ達と共に戦った貴族だった。
だがそんな二つの家には一つ大きな問題がある。
それはアメノ家とクサナギ家の仲が良くない事であった。
二つの家は、その愛国心から張り合うように喧嘩ばかりをしていた。
そしてこのクラスにいるアメノサジとクサナギクサビも犬猿の仲と言っていいほど仲が悪かった。
「ふん。賢いふりして尻尾を巻いて逃げてる臆病者のクサナギ如きが口を挟まんでくれるかな?臆病者が感染る。」
「そうだよ!何もできないくせに口だけは達者なんだから。ねえアメノさん!」
「そうそう!家が偉いだけで実力もないやつが邪魔すんなって〜の。」
「なんだと!?」
そして時間は冒頭に戻り、3対3の睨み合いとなった。
(ちょっと。ジン君。なんとかしてですわ!)
(うーん。アメノ家とクサナギ家だからな。下手に首を突っ込むと余計面倒になるよ?)
ランはジンにこの場をおさめてもらいたかったが、ジンが言うように二つの家の喧嘩に関与する事は、余計に面倒になるということを知っていたので、反論する事が出来なかった。
二つの家の歴史は古い。
それはつまり、喧嘩の歴史も古くからあるという事。
ひどい時は王族をも巻き込んでしまうほどだ。
それ故、二つの家の喧嘩に関わるな。
そう言った暗黙の了解が出来てしまったのだった。
(うーん。だがこのままだとおわんねえしな。)
ジンはちらっとサクラをみる。
サクラは青ざめた顔で二つの家の喧嘩を見ている。
当事者では無いが、本当に怖いのか少し震えてるようにジンには見えた。
「....おい。おめえら。」
ジンの中で何かが弾けた。
声を発したジンの言葉を受け、六人がジンを見る。
その目には、誰一人として冷静な目はなく、皆一様に興奮している。
(誰が相手だろうと...サクラちゃんを怖がらせるなら、俺の敵だ。)
その視線に対し、ジンは殺気を持って返す。
「そんなに喧嘩がしたいってんなら俺が相手してやるよ。」
ランとサクラは驚いた顔でジンを見る。
「ちょ!?何を言っているんですわ!」
「そっそうだよ!ジン君!喧嘩はダメだよ!」
「....本当に相手をしてくれるのか?」
ジンの言葉を聞いて、一人冷静になったサジは、まっすぐジンを見つめ問い返した。
「ああ。二言はない。ただし、お前ら六人纏めて相手してやるよ。」
「....ああ!?てめえ。アメノの野郎ならいざ知らず、俺はクサナギだぞ。いくら成績が良かったからって舐めすぎだぞ!」
「しるかよ。クサナギだのアメノだのくだらねえ。格の違いを見せてやるから表に出ろ。...ランちゃん。あのバカエルフに許可もらっておいて!それではサクラ様!ちょっと行ってきます!」
そう言ってジンはそそくさと教室を後にした。
「あっのバカ!!....とりあえずあんた達はどうするの?私としてはやめてほしいんですが?」
「無論、俺は挑戦させてもらう。お前らは見ていてくれ。」
「いやいや!僕らも行きます!アメノさんを侮辱したあいつにギャフンと言わせますよ!」
そう言ってアメノ達はジンを追って教室をでた。
「...で。あんた達は?」
「....あいつはクサナギ家をコケにした。痛い目に合わせてやる。」
「あっ待ってください!クサナギさん!!」
クサナギ達も教室を出る。
「....はあ。しょうがない。みんなホームルームは一旦中止で校庭にでて、見学でもしましょうですわ。サクラちゃん。私はカミーユさんに言ってきますわ。なので先に校庭に言っててください。」
「うっうん、....ランちゃん....ジン君大丈夫だよね?」
「....あのバカは、アホだけど私と同じくらい強いですわ。だから大丈夫ですわ。」
ランは微笑みながらサクラの頭を撫でる。
(サクラのためとはいえ、勝手に喧嘩なんかしてあのバカジンわ。家に帰ったらナギ様に言って折檻してもらわないとですわ。)
ランはカミーユに報告に行くため、サクラの頭から手を離して教室を出るのだった。
夜に行うジンへの折檻の内容を考えながら。
風邪をこじらせました




