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サクラ咲く。  作者: 好意 椎
学生編<平和>
16/26

喧嘩はダメです!

「ひぇぇーー!近くで見ても大きくて怖イィ!」

「サクラちゃん落ち着いて!こんなのただの石像ですわ!」

「そうですサクラ様!お望みなら私がぶち壊して差し上げます!!」

「ぶち壊すなですわ!!」

サクラ達三人は学園の正門の前で改めて石像を眺めていた。

初めてここに訪れた学園の生徒は必ずと言って良いほど、石像を見上げて立ち止まる。

それほど迫力のある石像であった。

だが、サクラ達は三人である為他の生徒に比べるとかなりうるさかった。

そうなると当然、登校している他の学園の生徒の注目の的となる。

普段は、周りの目を気にするサクラとランも、入学と言うイベントと、年頃の娘でもある為自然と声も大きくなり、さらに周りに注目されていく。


彼女達はある意味、有名人でもある。

人國元首であり、最強の術師であるナギは今まで養子を取る事をしなかった。

それ故、ナギが養子を取るとの噂が流れた時、術師達の間では衝撃が走った。


ナギは今まで「人嫌い」「冷血術師」など様々な異名を持っている。

特にナギはあまり他人を近づけない為、上記のような異名ばかりであった為、いくら國の為とはいえ、養子を取るなどとは思われていなかった。

(むしろ今までは、他の術師に投げていた。)

そんなナギが自ら養子を取るとなると、よっぽど優秀な子供達なんだと思われるのと、現在活躍されてる術師にとってナギは憧れの存在であり、なれるならナギの養子になりたいと思っている術師が多かった為、サクラ達は様々な術師から注目されていたのだ。

サクラの術のこともあり、最近はあまり外に出ない様にしていたが、わかる人には直ぐに特定されてしまう。

「おい!!お前らうるさいぞ!!!クソどもが邪魔だ邪魔だ!!」

そして皆がサクラ達を羨ましく思っている。

そうなれば当然サクラを、術が使えないのにナギの養子になったサクラをよく思っていない者達も出てくるのであった。

「...!?」

「....」

「.....」

三人は声がした方を向き、サクラは青ざめて驚き、ランは鋭い目つきとなり睨み、ジンに至っては身体に術力を纏い始める。


サクラ達は決して喧嘩っ早い訳ではない。

力を驕らず、自分達が悪ければしっかり謝る事が出来るのだが、目の前の相手に対してはそのつもりが無い。

サクラ達の目の前には、三人を睨みつけている男がいた。

男は浅黒い肌でオールバックにしていて、ジンよりやや筋肉質でサクラ達と同じ制服を着ている。

ジンは素早くサクラとランの前に出て、目の前の男を睨みつける。

「....久しぶりだな。泣き虫ジン。それに目障りな奴と寄生虫が。」

「....サカキ。相変わらずだな。この口だけ野郎。...いや?僻み野郎のがいいか?小学園を途中でいなくなったから俺たちにビビって逃げたのかと思ったんだがな。ああそれと一つ言っておく。二人の事を次悪く言ったら...」

「言ったらなんだ。間違った事はいってねぇよ。特にその後ろでこそこそしてる奴はな。」

サカキと言われた男は、ランの後ろで怯えているサクラを睨む。

「小学園にいた時からてめえが気にいらねぇ、なんでお前みたいな何もできない奴がナギ様の養子になれるんだ。しかもエリートしか入る事ができないこの学園まで来るなんて。....どんな事して取り入ったんだ?その貧相な身体でも使ったのか?」

その瞬間、ランとジンの身体から術力が溢れ出す。

対となる属性同士である二人の術力は、混ざり合う事はないが、竜巻状となり空へ伸びていく。

ジンやランの術力量は同年代の者と比較しても圧倒的に多く、下手をすると前線で活躍している術師に匹敵すると言われている。

「....サクラ様を侮辱して、生きて帰れると思うなよ。」

「嫉妬に狂った殿方って本当に見ていて気持ち悪いですわね。まるでゲジゲジの虫を見ている様ですわ。とりあえず潰しましょうか?」

二人の殺気の込もった視線をまっすぐ受け止めるサカキ。

二人の術力、そして殺気。

一般の同年代の者ならそれだけで戦意は喪失してしまい、昔のサカキならそうなっていてもおかしくないのだが、目の前のサカキは臆することなく、二人にを見ている。

そこには引くことのない闘志がうかがえる。

ランは昔を思い出してサカキの対応に感心する。

サカキの印象は、ランの中では「口だけ」だった。

気の弱いサクラや他のおとなしい子のみに横柄な態度をとっていたサカキをランは度々説教していた。

説教という名の模擬戦を。

小学園に通う子は、一般の子もいるが、サクラ達のように術師に養子となったものもいる。

そう言った子供達は、大概各家で修行をしている為、小学園も模擬戦という形でなら生徒同士が戦うことを禁じてはいなかった。

ランはその制度を利用して、サクラにちょっかいかけてくる輩を叩きのめしてきた。

サカキも例外なく、むしろ懲りずにサクラにちょっかい出す為、一番ボコボコにされていた。

小学園からいなくなる最後の方に限っては、ランと目を合わせたら怯えるほどになっていた。

なので、また怯えるだろうと目を合わせたら、怯えるどころか、返してきたのでランはサカキがいなくなった後しっかり訓練して強くなったことを悟った。

「ジン。この子....」

「ああ。わかってる。どうやら昔と違うみたいだな。」

「いつまでもてめえ等の下だと思うなよ。」

二人が手を出し、術を発動しようとした時、二人に割って入る者がいた。

「...まっ待って!二人とも喧嘩はダメだよ!!」

それはサクラで、目に涙をため、震えながらジンの右手を握る。

サクラに右手を握られたジンは、それを理解した瞬間、ボンっと術力を破裂させ、顔がたこの様に真っ赤となった。

「さっサササササクラ様!!いけません!私の様な者の手を触るなんて!!手が汚れてしまう!」

握られた手を解こうとするが、相手がサクラのため、無理矢理引き剥がすわけにもいかない。

その為ジンは左手で解こうとするが、サクラも両手を使って、解かれない様にする。

「わわわ私は大丈夫ですからジン君落ち着いてください!!」

結果、周りから見たら手を握りあっているように見えてしまっていた。

「てめえ等、俺を無視してなにイチャついてんだコラ!?」

サカキにしてみれば、自分を無視され、おちょくられてる様にしか感じられず、再び怒りの導火線に火がついた。

サカキの身体から術力が出てくる。

サカキの属性はランと同じ火の属性だが、その性質は少し違い、ランの炎は激しく燃える赤い炎のようであり、サカキの炎は静かに燃える青い炎のようだ。

さすがに不味いと感じたジンは臨戦体制に入ろうとするが、突如横から風の塊(の様に見える)が飛んできて、サカキとジンの間の地面を抉った。

「君達、登校前、しかも校門の前でなにをしているのですか?」

声のした方を向くと、そこにはいつも笑顔のイケメンエルフ、カミーユが立っている。

(そう言えば朝ついて来てたか。忘れてた。)

「かっカミーユさん!よかった!来ていただけて!」

(....朝から一緒に来ていたのに随分遅いですわ。...わざと遅く出て来た?なんで?)

「今日は、入学前だから大目にみるけど次こんな騒ぎを起こしたら、厳罰だよ?」

サカキは目の前に現れたエルフを見て、術力を抑えていく。

だがジン達への睨みはそのまま向けている。

「...あなたは確かカミーユ様。あなたには関係ないでしょう。」

ある意味いい根性しているのかもしれない。

目の前の人物を知りながらこんな口を叩くとは。

ジンはサカキの評価を改めようと思った。

...良い意味でも悪い意味でも。

「君は確かサカキ君だったね。...ミズカミサカキ君。実は関係無くはないんだよね。」

「一体なんでですの?」

「今日付でこの出雲学園の学園長になるんだ。」

「な!?なんでエルフのあなたが学園長に!?学園長は人族から選ばれるはずだ!!」

三人は学園長が人族から選ばれる事を知らない為そちらには無反応だが、カミーユが学園長になると言うことに驚愕した。

ジンとランはナギの過保護ぶりに驚いただけだが、サクラは知り合いがいると言うことが嬉しくて驚いた。

「サカキ君。時代は流れているのだよ。いつまでも人族だエルフ族だとか小さい事を言っては成長なんてできないんだよ!」

カミーユは芝居かかった動作で、もっともな事を言っているが、なんと無く事情を理解しているジンとランは、白けた目でカミーユを見ていた。

「カミーユさん!!かっこいいです!」

横ではサクラが目を輝かせてカミーユを褒めている。

「....俺は認めない!!!エルフなんて...!」

サカキは憎悪を目に宿し、カミーユを含めた四人を睨みつけ、走ってその場を後にした。

「君に認められる必要はないんだけどって、・・・聞こえないか。さて。三人とも。お話をしようか?」

「....!?わわわわっ!?」

「あら?何か話しがありまして?」

「こっちはないな。」

サクラは慌てて、ランとジンはふてぶてしく、三者三様の反応を見せる。

「君達、一応今日から僕はここの学園長なんだけど?」

「あらーそれはすいませんですわ。こちらも朝から変な輩に絡まれるわ、尾行されたりしていたので少しイライラしただけですわ。」

「へっ!?ランちゃん!尾行されてたんですか!?」

「もう大丈夫ですわ!サクラちゃん!よしよし。」

「ふへへ。よくわからないけどランちゃんに撫でられた!」

「....しかも、周りにいる人は傍観してて助けようとしませんでしたからね。仕方ないでしょう?サクラ様を守るのは私の役目ですので」

ジンとランは言外に「お前見てて、止めなかったくせに文句言うな!」と視線でカミーユにぶつけて文句を言った。

「くっ!!おほん!まあ今回は大目に見ますので今後は気をつけてくださいね。....さあ中に入りましょう。まずは入学式ですから校庭に行きましょう。」

カミーユは自分が不利になるのを察知して、これ以上言われる前に話を終わらせる為、三人を校内に入れる。

これから始まる学園生活にサクラは暗い気持ちしか持てなかった。

そしてやはり自分という存在がいかに場違いであるかを認識してしまった。

(...孤児院に帰りたいな...)

思い出される孤児院時代の記憶。

サクラにとってそこはキラキラ輝いている場所だ。

日に日にサクラの心の中で募っていく孤児院と自分の母親と言って良いトウコへの思い。

だけど我儘を言ったらきっとランやジンを悲しませる。

いや二人なら全てを敵にまわしても自分を優先するんじゃないか?

なんと無くだが、確信めいたものがあった。

二人は自分とは違い、優秀で強い。

そしてサクラにとっても大事な人達だから我儘言って、二人の進む道を邪魔するわけにはいかない。

その思いが逃げたいと思うサクラの脚を踏みとどまらせる。


だから止まることなく歩く。

それが正しいと思うから。


サクラはまだわからない。

自分が選択した行動がこの先どんな事になるのかを。


読んでいただきありがとうございます

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