学校に行くんです!
朝食を済ませ、支度が整った三人は、初めて着る学園服に身を包み、徒歩で学園に向かっていた。
ナギの屋敷は、何かあった時にすぐ高天原城に行けるように、城の近くにあるからだ。
出雲学園。
出雲小学園を卒業し、更に術の才能ある者でしか入学を許可されない、いわばエリートが通う学園だ。
制服は基本的に黒のベストと白地のシャツ、男性なら下は黒のズボンと女性は黒のスカートだ。
だいたいそれに個人で用意したローブを羽織るのが基本のスタイルとなっている。
シンプルな見た目だが、子供達の安全を一番に考えられ、服全体に防御の術が仕込まれており、生半可な攻撃では傷もつけられないようになっている。
「らっランちゃん。変じゃないかな!?」
朝から何度目かになる質問をするサクラは、初めて着る制服が、自分には似合わないのではないかと心配で、隣に歩くランに同じ質問を繰り返していた。
ちなみにジンはサクラの三歩後ろを歩いている。
「はぁー。サクラちゃん。...大丈夫だから!とーーっっても可愛くて連れて帰りたいくらいだから!同じ家だけど。」
ランはため息を吐きながら質問に答える。
「っああああありがとうランちゃん...」
そして可愛いと言われ、赤くなって下を向いてしまうといった事を繰り返していた。
ジンは無言でそのやりとりを後ろから眺めているが、見た目は大人の女性になっていても、中身は昔と変わらない二人のやりとりを見て、思わず微笑んでしまう。
ランはピンク色の髪は変わらないが、ボブカットとなっている。
その為、見た目はおっとりしているように見え、初見の人は勘違いをするのだが、中身は天真爛漫が具現化したような性格なので、みんな驚いてしまう。
スタイルも良く、街中を歩けば男性の視線がすごいことになるが、本人は全く気にしていないのか堂々と歩いている。
だが問題もある。
そんな性格と昔から一緒にいるせいなのか、屋敷の中では更に気にしないせいで、際どい服装で歩き回るので、思春期で男の子のジンは目のやり場に困るときもあるのだ。
ジンとしても、ランは大切な存在であまりそういった格好とか周りの視線を考えて欲しくて、何度かランに言ってみたが、本人は「見せたい奴には見せておけばいいですわ。減らないし」とか「ジン君と私は兄弟みたいなもんなんだから大丈夫でしょ。」と言って全く話を聞いてくれないのだ。
思い出すだけで頭痛がしてきそうだが、そんな性格を少しだけ、ほんの少しだけ自分の主人にも分けてあげたいと思った。
サクラはその黒髪を更に伸ばし、腰元のところまで伸ばしている。
黒く艶のある髪は、まるで絹のようにサラサラしていて、何度ジンは触れてみたいと思ったことか。
だが、一度だけ我慢が出来ず、怒られのを覚悟で後ろから近づき触ろうとしたら、なぜか手が触れる瞬間に後ろを振り向いてしまい、ジンの手はまるでキスをしようと頬に手が触れてしまった。
あまりのタイミングに、ジンの右手は頬に添えるような形で硬直し、サクラもジンの行動に驚き、5秒ほど見つめ合っていたのだが、我に帰ったサクラは恥ずかしさと緊張でその場で泣き出してしまった。
もちろんその後は、ナギとランにきつい折檻があったのは言うまででもない。
あの異常な恥ずかしさはなんなんだろうと考えるが、ジンにとってはそれもサクラの良いところなので、あまり深くは考えてはいなかった。
そんな風にサクラを眺め、幸せな気分に浸っていたジンは、こちらに向けられた複数の視線に気づき、現実に帰る。
(1つ、2つ、3つ......全部で3つ。殺気はない。全て違う方向からの視線だ。...俺たちを見張っているのか?ランは....気づいているみたいだ。警戒レベルを一つあげておこう。)
自分達を見ている者が何者かわからないが、何もしないと言う、選択はあり得ないので、ジンは威嚇も込めて、少しだけ殺気を視線に向けて放つ。
ランも自然とサクラの腕を取り、気がついてないサクラを守るために自分の方に引き寄せる。
自然な形で行動をしたので、サクラは顔に(どうしたの?)と書いてあったが、ランは可愛い可愛いといって、くっついていた。
三つある視線の内の一つが、自分達の存在に気づいたジン達に驚き、そして漏れないように笑う。
(さすがナギ君のところで訓練していただけあるな。恐らく相当な訓練をしたんだろうな。僕と僕の部下の気配に気づくなんて。)
建物の影となっているところからゆっくりと姿をあらわす。
その人物は、能力検査でサクラ達を担当していたカミーユだった。
(全くナギも親バカだな。これだけできるのであれば、僕たちはいらないじゃないか。だがサクラちゃんの制服姿を見れたから良かったかな。)
そう思いながらサクラ達を監視する。
彼らはナギから「サクラ達に何かあってからじゃ遅いから、見ていてくれないか?」と言われ人國に来たのだが、隠密行動をする為、エルフのみが使う精霊術で気配を誤魔化していたのだが、まさか見破られるとは思わなかったカミーユは、子供達の成長の早さに驚きを隠せなかった。
バレたなら仕方ないと、気配を元に戻し、影から姿を出して、こっちを見ているジンとランに手を振る。
ジンとランは遠くで手を振っているカミーユの姿を確認し、今回の件はナギが頼んだんだろうと考える。
(まだ信用されてないんだなー)
二人はナギの過保護とまだ自分達の実力ではサクラを守れないという評価であると分かり、二人の眉間にしわを寄せてしまう。
だが運が悪く、ジンとランは同じような反応をしてしまい、その顔をサクラに見られてしまう。
「....二人共どうかしたの?なんかあったの?」
「ふふ。なんでもないですわ!サクラちゃん今日も髪に艶があって素敵ですわね!イイコイイコ!」
(変にサクラちゃんに私達以外に守ってる人がいるって言うと、そこまで守られないといけないと思われて、怖がって学園に行かないって言われるかもしれませんわ。)
ランは目配せでジンに合図を送り、ジンも了承したと無言で頷く。
長年一緒にいた中だからできるアイコンタクトだ。
「サクラ様、学園が見えてきましたよ。」
ジンは外にいる時は、従者として言葉を改め、サクラを様付けにする。
やはり嫌なのか、サクラは複雑そうな顔をするが、仕方ないと自分に言い聞かせ、前を向く。
そこには左右に大きな阿吽の像を置いたどでかい門がある。
まだ少し先なのだが、それでもすでに大きく見える為、案の定サクラは怖がりランの腕を強く掴む。
「ここが....出雲学園...」
サクラは、やはり行くのをやめておけば良かったかなと、左右の像の異様な雰囲気にすでに心は萎縮していたのだった。
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