15になりました!
学園編始まりです
ゆっくりと目を開ける。
目の前には8年前から見ている天井が見える。
天井を見つめ、寝起きの頭で、ここに来て8年経つのかと考える。
7歳の時に受けた能力検査により、サクラとランは、人國の元首、イシイナギの養子となった。
ちなみにジンはサクラの従者となり、日々鍛錬に励んでいる。
「......はぁーー。」
深いため息をつく。
サクラは今日この後の事を考えると憂鬱で仕方なかった。
あまりの憂鬱さに夢であって欲しいと願った程だ。
だが現実は厳しく、夢でも妄想でもなくこの日を迎えてしまった。
ベッドから身体を起こし、ぼーっとし、部屋を眺める。
孤児院の時とは、まるで違う部屋の大きさに、ここに来た当初は怖くなってしまい、ランが寝ている部屋に半べそをかきながら向かった事がよくあった。
さすがに今はそんな事はあまりしないが、狭いながらも、近くにランが居てくれた孤児院を好きでいるサクラからすれば、あまり好きにはなれなかった。
しかもサクラ自身、あまり物欲もない為、部屋には机と椅子とベットと本、それに服しか置いていないため、それが余計にこの部屋の寂しい感じを露わにさせていた。
どうでも良い事を想像して現実逃避をしていると、「トントン」と遠慮がちなノックがしてきた。
(あぁ....きてしまったか.....)
ノックの音で、誰か来たのかわかったサクラは、心の中でため息を吐きながら、ドアをノックした外にいる人物に「どうぞ」といい、中に入ってもらう。
「失礼します。サクラ様。おはようございます。お目覚めの様ですね。」
顔に優しい笑みを浮かべ、中に入って来たのは、サクラと同じ孤児院にいたジンだ。
8年前とは違い、すっかり大人の男性の風格が出始めているジンは、サクラからみてもカッコよく見える。
まだ朝が早いのにパリッとした執事服に身を包み、黒髪短髪ヘアーは、ツンツン立たせている。
「.....どうかいたしましたか?サクラ様。」
「.......むぅーーーー。」
サクラは無言で頬を膨らまし、不満を顔に出してジンを睨む。
だがその顔は、怒っているというよりは、ジンからみて、リスが食べ物を頬に詰めてる様にしか見えず、自然と顔が綻ぶ。
「....なんで笑っているんですか...」
「いえ、あまりにもサクラ様の顔が愛らしくてつい....ご不快にさせて申し訳ありません。」
余裕の笑みをもって、笑ってしまったことについて謝るが、サクラが言いたいのはそのことではなかった。
「ジン君、家では様付けはしないでって言ったじゃない!.....そりゃあ私はジン君の事怖がったりした事はあるけどさ....本当なら従者になってもらうのだって嫌だったんだから....」
ジンはこの屋敷に来た時にサクラ付きの従者となった。
だがサクラは、ジンを自分の従者にすることにサクラは珍しく猛反発をしたが、最後は元首であるナギに説得をされ、渋々了承したのだ。
その日からその事で眠れない日々が続いた。
もともとこの屋敷に来たことへの不安も合ったのだが、サクラの性格からして、自分の友達であるジンを、自分の下としておく事が、気まずさと了承してしまった罪悪感で 押しつぶされそうになった。
さらにジンの教育はまず言葉遣いから施された故、いきなり友達からまるで関係のない赤の他人の様な存在になった気がしてしまい、寂しさも出てしまったのだ。
その為、夜は屋敷に来たことへの不安とジンに対しての罪悪感で寝不足となってしまい倒れてしまったのだ。
サクラがナギの養子に来て、僅か1ヶ月の事である。
屋敷は騒然となった。
だがそれも無理のない事だ。
サクラは元首であるナギが、その秘術を使い、自分の寿命を伸ばしてでも会いたかったオウカの生まれ変わり。
その過保護ぶりは屋敷の中で働いていた全ての者が驚くほどだ。
サクラが来た日から仕事をほっぽり出して、屋敷に一週間いたほどだ。
さすがにその後は秘書に連行されていったが、今まで仕事の虫と言わんばかりに働き、屋敷に帰ることなど一週間に3回くらいしかなかった。
だからサクラが倒れたと聞いた時は、半狂乱になっていた。
今度は良くなるまで近くにいるというんじゃないか?
そんな事を言い出すと思い身構えたが、出た言葉は意外なものだった。
「全てをジンに任せる。」
そう言ったナギは秘書にその事を伝えてもらい、サクラの隣の部屋で待機した。
秘書から指示を受けたジンは、ナギの元に行き、理由を聞いた。
「ナギ様。なぜお...私なのでしょうか?私には荷が重いとしか思えません、」
ジンはナギに対して本心を口にする。
「サクラは寝不足で倒れたらしい。どうやらここに来てから、寝れてなかったらしい。....何か悩んでいる事があるのかもしれん。お前がそれを調べて解決するんだ。」
「....何故自分なんでしょうか?それならランちゃんの方が合っていると思うんですが...」
出来るなら自分だって近くにいたい。そう思うが、従者としても、人としても自分は未熟だと知っているジンは、何故としか思えなかった。
「ジン。てめえはサクラの従者だろ?だったら主人を救うのはお前だ。従者の経験だとかじゃねぇ。主人が大切かどうかだ。やってみせろ。ジン。」
お前の考えなど知らん。従者の道を選んだのならなんとかしてみろ。
言外にそう語りかけてくるナギに対してジンは、ここに来た時の誓いを思い出し、まっすぐな視線で返す。
「....かしこまりました。」
一礼をし、部屋を後にして隣のサクラの部屋に入る。
ベットにはサクラが寝ている。
少し顔色も悪く、具合が悪かったのが容易にわかってしまう。
従者の訓練は四六時中行なっており、今はサクラと会える時間は少ないが、それでも姿を見たときはサクラを目で追っていたりしたが、ここまで具合が悪い事を見抜く事ができなかった。
ジンは己の力不足に舌打ちする。
だが凹んでいるわけにもいかないので、とりあえずサクラの手を握り、泣いているランに目を向ける。
ランはジンの方を見ない。ただ真っ直ぐサクラを見ている。
「ランちゃん....」
ジンはサクラの手を握っているランに声をかける。
「....何の用。」
ランはジンの方を見ず、そっけなく答える。
その雰囲気には怒りと悲しみが見え、それを隠そうともしてない。
その怒りは、言うならば全てに対しての感情だ。
こんなになるまで相談をしなかったサクラへの怒り。
従者なのに気づかなかったジン、そして親友なのに気づかなかった自分への怒り。
そして、サクラが自分へ相談してくれなかったことへの悲しみ。
だがそれは、サクラが悪いとはランは思わない。
全ては自分がサクラにとって、相談できる様な人物になれなかった事が悪いと思っている。
「....ごめん。ランちゃん。サクラちゃんが目を覚ましたら、二人で話をさせて欲しいんだ。」
「....なんでよ。あなたに何ができるのかしら?...私だって!!....何もしてあげられなかったのに...」
後半の方は声がかすれて、小さな声になっていたが、ジンはその言葉を聞き逃さない様にした。
他人の声を聞こうとしない奴が、大切に思っている人の言葉を全て聞くことなんてできないと思ったからだ。
「...確かに何もできなかったせいで、サクラちゃんは倒れてしまった。だけど俺はサクラちゃんの従者だ。今度はこんなことにはさせない。力不足を理由に逃げたらいけないんだ。...だからお願いランちゃん。少しだけサクラちゃんと二人で話させて欲しいんだ。」
その決意に満ちた目を見たランは、ゆっくりとサクラの方を向き、頭を撫でる。
「わかったですわ。でももしこれ以上サクラちゃんを悲しませたりしたら許さないですわ。」
そう言ってランは部屋を出ようと立ち上がる。
「ランちゃんまだサクラちゃんは起きてないけど...」
「今はあなたを信じますわ。サクラちゃんをよろしくね。」
ゆっくりとドアを開けて出て行くランを見送るジンは、ランの背中に深くお辞儀をする。
それから数時間後、サクラは目を覚ました。
何と無く先ほどよりは顔色も良くなった様に見える。
起きたサクラにジンは、何故寝不足になったかを聞くが、最初は渋って言わなかったが、根気よく聞いていくとポツポツと理由を話してくれた。
だがその理由は自分の行動のせいだと知って、落ち込みそうになるが、自分がなんで従者をする事を選んだのか、しっかり説明をした。
そうして話す事1時間、二人でいるときは、前の様に普通に喋る事を約束をしたジン。
その約束を忘れた事は無いが、習慣が無意識に出てしまい、様付けをしてしまったので、サクラはむくれているんだと気付いたジンは、もう一度言い直す事にした。
「...どうかしたかい?サクラちゃん。」
15になってサクラちゃんと呼ばれるのは少し恥ずかしい感じがするが様付けよりはマシと思い、笑顔になる。
「なんでもない!!」
「そうかい。それじゃあ早く起きて。今日から学園に行かなきゃいけないからね。」
サクラは学園という言葉を聞いた瞬間、笑顔から一転してうつむき、暗い表情となる。
「...学園に行かなきゃダメかな?...」
上目遣いでジンに尋ねる。
「...!?....ええ。私たちは15になったら出雲学園に通わなければ行けません。それは決まっていることですから。」
サクラの上目遣いに思わずドキッとしてしまうが、顔に出さぬ様にしたが、その代わり言葉遣いは戻ってしまうジンである。
だが、そんなことも気にならないほど落ち込んでいるサクラは、ため息を吐きつつ、「...準備する。」と言ってジンを部屋から出した。
彼女が何故学園に通うのを嫌がっているのか知っているジンは、学園に行く前に娘の入学だと喜んで、食堂で待っているナギに一言相談しようと足早にその場を後にした。
この世界の日付や時間は全て現実と同じです。(西暦は違います)




