養子です!
ナギの言葉により、場が静かになる。
サクラがオウカの生まれ変わり。
そんなことがあるのだろうか?
「まあいきなりそんなこと言われても理解出来ないわな。...これを見て欲しい。」
ナギは先ほど本から取り出した古い紙を、ゆっくり広げる。
それは、人物画であった。
一人の女性と角が生えた赤髪の男性が描かれている。
女性は屈託のない笑顔で男性の腕を抱くようにくっついて、男性の方はそっぽを向いて、顔をしかめっつらにさせている。
「これはもしかして....」
「そうだ。オウカ様ともう一人の英雄、ゴウキ様の絵だ。...オウカ様の顔をよく見てくれ。」
ナギに言われオウカの顔を見ると、その顔はサクラと言ってもおかしくない程、似ていたのだ。
「サクラちゃんと瓜二つですわ....」
「ああ。似ているなんてもんじゃない!サクラちゃんそのものだよ!」
サクラは紙を取り、まじまじと絵を見る。
本当にみんなが言うように、自分の顔に似ていた。
驚きすぎて言葉が出てこない。
(私がオウカ様の....生まれ変わり?信じられない。私なんかがオウカ様の生まれ変わりなんて....)
「にわかには信じられないと思うが、これは事実だ。そして、サクラ君。今から言うことをしっかり聞いて欲しい。......先ほども話したが、ゴウキ様は魔族が復活する時、必ずオウカ様は戻ってくると言われた。そして、君が現れた。つまりそれはどう言うことかわかるかい?」
「......!?つまり魔族は蘇る.....」
「そうだ。封印を解いて、そしてまた世界に戦いを挑むだろう。そして恐らく、魔族は君を狙うだろう。」
サクラは背中に何か冷たいものが流れるのを感じる。
他者との争いを好まず、孤児院にいるとはいえ、周りにいる者達のおかげで、平和に過ごしていたサクラは、その事実を知ってしまった事だけで、気を失いそうになってしまう。
「大丈夫ですの!?サクラちゃん!!ナギ様!どうしてサクラちゃんが狙われるのですか!?」
フラついて倒れそうなサクラを、ランは腕を掴み支え、ナギに疑問をぶつける。
「気をしっかり持つのだ。サクラ君。.....魔族は力も強いが、それと同じくらい頭も良い。そんな者達がオウカ様の生まれ変わりであり、魔族を封印出来る可能性の人族を見逃すはずがない。....だが案ずるなサクラ君。君はオウカ様の生まれ変わり。魔族などには負けぬ。だが何もしなければ魔族に負けてしまうだろう。だから君を養子に迎え入れたいのだ。力をつけ、己が身に降りかかる火の粉を払う為に。その為なら、俺の全てを君にあげよう。....それに俺は姉さんには何一つ出来なかった。だから今度は守りたい。俺はそう思っている。」
「そうですサクラちゃん。私もオウカ様と出会い、人を愛する事を知ったのです。そのご恩を、オウカ様の生まれ変わりであるさくらちゃんに返したい。」
ナギとカミーユがサクラを落ち着かせる為、そして自分の気持ちを打ち明ける。
「元首様....カミーユさん....」
青ざめた顔で二人を見る。
とてもありがたい言葉だがサクラの気持ちを軽くは出来ない。
「サクラちゃん。私があなたのすぐ近くにいますわ。ずーっと一緒に。ね?それでもサクラちゃんは不安ですか?」
ランがサクラを支えつつ、サクラの顔を、目を真剣な眼差しで見つめる。
どこまでも真っ直ぐなその目は、いつもサクラを見守っていてくれた暖かい眼差しだ。
「....俺もいつも一緒にいる!!それでも不安ならここで誓うよ!サクラちゃんを絶対まもるって!!」
隣にいるジンも頬を赤く染めながら、普段は絶対言わない言葉を口に出し、サクラに伝える。
「...ジン君」
サクラの顔に赤みが帯びていく。
先ほどまで青ざめていて、この世の終わりのような顔をサクラはしていたが、二人の言葉により明るさが戻ってきた。
(やはり我々の言葉より家族の言葉か....)
それはオウカも同じだった。
自分が傷つくより、人を傷つけられる方が嫌だったオウカ。
だがそれ以上に家族に何かある事を極端に嫌った。
自分が陰口や周りの同年代の子供にいじめられてもケロリとしていたが、ナギがいじめられたら烈火の如く怒っていた。
(サクラちゃん....私は孤児院を離れることは出来ないけど、心はいつでもあなたを思っているからね。)
トウコはあえて何も言わないようにした。
サクラは必ずナギの元へ行くことになる。
そうなれば別れとなる。
出来るならいつもの様に抱きしめ、頭を撫でてあげたい。
サクラを守ってあげたい。
だが、トウコは我慢する。
まだすぐに別れるわけではなく、そこまでする事はないんじゃないか?
そう心のどこかで声が聞こえる。
だがその声に耳を貸すわけにはいかない。
それほど、サクラが歩む道は険しくなる。
大人のトウコには容易に想像できてしまう。
それに魔族に狙われるという事は、必ずしもサクラだけとは限らない。
サクラの近くにいる者と言うだけで狙われる可能性があるだろう。
だがもし自分がそばにいたらどうなるか?
戦う才能などゼロの自分が、もし人質となってしまったら?
サクラは優しい。
そうなればきっと助けに来るだろう。
そして訪れる結末は......死だろう。
そんななにもできない自分など、英雄になるかもしれないサクラの足枷にしかならない。
トウコはそう思い、心の中で決意をする。
(例え何があっても、サクラちゃんには助けを求めない。サクラちゃんが危ない目に合うくらいなら自分で.....)
それはだれも知る事はない決意。
だがその決意は、後にサクラを苦しめてしまうのだが、その事をまだ彼女は知らない。
「では改めて聞こう。三人とも私の養子になってくれるかな?」
彼女達の目にもう迷いはない
「「はい!」」
「........」
「ん?ジン君はどうだ?」
「・・・元首様、少しお話しさせてください。」
こうしてサクラとランは二人はナギの元に養子となり、ジンはとある事情から、サクラの従者となる事になる。
「くくく、それにしてもジン君は若いなぁ」
「だが、好感は持てるな。」
「確かに」
サクラ達四人が帰った後、円卓の広間ではカミーユとナギが話していた。
とても穏やかな雰囲気で先ほどのジンの事を話していた。
外は薄暗くなっているが二人は会話をやめようとはしなかった。
目の前の円卓には、二人の愛した人が描かれた絵が置かれていた。
まるで今日会った事を絵に話しかけている様に....
次回から時間が一気に飛びます




