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「そんな、いきなり何を言うの! そんなわけないじゃない!」
「よく聞いて下さい。お父上たちがいなくなって、どれぐらいの月日が経ちましたか? 何度日が沈みました? それだけの長い時がすぎたのに、あなたはいつまでも若く美しいままだ。おかしいとは思いませんか」
「それは、それは……」
少女は頭をかかえます。今や心には嵐が吹き荒れました。
「あの日、お父上たちが旅立っていった日、本当に旅立ったのはあなただったのです。本来なら、あなたの魂はすぐに冥府へとたどり着くはずでした。しかし、どういうわけかこの島に留まってしまった。そのせいで、あなたはこの島で悠久の時を過ごすこととなった。来るはずのない船の影を望みながら」
少女は、耳をふさごうとしました。男の話しを聞かないように。しかし、頭がそれを拒否します。この男の言うことは正しいのではないか? 頭の端にいる、時間通りの成長をした自分がそう問いかけてくるのです。
「あなたのお父様や、他の家臣の者たちも遠い昔に死にました。既に冥府へとたどり着いています。しかし、先に来ているはずの娘がどこにもいない。これは困ったということで、私はお父上に頼まれてあなたを探しに出たのですが、随分と時間がかかってしまいました。さあ、私と共に、お父上たちのところへ、冥府へと参りましょう」
少女は、ゆっくりと扉を開けました。