3
それからさらに長い月日が経ちました。皆はまだ帰ってきません。しかし、少女はもう寂しくありませんでした。鳥が彼女の寂しさを取り払ったのです。一日中水平線を見つめ続ける生活は、もう終わりました。
朝は鳥と共に起き、海辺を散歩します。昼は王様の書斎に置いてある本を二人で読みます。そして太陽が沈むと、少女はベッドに入ります。鳥は、少女が眠りに落ちるまで、優しく見守っています。
「今日も、お父様たちは帰ってこなかったわ」
「ええ、きっともうすぐ帰ってきますよ、王女様」
「そうね。でもあなたが来てくれてよかった。もう、夜に一人寂しく泣かなくてすむもの」
「それはよかった。もうあなたに寂しい思いはさせませんよ」
「ありがとう、鳥さん。それじゃあ、おやすみなさい」
「おやすみなさい、王女様」
お決まりの会話を交わし、少女は眠りにつきます。眠りにつくその瞬間、少女は鳥がどのような顔で自分を見つめているのか確かめようとします。しかし、夜の帳が下りたいま、鳥の顔はただの黒い塊でしかありませんでした。
ある朝、少女と鳥はいつものように海辺を歩いていました。ふと少女が水平線を見ると、黒い影がそこにありました。
「お父様たちだわ!」
少女は喜び叫びました。
「見て、鳥さん! ついにお父様たちが帰ってきたわ」
少女は小躍りして、体いっぱいを使って、黒い影に手を振ります。
「おーい、おーい! おとうさまー!」
黒い影はゆっくりと、しかし確実に、島へと近づいてきます。
しかし、黒い影が近づくにつれて、それが小さな小さな小舟だということがわかりました。小舟に乗っているのは、フードを目深に被っている者ひとりだけ。その背丈からして、王様とはとうてい思えませんでした。
「王女様、逃げましょう。あの者はどう考えてもお父様ではありません。何か怪しい者に違いありません。もしかすると、悪魔かもしれない。ここはひとまず城へと戻りましょう」
そう言って、鳥は少女を城へと誘います。少女は、あのフードの者と話をしてみたいと思いましたが、鳥の忠告に従い、足早に城へと向かいました。