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それから、少女は皆の帰りを待ち続けました。日が昇り、沈み、また昇る。待てど暮らせど、皆は帰ってきません。それでも少女は信じます。いつの日か、あの水平線の向こうから、船が戻ってくることを。またこの島で、皆で楽しく暮らせる日がくることを。
ある日、いつものように少女が水平線を見つめていると、黒い影が飛んでくるのが見えました。初めての水平線の変化に、少女は驚き、喜びました。
「おーい!」
少女は、黒い影に呼びかけます。影は少女めがけて一直線に近づいてきます。それが黒い大きな鳥であることに、少女は気がつきました。
「おーい、鳥さん。こっちよ、こっち。あなたいったいどこからきたの?」
今やすぐ傍にまで近づいてきた鳥に、少女は尋ねます。
「初めまして、王女様。僕は海の向こうにある、陸地からきたのさ」
少女の目の前にある木にとまった鳥が、陽気に話します。
「あら、あなたどうして私が王女だと知っているの?」
「それは、僕があなたのお父様たちに遣わされてここにきたからさ」
「お父様たちから! ああ、なんて嬉しいことなの。私、もう待ちくたびれたわ」
少女は満面の笑みを浮かべ、喜びます。
「それで、お父様たちはいつ帰ってくるの?」
少女が鳥に尋ねます。
「それが、いつ帰ってこられるかはまだわからないんだ。でも、必ず帰るから、この島から絶対に出てはいけない。誰に何と言われようとも。お父様はそう言っていたよ。そのことを伝えに、僕はきたんだ」
「そうだったの……。でも、お父様がそう言うのなら、私待つわ」
鳥の話を聞き少女は落胆しましたが、すぐに元気を取り戻しました。
「ねえ鳥さん、私、ずっとひとりで寂しかったの。あなたしばらくここにいて、私の話し相手になってくれる?」
「ああ、もちろんさ! これからは、僕がずっとそばにいるよ」
鳥はそう言って、にっこりと笑いました。