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「鳥さん、おはよう!」
「おはよう、王女様」
ベッドから跳ね起きると、今日も少女は元気に鳥と挨拶を交わします。部屋の扉を跳ね除け、城の扉を跳ね除け、外へと飛び出します。鳥はその後を、楽しそうに追いかけます。はるか北の海に浮かぶ孤島。少女はもう長い間、この島で鳥と二人きりです。
かつて、この島には人がたくさんいました。少女の父はこの島の王で、立派な城を持ち、たくさんの家臣を従えていました。ところがある日突然、王と家臣たちは陸地へ行くと言い出しました。
「私も行くわ、お父様」
「いいや、お前はいっしょには行けない。ここで私たちの帰りを待っていてくれ。決して、島から出てはいけないよ」
「そんな、嫌ですわお父様。私、ひとりぼっちなんて耐えられない」
少女の懇願も、王は聞き入れてくれません。
「王女様、僕たちは必ず戻ってきます。少しの間だけ、我慢してください」
執事のアイルが優しく少女を諭します。アイルと少女は同い歳。アイルは少女の良き遊び相手であり、相談相手でした。少女はアイルを兄のように慕い、アイルもまた、少女を妹のように可愛がっていました。
「アイル、あなただけでも残ってちょうだい。私たち、いつも二人一緒だったじゃない」
「王女様、申し訳ございません。今回ばかりは、あなたの頼みごとも聞けないのです。どうか島から出ず、ここで待っていてください」
こうして、船は大海へと漕ぎ出していきました。少女をひとり、島へ残して。水平線へと消えていく船を、少女はじっと見つめていました。