物語における中間点は現実には存在できないことに対する苦情
誰かが傷つくたびに失われるモノとは何か、僕はその解を探し続けている。
僕が思うに、正しいかどうかを問うことは正しくない。間違いだというほどのことではないが、最適解ではない、と思うのだ。単純に順序の問題なのかもしれないが。考えるだけでは正しくない。でも、行動するには考える必要がある。野生の生き物だって考えてから行動するだろう。最近じゃ機械だって思考する時代なのだ。よく、人工知能をバカにする人がいるけれど、それらは下手をしたらその人間よりもよっぽど優秀だったりする。そうやって考えているうちに、もしかしたらと、思ったことがあったんだけど、雪華に言ったら笑われてしまった。人間は自分たちより優秀な、自分たちとは違うものを生み出し始めている。それは創造ということなんじゃないのか。神話で語られる神様は、科学の発達と共に虚構の存在であると分かってしまった。でも、もし神様という存在がいるなら、自分の特権のようだった創造という力を、人間なんかが使っていると知ったとき、僕ら人間を疎ましいと感じてしまうんじゃないだろうか。
僕たちの平穏は、唐突に壊された。
それは、特筆することもなく穏やかに過ぎた一年後。新入生が様々な思いを巡らせながら入学してくる春、4月初めのことだ。まぁ、入学したくてする生徒だけではないけど。この棟に至っては強制収容だしね。そんな中で一つ、僕らにしては珍しい事件が起こった。
雪華を女の子だと勘違いした哀れな奴が雪華を追い回し始めたことだ。これだけならあまり
驚くには値しないのだが、こともあろうにそいつはヤバめの精神異常者で。いわゆる重度のヤンデレさん、というやつだった。これは完全に僕たちが悪いのだけど、僕は男のような見た目をしていて、雪華は女のような見た目をしている。そこで勘違い野郎は僕に怒り(誤解もいいところだが)の矛先を向けた。もう一度いうが、僕はあくまで性別女なので、腕力とかそういう力はない。普段運動もしないので体力もない。ウルトラマンもびっくりの3分走ることすら厳しい体力の無さである。勘違い野郎は腹立たしいことに、背は高く筋肉もあり…なんというか、体育会系男子な体格だった。中身は残念すぎるけど。ともかく僕は難癖つけられ校舎裏に連れ込まれ(大変ベタな感じに)ボロボロにされてしまった。最後まで勘違い野郎は僕が女だと気づかなかった。全治2、3ヵ月とのことです。許さねーぞ勘違い野郎。痛すぎるわこんちきしょうめ。人生初の骨折という苦しみを味わいながら、毎日お見舞いと称し、僕の部屋に入りびたり学校に行かなくなった雪華と、ほんのり楽しいおしゃべり(たまにゲームをしたり)をする生活をしていた。まぁ勘違い野郎がいるし危ないから学校に行かないのはまだいいけど、お見舞いだっていうなら一回くらい見舞いの品でも持ってきてほしいという思う。