表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蝶は勝手な夢を見る  作者: 時雨トキサメ
2/3

第一章 化け物同士の交流

 誰もが期待と不安に揺れる入学式で、僕は何も映さない冷たい瞳の少年と出会った。


 とは言っても、入学式から遅刻したので式が終わりゆくのをぼんやり眺めてたら、そいつも遅れてやって来ただけのようだが。

 それに僕は、そいつのことを女の子だと思っていたし。



 まぁ、何か共通点があれば人というものは仲良くなれるようで。僕とそいつ、(タチバナ) 雪華(セッカ)は、なんとなく一緒にいるようになった。二人とも人付き合いが苦手で、特に寄ってくる変わった奴もいないので、自然と二人になったという方が正しいかもしれない。正しい認識は大事だ。もしかしたら隣にいるやつは、人間のふりをした狼かもしれないし。ありえないけど。モンスターの方がありえるくらいだ。


「なぁ、昼飯忘れたから分けて」

 雪華の言葉。驚くなかれ、美少女のような見た目なのに信じられんほどにイケボである。声変わりとは残酷だ。

「いいよー。半分こしたげるー」

 少し大きい二段重ねのお弁当箱の上の段を雪華に渡す。最初から一段一人分として作ってあるのだ。雪華は忘れたなどと言うが、毎日のことである。雪華は長くて真っ直ぐな黒髪に赤いヘアピンをつけている。そのヘアピンも僕がつけるのだけど。この学校の服装に関する校則は無きに等しいけど、ここまで髪の長い男子生徒は雪華以外いない。でも、髪を切ったところで女の子にしか見えないだろうけどな。

 ここまでなら僕女子力高ーい、で終わってたんだけど。

「寝癖ついてるよ、雪華。直しちゃうからちょっとじっとしてて」

と、まぁこんなことをするものだから。

「さすが、俺の嫁は優秀だね」

「いや、見た目だけだと完全に逆なんですが、ほんと」

僕は、ショートボブの髪にパンツタイプのブレザーなので、見た目は完全に男子生徒である。雪華もパンツタイプのブレザーである。念のために言っておく。


 一つ説明しておくべきことがある。この学校は、問題があると判断された未成年を、矯正し大人の都合のいいように教育するための場所である。校舎は全部で12棟あり、矯正可能なレベルに応じて振り分けられる。中でも、僕らの在学している12棟目、通称「監獄」は、卒業が認められた生徒がいない棟でもある。「監獄」という名に不釣り合いな静けさを持った棟だが、その実、凶悪犯の親族であったり、生まれ持って精神に異常ありと判断されたものなど、社会的に生活できない人間が大部分を占めている。その中でも僕と雪華は、犯罪的要素も、精神的な異常も見られない、極めてレアケースである。僕たちは、何故この棟なのか説明されることはなかった。しかし、脅迫に近い形でこの学校に通わされている。


原則として

・12棟の生徒は学校外に出ることはできない。

・12棟の生徒の金銭面での援助(人にもよるが、20万から30万だそうだ)

・12棟の生徒の学費全額免除

・12棟以外の生徒の12棟への侵入の禁止

などがある。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ