桃太郎って大体こういう話だよね
昔昔あるところに、おじいさんとおばあさんがいました。
色々訳あって川から流れてきた桃を切ると、中から元気な男の子が生まれてきました。
名前は桃太郎と名付けました。
桃太郎は、なんか、こう、凄い元気で丈夫に育ちました。
そのうち元気を持て余した結果、鬼ヶ島とかいう場所に、なんつーか、悪い鬼がいる事を聞きました。
田舎で携帯の電波も届かないような場所に住む桃太郎は、暇を持て余したので鬼退治に行く事にしました。
出発しようとした桃太郎に、お婆さんは吉備団子をこしらえました。
桃太郎は流石に結構な遠出なのに吉備団子一つでいいのかと動揺しました。
しかし一万円札を生まれて初めて持たせて貰った喜びで、その不安は吹き飛びました。
道中で桃太郎は犬と会いました。
犬は桃太郎に尋ねました。
「桃太郎さん桃太郎さん、これからどこ行くんですか?」
桃太郎は犬が喋る事には慣れていましたが、名前がバレていた事に激しく動揺しました。
しかし自分の持っていた旗に大々的に桃太郎と書いてあったので納得しました。
「これから鬼ヶ島に鬼退治に行くんだ。君も来ないか?」
「えー、どうしようかな」
「吉備団子一個あげるよ」
犬は悩みました。
自分は犬、肉食動物である自分に穀物が原料の吉備団子を渡されても普通に困ります。
そもそも命を懸ける大事な役割のはずなのに、団子一個とか労働基準法が許すはずがありません。
しかし犬はそのうち宝物が手に入るかもしれない事。
そしてたかだか二千字に満たない文章の報酬としては団子一つで十分かもしれないと考えました。
犬は桃太郎の傘下に入る事を決めました。
「桃太郎さん桃太郎さん、これからどこに行くんですか?」
桃太郎がふと木の上を見ると、猿が話しかけてきました。
桃太郎は少し悩みました。
ワンダーラ○ドウォーズでの猿は非常に強いからです。
扱い方を間違えると取り返しのつかない事になります。
しかし猿は意外にもというかやはりというか、吉備団子1つで納得しました。
爆弾おにぎりのような大きさの団子を特別にあげようと言ったらイチコロでした。
「桃太郎さん桃太郎さん、これからどこに行くんですか?」
桃太郎がふと空を見上げると、鳥が話しかけてきました。
桃太郎は耳を疑いました。
「鳥が喋ってる……?」
「桃太郎さん何をいまさら、犬だって猿だって喋ってるじゃないですか」
「や、猿は一応霊長類だし、犬だって今時ソフトバ○クのCMで毎日喋ってるぞ」
「桃太郎さん! ライバル会社ですよ!」
しかし桃太郎は思い返しました。
そうか、こいつはインコだろう。
賢いインコなら、まぁ喋る事もあるだろうなと。
でもなー、インコがお供とか、なーんかショボいよなぁ。
「よし、お前は何か緑だしキジって事にしよう、うん」
「あ、はい」
なんやかんや犬、猿、雉を吉備団子一つという契約で言いくるめた桃太郎は、鬼ヶ島に到着するのでした。
「おーい開けろー、桃太郎が鬼退治に来たぞー!」
「どなたですか? 我が家にはテレビもパソコンも無いから、払わないって言ったじゃないですか!」
「話しても分かり合えないようだ。雉! 猿! 門を開けさせろ!」
「ヒャッハー!」
雉は壁の上から入り込むと、力の無い鬼を相手に突っつきまくりました。
その間に、猿は門のカギとチェーンを外しました。
「桃太郎さん! 開きましたぜ!」
「きゃあ! 何! この人達!」
騒ぎを聞きつけた鬼達も、桃太郎とそのお供達は見事に返り討ちにしていました。
「桃太郎さん! お宝ですぜ!」
「そ、それは我々が代々大事にしていた……!」
「巣作りド○ゴンじゃねーですか! ほぼ新品なのでヤフ○クで三万で売れますぜ!」
「こっちは村の人のお宝じゃねーか!」
「いや、アレは向こうが勝手に恐れて献上してきた物で……」
「じゃあ没収だ!」
「というかテレビもあるじゃねーか! 嘘付くとは悪い奴らだ! 没収だ!」
「鬼! 悪魔!」
こうして、桃太郎は悪い鬼達からお宝を取り返しました。
そして村に返すという事も特にはせず、おじいさんとおばあさんの元に持ち帰りました。
おじいさんとおばあさんは大層喜んだそうな。
なお、お宝を分けてもらえなかった犬、猿、雉が訴訟を起こすのはまた別のお話
めでたし、めでたし。
桃太郎を改めて読み返してみたら、村の物を盗んだ鬼を退治して
その村の宝を返すでもなく持ち帰って暮らしましたエンドなんですね
なんと恐ろしい……