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二人の始まり
木々が生い茂るジャングルの奥地。蒸し暑い空気に小気味の良い鳥の声が混ざる。
「助けてくれて……ありがとう。何てお礼を言ったらいいか。金でもなんでも欲しいものを言ってくれ」
一人の男と一人の少女。ぼさぼさの髪が目立つ男と、密林に似合わず肌の白い少女。二人の背後では一台のジープ車が横転し火をあげている。
「………………。そういうのはいいよ。……ただ」
少女は緑色の髪を揺らしながらかがむと皮の鞄を拾い上げた。それをカッターシャツ姿の男へと差し出す。
「ただ?」
うっすらとクマを作った男はそれを受け取ると、少女の緑色の透き通った瞳を覗き込んだ。
「――――――――ニホンに、行ってみたいな」