friend
ちょっとした息抜き。
ヘリで近くまで送ってもらって、家についた。そしてドアを引いてみると、何故か鍵が開いていた。
「あ、そう言えば鍵をかけて無かった…」
泥棒とか入ってないよな?と思いつつドアをコソッと開けると、俺のもう一つの靴の他に、見知らぬ運動靴と見知らぬ革靴が並んでいた。二人掛かりかよ…
俺はあまり音を立てずにリビングに向かった。すると、何かいい匂いと水の流れる音がしていた。俺がリビングに顔を出すと。
「あ、おかえり紡!遅かったね。もうご飯作れたから、座ってて。」
そこには料理を終えた八方さんがいた。
ナンデオマエガイルンダYO…
いやまじでなんで居るんだ。てか何料理してんだよ。まるで自分の家みたいな口ぶりじゃないかよ。と、いろいろ突っ込みたいが、取り敢えず席に着きご馳走を待った。
前の席には刀静さんがいた。どうやら八方食堂には先客がいたようだ。座禅を組み、目を瞑っている。瞑想中のようだ。
「はいはいお待ちー!美里唐揚げに美里サラダに美里味噌汁だよ!ご飯も沢山あるからもりもり食べてね!」
八方さんが合図を出すと、刀静さんは目を開け、目の前の食事に対し手を合わせ…
「いただきます。」
そう言って、主菜副菜達をまんべんなく食していく。お、おぉ。刀静さんって行儀がいいんだな。対する美里は、いただきますとは言ったものの、味噌汁しか飲んでいない。食が偏っている。
「………。」
急に刀静さんの箸が止まった。どうしたのだろうと顔を伺ってみると、すごく深刻な顔をしている。そして、まだ残っている白米の上から更に白米をもう一皿分入れだした。迷走中のようだ。
俺も食事をとろうと、とりあえず唐揚げに手を出した。さて、どんなものか。
「いただきます。」
パクッと口に含んだ。
…おぉ、おぉ、おぉ!美味い!これはすごくいい!これはなんて言うのだ!?家庭の味?いや違う。この肉汁感や肉の程よい柔らかさ。間違いなく真の唐揚げだ!他の料理はどうなんだ!?と、俺はサラダや味噌汁にも手を出した。案の定、唐揚げに負けず美味かった。
「美味い!八方さん、料理上手ですね!」
感動し、俺はそう言った。
「まあね!それはそうと紡。名前で読んでよ!堅苦しいのは嫌だよ。」
あぁ、友達なんてあまり居なかったから、つい堅くなってしまう。慣れないけど、俺はできるだけ自然に、
「あぁ、名前で呼ぶよ、美里。」
と言った。なんだ、凄い照れ臭い。顔赤くなってないかな?なってたらもっと恥ずかしい。でも、ちょっと楽しいかも。
俺は美里とはいい友達になれそうだと思った。
刀静さんは、静かにご飯を食べている。申し訳なくなり、俺と美里も静かに食を楽しんだ。
その後、美里と刀静さんを見送り、その日は終わった。