distiny
新キャラ登場。
玄関のドアを開けると、男が立っていた。男には刺すような威圧があり、静かなオーラを持っていた。俺の緊張は絶賛上昇中だ。
「な、何か…御用ですか?」
声が震えながらも俺はそう問いかけた。
少しの間があり、男は口を開いた。
「真崎紡、お前に来てもらう。」
そう言うと、男は俺の体を持ち上げた。
何がなんだかわからない。
「ちょっと…なにやってるんですか?」
そんな事を言ってるうちに、何かの準備ができたようだ。そして、数歩玄関側に後退し、助走をつけてマンションから飛び降りた。
俺の住んでる階は10階だ、ここから何mあるのだろうか?そのくらいの高さから飛び降りた。
「え、え、えぇぇぇぇぇぇぇ!」
何も考えられなくなるうちに、俺は気を失った。
…気がつくと、俺は荒野のような場所で横になっていた。意識を失ってしまったため、ここで寝かされていたのだろう。
起き上がると、目の前に男は立っていた。
「目が覚めたか、真崎。」
「は、はい。ちなみに…ここはどこですか?」
とりあえず状況の確認をしようと思い、男に問いかけた。お、怒られないよな?
「今はそんなことどうでもいい。お前はそこで見ていろ。」
「そんなっ…は、はい。わかりました…」
どうでもいいと言われ、反論しようとしたが、威圧に負けてしまった。ところで何を見ればいいのだろう?ショーでも始まるのか?
そんな的外れであろうことを考えていると、男は前方に歩き出した。よく先を見ると、銃を構えて岩陰に潜んでいる3人の影が見えた。
「危なっ…ングッ。」
危ないと言おうとしたが、誰かに口を抑えられた。ヤバイと思い、なんとか俺が振り払うと、
「ダメダメ、敵に存在を悟られちゃだめだよ。君は一般人なんだから、すぐにバーン!だよ?」
同じ歳くらいの青年が背後にいた。俺は何故今まで気づかなかったのだろう。こいつが敵なら殺されてた。
「でも、スーツの人が…」
俺はできるだけ声を小さくして言った。すると彼もできるだけ小さな声で、
「大丈夫だって。なんたって僕の上司だから。」
関係無いような気もするが、とりあえず苦笑いで返した。彼は気にする素振りも見せなかった。俺なら傷ついてしまうだろう。じゃあ苦笑いするなよ。という話だが…
改めて男の方向を確認すると、3人の影が射撃態勢に入っていた。
「本当に…大丈夫なのか?」
口ではそう言ったが、内心意外と大丈夫なんじゃないかと思っていた。もし、本当に男は雰囲気通りの男ならば、全弾避けてしまいそうだ。
そんなことを思っているうちに、銃声が数発聴こえた。俺は息をのんだ。
男はその瞬間、腰から抜刀するように、何もないところから刀を取り出し、銃弾を全て真っ二つに斬った。そして、刀を納刀するかのようにまた戻した。わずか0.7秒程の出来事だっただろう。
「す、すごい。」
「でしょ?だから言ったじゃん。」
隣の青年はまるで自分のことかのように嬉しそうに話している。できれば自分のことで…いや、なんでもない。
そんなことを思っていたら、隣の青年が準備運動をしていた。ちょっとまさか貴方も変なマジック使うんじゃないでしょうね?
「そろそろ僕の出番っすね。」
案の定、青年は何もないところに固定砲台タイプの大砲を召喚した。大地から何かエネルギーを吸収するように発射口が光りだした。
すると鉄球が造形され、その鉄球は放たれた。
「いっけぇぇぇぇぇ!」
鉄球は3人の影に降下し、着弾とともに大爆発が起きた。隣の青年はガッツポーズをとっている。なんだ、この人もすごい人なのか。
気がつくと、男は戻っていた。青年に対し、この人は少しも嬉しそうな顔をしない。正直怖い。
「どうだ?今何が起きたか理解できたか?」
男は質問してくる。いや、愚問だろ。
「理解できるわけないです。」
男は顔一つ歪めず、
「そうか、ならこいつの鉄球はどうやって造形されたか理解できたか?」
いや、わかるようなわからないような…という感じだか、とりあえず答えてみる。
「岩石の鉄分を集めて鉄球を作ったんですか?」
男はやはり表情を変えない。本当に怖い。ヤメテクダサイ。と思っていると、
「成分としてはそうだな。なんで集められるかは後にわかるだろう。」
意外とあってた。発言してみるものだな。
「は、はい。」
俺はとりあえずそう答えた。
何故だろう、青年が空気化してるような…あ、座りこんで休憩してる。
「さあ、私達と来るか?自分で選べ。」
急に自分で選べって…と言うか、俺に何ができるんだろう。絶対必要ないだろ。
でも、平凡な俺には2人があまりにも魅力的だった。このままついていってもいいと思った。
「行きます。なんというか、消化不良なんで。」
男は頷くと歩き出した。俺と青年も後に続いた。