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第二章 姉妹たち

 それ、本末転倒じゃない?


 なんてことはない。考えは甘いのかもしれないけど、とりあえず一定の期間をやり過ごせればいいんだ。まずは兄の驚異から姉妹たちを守ることが最優先で、わたしはお兄ちゃんのように、一生家族で完結させようなんて思ってはいない。

「まさかとは思うけれど――」

 お兄ちゃん、兄妹同士で子供作るつもりじゃないよね?

 こんな家に住んでいるのもあってか、兄妹間の結婚について調べたことがある。当然というべきか法律上禁止されている。認められていない。じゃあ異母兄妹、母が異なる場合はどうなのか? という問いに対しても血の繋がりがある限り、認められていないのだそうだ。

 婚姻届を提出しない事実婚ならば、(うち)みたいに、いくらでも好きにやればいいと思うが、話が子供に及ぶと口を挟まざるを得ない。最初から挟むつもりだったろうってつっこみはなし。

 血が濃すぎるとよくないとか。悪影響が出るとか。

 よく聞くよね。

 うーん。この辺りは考えてもわからないから、一旦保留ってことにして。あとであいつにでも聞くか。変な顔されるかもしれないけど。


「やっほー穂々ちゃん」

「やっほー桃さん。お出かけですか?」

 四阿で今後の作戦を練っていたら、夏目家母の桃さんが出てきた。

 クソ生意気双子姉妹の母である。

「そうよー。穂々ちゃんも一緒に来る?」

 桃さんはまだ三十半ばのお淑やかな女性だ。今日は、白のワンピースに青のカーディガンを合わせていて、落ち着いた色合いが桃さんにとてもよく似合っていた。桃さんはパパと同じく作家で取材以外は基本家にいる。パパと違いジャンルはSF。わたしには小難しくて最後まで読めた試しがない。

「やー。わたしはいいです」

 予定だと、桃さんは食料品の買い出しってなってた気がする。その辺のスーパーだろう。行く理由なし。

「火曜だから桃さんが当番でしたっけ?」

「そうそう。巫子と深舞(みまい)と。だから詩舞ちゃんとも一緒になってお買い物ね」

 境ファミリーは夕食をみんなで食べる。沙弥姉を抜かして合計十七名の大所帯。流石に一人で用意をするってわけにもいかないため、各家の母が、曜日毎に当番制で買い出し&料理を行っている。まあ、このへんは割といい加減だ。交代はしょっちゅう。

 今日は一里家、夏目家、荒井家のお母さんたちが担当するらしい。

 それぞれの母で味付けが異なるため、夕食はどこの一般家庭よりもバラエティの富んでいるんじゃないだろうか。桃さんの味付けは若干濃くてわたしは苦手だった。

「珍しいですね。双子は一緒じゃないんですか?」

「あの娘たちも最近夕飯の買い物はつまらないからって付いてきてくれなくて。薄情よねえ。アイスだけ買ってきてお菓子も買ってきて。そんなのばっか」

「お年頃ですねー」

 夏目家の双子は、極度のお母さん子でどこに行くにも絶対にお母さんに付いて行く。最近はそうでもないのか。知らなかった。

「またね、穂々ちゃん」

「あっそうだ。待って、桃さん。今日ってずっと下にいました?」

 立ち去ろうとしていた桃さんを呼び止める。

「? 下って下?」

 庭と、続いて一階の自分の家を指差した。

「ずっといたよ? 何で?」

「いえ。何でもないです」

 桃さんは何も訊かずジッとわたしを見た。観察するような瞳は双子を思い出した。

 それから、桃さんは手を振って正門に向かって歩いて行った。途中、荒井家から巫子さんと深舞さん、それから詩舞ちゃんが一緒になって出てきて合流するのが見えたが、わたしは顔合わすのも面倒だった為、碧姉の囲い(植物園)に隠れてやり過ごした。


 さて。どうしたものか。

 目の前の茎を青虫が這っている。手持ち無沙汰で行く道を塞いでみる。青虫は迷惑そうに進路変えたが、体を支えきれなくなって落ちた。また上ろうとする。わたしは興味を失くす。

 沙弥姉が部屋に入れてくれるとも思えない。

 が、ここでずっとこうしていたら、本当に干からびそうなくらいに暑い。ちょうど午後の一番暑い時間帯。ここは沙弥姉ん家に行って、一旦涼ませてもらうのも有りかな。たまの訪問だと思えば。

 羽田家を見上げる。屋根続く家の中でも一番目立つ造りで、沙弥姉のお母さんである沙々弥さんの趣味なのか、淡い黄色の外壁に窓枠の豪奢な装飾が目立つ。云ったように、外観はベージュとか白だとかの、似たような色の家ばかり並んでいる中で、そこの家だけ異様に。歪とまではいかなくても統一しようぜって云ってやりたくなる。

 沙々弥さんは、まあ、独特。あんまり関わることもないけど。

 生きてきた家の影響。例え、引きこもりでも、ああいう形になってそれが現れるのだろうか。昼間見た素っ裸の露出狂。ベージュはベージュだけど。

 よく見えないけれど、二階の沙弥姉の部屋は、午前中見た光景が幻だったかのように、いつもと同じくカーテンがぴっちり閉じられている。


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