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第四章 エロと推理2

「あー、面白かったあ!」

「だろうね。碧姉も趣味の範囲が広いねえ」

「週ジャンで連載してる作画の人がすごい絵上手くてさあ、この作画の人は、前になにやってたのかなあって調べていったら、エロ漫画だったのー。そしたらハマっちゃってねー。まあ、私はエロ目的っていうよりは、やっぱり美麗な絵が見たいからなんだけどお。ほら、こういうのってさ、身体全体を描くことが多いから、絵凄い上手い人たくさんいるんだよ」

 そうなんだ。死ぬほどどうでもいい。

「きいちごといちごはいつから?」

 出来るだけさりげなく。碧姉はマイペースでのんびりしているが、察しの良いところもある。お兄ちゃんのことが碧姉に露見すると色々と面倒だ。勿論既に繋がってる可能性もあるが。

「えー? 夏休みちょっと前くらいかなあ」

「……もしかして、昨日も双子の家行ってたのって――」

「そうそう! 新作のエロ漫画たくさん買ってきたから、貸し借りをちょっとねー」

 わたしの部屋からも見えたな。たしかに大量の紙袋を持っていた気がする。

「碧姉……」

「知識と財産の共有だよお。家族だもんねー」

「なんか揉めてた?」

「揉め?」

「なんか声が聞こえたから」

「そういえば穂々ずっと家にいたもんねー。鍵掛かってたからさー」

「……鍵?」

「そうそう。あれー? って思ってぴんぽん押したらきいちごがきて」

「ふーん。なにかあったのかな」

 わたしたちは基本的に家の鍵を掛けない。正門はもちろん掛けているが、中庭から続く九棟の家は、例え名字は違っても、分かれていても、同じ家に住む家族なんだから鍵をかける必要などないだろう――それがパパの言葉だ。

 個々の家が部屋って感覚? しっくり来るけど、この感覚はわたしたち以外に伝わらないかもしれない。

「わかんない。通してもらってから漫画並べたのね? きいちごだけしかいなくてー。いちごはー? って訊いたら『ちょっと買い物に行ってるわ』って言うの。それできいちごが、トイレ行きたいって言ってちょっといなくなったのね。そんで今度は乱れた感じのきいちごがきて、さっき何話してたっけ? なんて言い出すからなんなのーって思って」

「乱れた?」

「汗かいてー、髪がぐちゃーってなっててー。今思えばあれっていちごだったのかなー? そのあとも結局来なかったし」

「ふーん」

「それで、どうしたの?」

「ああ。いや」

 期せずして目的がある程度果たされてしまった。さてどうしよう。あ。そうだ。良いこと思いついた。

「――わたしにも借してよ。エロいやつ」

「おおっと? あんだけ双子に言っといてー?」

「そういうの読んだことないし。……わたし、女の子どおしのやつがいいかな」

「……へー」


 大量だ。

 自分の部屋で紙袋から碧姉に借りたいかがわしい漫画を取り出す。計十冊。

 碧姉の勧めでそういうことならソフトな方から読んでいった方がいいと見繕ってもらった。あんまりエッチなやつではなく、女の子通しの会話主体のものや、じゃれ合いの延長線上みたいなものが多い。これを短期で読みきって、それからハードな本も借りていく。

 碧姉は興味深そうにしていたが、わたしの趣味については何も言わなかった。わたしがこういうものに興味があるということを碧姉に印象付けさせて、徐々に碧姉と変な雰囲気になっていく。郷に入れば郷に従えってやつ? 違う?

 ていうか碧姉もこういう本持ってるってことは、そっち方向に少なからず興味はあると見た。本人は、エロより絵が目的と言っていたが、どうだか……。

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