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第四章 エロと推理

 え? どーゆーこと?

 真っ直ぐになったかと思えた線が、莉菜姉に言われた最後の一言で再び混線を始める。

 中庭でぐでっていたら、また莉菜姉と顔を合わせるのもなんとなく気まずいな、と思ってこうして部屋に一人でいる。

 いくつか考えられる可能性はある。

 だいじょぶ。わたし頭いいから(お兄ちゃんのお墨付き!)。


 ママが作ってくれて冷蔵庫に入れてあった昼食のピラフを温め直して食べる。

 ちなみに沙弥姉はどうしているのかと言うと、お母さんの沙々弥さんが作ってくれたものを毎日用意されている。沙々弥さんも大変だ。

 食べてしばらくすると、プールから帰ってきたのか双子と詩舞ちゃんと碧姉の声が聞こえてきた。みんなこれからの予定は入れていなかったから家にはいるはず。わたしの閃きを補強するためにも、碧姉に一旦話を聞かないと。

 

 灯里家は温もりを感じさせる木目調の外壁のお家。床も天然のアカシア素材で、その造りが碧姉のマイペースな性格を形作っていったんじゃないかな、と思ってしまう。

 二階に碧姉の部屋はあるけれど、彼女はあまりそこにいない。どっちかと言えばリビングにいることの方が多い。どっちかな? と、思ってリビングに向かうとやっぱり正解。碧姉がいた。そして双子もいる。テーブルの上に本を積んで、それを三人で取り囲んでいる。

「うげ」「うあ」

「……うん?」

 双子からなにやら言葉になっていない呻き声。三人ともプール帰りなのもあって、髪がボサってる。

 テーブルに目をやった。

「わーお……お盛んなことで」

 それくらいしか感想が出てこない。

 テーブルの上には山と積まれたエロ漫画の数々。かわいく描かれた美少女たちが、半裸、もしくは全裸で表紙を飾り、口にするのも憚られるようなタイトルが添えられている。

「よかよか。ほっぺちゃんは何も言いませんよ。女子中学生だもんね。男子も女子もみんなエロい時期だよね。わたしも経験あったかな。ないような気がするよ」

 双子は二人して口をぱくぱくさせている。魚みたい。

 ふと横を見れば、ソファで詩舞ちゃんが寝息を立てていた。子供のいる部屋で何をやっているんだか。

「ふっ……ふふっ」

「おい、次女よ。我が家の天使たちに何してくれとんのじゃ」

 口元を抑えて必死に笑いを押さえているこいつが犯人だな。

「違うよー。この前さー、漫画借してーって二人が言うからさあ。その中にエロ漫画紛れ込ませてみたらさあ。なんだか嵌っちゃったみたいでー。私の渾身のコレクションをね。見繕ってたの」

 またこの姉は、男子高校生みたいなことして……。

「ち、ちがうの!」「これは……貸すっていうから仕方なく!」

「なにが違うのか言ってみ」

 ヤーさん風にちょっと凄みを効かせる。特に意味はない。

「う。あう」「ほっぺ……」「きら、嫌いに」「ならないで」

「あー!! 泣かない、泣かない!! 別に嫌いにならない!! ちょっとふざけただけだって。別に人の趣味は否定しないよ。恥ずかしがることないって!!」

 いきなり瞳に涙を浮かべ出したきいちごといちごの機嫌取り。思春期の二人にこの展開はいくらなんでも可哀想。後ろで笑ってる碧姉が恨めしい。

「……ほんとう?」「……嘘じゃない?」

「うんうん。無し寄りの有りだと思うよ。わたしは」

 こんなんかわいい物である。異母兄妹通しでやってるどっかの誰かさんに比べれば百倍マシだ。

「そう……」「じゃあ借りてくわね」

「借りてくんかい」

 双子たちは事前に用意していた紙袋にいかがわしい漫画をそそくさと詰め込むと、足早に部屋を出て行った。

 ほんと、お盛んなことで。


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