第23話、装備
これからショッピングモール内のゾンビを殺しに行く。今までは出会い頭でやむなく倒してきたが、改めてゾンビの頭を破壊しに行くと言う事はそれ相応の覚悟がいる。
そのゾンビの中にはプレイヤーも含まれるだろうから。
『カチャリ、キイィー』
防火シャッターの小脇にある鉄扉の鍵を解錠し扉を開ける。耳を澄ます限り扉の向こう側には、イキが良いゾンビはいないようだが——
「いたぞ! 」
誰かが小声で叫んだ。
扉を潜り見れば数メートル離れた通路に、背中を向けた男のゾンビがその場でフラフラと横に揺れながら立っていた。
「任せろ」
刀を所持している伊藤が小走りで駆ける。
そして頭部へ向け横薙ぎの斬撃をお見舞いした。その威力で転倒するゾンビ。そこへ刀を所持する他の二名も加わり、寄ってたかって刀を振り下ろし続ける。
それは斬るというより、叩き殺すと表現した方が良い光景であった。
ゾンビとは言え、人の形をしている。それが最早修復不可能なまでに頭部や顔面を破壊しつくされている姿に、思わず嫌悪感を抱いてしまう。
そんな真っ白な床に濁った血液で汚すこのフロアは、既にホームセンターエリアの中のようで、ホウキや洗剤等の掃除用品が棚に並べられていた。
因みにこの掃除用品コーナーには、使えそうな武器は無さそうだ。
「しらみ潰しに行くぞ! 」
ホームセンターエリアには十二体のゾンビがいたが、そのどれもが個別で行動していたため、人間で取り囲んで刀やバールでの滅多打ちで倒していった。
そして伊藤だが、何度もゾンビに斬りかかる内に剣が上達したのか、一撃でゾンビの頭を切り落とすと言う芸当を見せるようになっていた。
もしかしたら最初のゾンビを滅多斬りにしたのも、首を狙ったのがズレてしまい結果そうなってしまったのかもしれない。
そしてこのホームセンターエリアには、あのチェーンソーがあった。破壊力抜群だろうけど——
手にしてみて思う。表示されている約4キログラムは結構な重量で、長時間扱うにはそれなりの体格が無いと厳しいと思う。
約2キログラムと軽量化コンパクトタイプの物なんてのもあるけど、エッジが二十五センチくらいと短くかなり対象に接近しないといけないため、その分危険も伴いそうだ。
しかも電気式と燃料式の物もあるのか。どれにするのか迷うな。燃料式の方が威力が高いらしいけど、燃料を入れる分重量が更に重くなる。
チェーンソー、ボスとのタイマンとかなら使えなくもないけど、大量のゾンビたちと長時間渡り合うのを想定すると使い辛い武器であるように思えてくる。
少し場所を変え園芸品コーナーの棚を見てみると、枝切り挟みなんて物があった。
仲間の男の一人がそれを手にしているが、それこそ枝を切るようにしてゾンビの頭を切り落とすのは考えるだけで残酷な事になりそうで気が引ける。
そして工具売り場に行くと、釘打ち機が有った。
確か海外の釘打ち機って日本の釘打ち機と違って安全装置が無くて釘が飛んでいくって聞いた事があるけど——
試しに壁に向かって打って見ると、釘が飛び出し簡単に突き刺さる。
凄い、実際に飛んでいった!
これは使えるかもしれないけど、これもゾンビの顔面に向かって近距離から打ち込む事になるのか。顔面に釘が刺さるのを想像してみる。かなり残酷な殺し方になるような気がして来た。
どうする? 殺らないと殺られてしまう世界。でも自分がゾンビになっていたと考えると、どうしても残酷な殺し方は躊躇いが生じてしまう。
でもこんな甘ちゃんな考えでは、ソラを守れないかも知れない。代用品が見つかるまでは手にするけど、他に何も無ければ腹を括らないといけないかも知れない。
そしてキャンプコーナーの商品ケースの中に、リーチは短いが肉厚な刃と重量が魅力的なサバイバルナイフ類が保管されているのを見つける。
ん? 先客がいたのかな?
商品ケースは鍵が掛かっていたのだが、バールなどのなにか硬い物で既にガラスは破られていた。ただ商品はまだ沢山残されていたので、それらをみんなでショッピングカートに入れていく。
そして見つける。ホームセンターエリアの隣の一角にスポーツ用品店があるのを。
やった、もしかしたらお目当の物があるかもしれない。商品棚を見て回る。棚には各種スポーツ用のシューズやスパイクが並び、あとは各種ボールにラケット、グローブと来て——
よし、見つけた!
そして手にして思う、やっぱり金属バットが良いなと。
重さも重すぎず、少年野球時代に素振りをやって来た分手の馴染み具合も他の武器と比べてしっくりくる。
五十歩百歩かもしれないが、まだ切断とかより叩き殺す方が残酷じゃないような気もする。
俺は二本の金属バットを肩紐付きのバットケースに入れると、頭を通して背中に背負う。
またヘルメットを被ってみるが、少し激しく動いたらズレるのと重量が気になってしまう。
出来るだけ身軽じゃないと、逃げ惑う時に足を引っ張ってしまうかもしれない。でも誰かが必要とするかも知れないので、籠の中に二つほど入れておくか。
そうしてショッピングカートに大量の武器や防具を詰め込んでいる今の俺の装備は、金属バット二本に工具売り場から拝借していた工具ベルトに挿しているバール一本。そして肘と膝にバレー用の布で出来た黒のプロテクターを取り付けた姿だ。
とそこで、風に乗って誰かの鼻歌が聞こえたような気がした。




