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ホラーホラーオンライン 〜ホラーゲームに挑戦したら化け物達に追いかけ回され、しかも脱出不能で〜  作者: 立花 黒


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第21話、転送這いずる街

 ◆ ◆ ◆



 眼鏡から攻略組が第三ステージをクリアした事を知らされたのだが、その時に秋葉さんがみんなを救うため炎に包まれて死亡してしまった事を聞かされてしまう。


 そして秋葉さんの死亡を聞いてから一週間が過ぎていた頃。潤滑油を手に入れ仮初の安心を手に入れていた俺は、多くの犠牲者を出しながらも第四ステージを攻略組がクリアした事を眼鏡から聞かされる。

 またその間攻略組かそのサポーターにならないか眼鏡に誘われ続けていたが、その全てを断りソラとの時間を大切にしていた。


 俺はこうしてソラと一緒にいるだけで良いんだ。救援が来るのをここでじっと待つんだ。そう、俺たちの本当の身体は今頃事件を知った人達に助けられ、病院に運ばれているはずだから。


 その時、ジッジッっと頭にノイズが走る。


『プレイヤーの皆様へ。これより世界の主より説明があります』

『プレイヤーの皆様へ。これより世界の主より説明があります』


 突然目の前に現れたテロップ。その身に覚えのある現象に、この地獄のような世界のスタートを思い出す。


「生存者の皆さん、お久しぶりニャ。元気にしてたかニャ? 」


 光猫の姿は見えない。今回はテレパシーなのか?


「今日は退屈しているプレイヤーのために新しくイベントを開催するニャ。その名も『サバイバル』ニャ。十日間ゾンビがわんさかな街で逃げたり戦うのニャ。十日間逃げきればクリアの簡単なイベントニャ。また北にある鳥籠の街に一人でも逃げきったら、その時点の生存者全てがクリアだニャ。あとスタート地点が同じが良い人は、転送される瞬間に手を繋いでいることをお勧めするニャ」


 その言葉を受けてソラの手をギュッと握りしめる。


「転送先の街だけは、日中でもゾンビが徘徊しているニャ。あと噛みつかれたら12時間でゾンビ化するニャが、病院にワクチンがあるから最後まで諦めないで欲しいニャ。そうそう、その期間だけ生者も食欲が解禁されるから、餓死してゾンビにならないよう気をつけるニャ。それじゃ皆さん、全てのサーバーを統合して全員で挑んで貰うから、みんなでワイワイ楽しんでくれニャ」


 そこで声が途絶え、再度目の前にテロップが表示される。


『ただいまより這いずる街へ転送されます』

『ただいまより這いずる街へ転送されます』


 くそっ、いきなりか!?

 そして俺の視界が暗転した。ノイズが走る。それから暫くすると、遥か先に小さな光が見えた。それが段々と大きくなり自身を包み込むまで輝き出したところで視界が開く。


 見れば白を基調とした部屋、今回はテーブルについて食事をしていた。対面にはソラが座っており、同じく食事をしている。

 どうやら一軒家にいるようだが。ただ呑気に食事なんかしている場合じゃない。早く何処かに逃げないと。しかし身体に自由はなく、自動で勝手に動き黙々と食事をしている。

 そこで車のブレーキ音とドンと言う衝突音がした。その音に五年前の嫌な記憶が蘇る。

 ……空。


「お兄ちゃん、早く逃げないと! 」


 そのソラの言葉で、身体の自由が戻っている事に気付く。

 そして俺はソラを抱きしめていた。


「お兄ちゃん? 」


 ソラはここにいる。もう絶対に離さない。抱きしめから手を握るに変えた俺は、ソラの肩に片手を置く。


「すまない、早く何処かに身を隠そう」


 その時この民家からガシャンとガラスが割れる音が鳴り響いた。もしかしてゾンビが侵入してきたのか!?

 急いでソラの手を引き、玄関から外へと出る。そこは晴天の下、幅広な道に広い敷地で芝生の家が建ち並ぶ、テレビなどで見るアメリカの街並みそのものであった。


 そしてここは既に地獄へと変わりつつあった。壁にぶつかり炎上する乗用車に、通りで押し倒されている人に馬なりで跨るゾンビ。周囲の家々から上がる悲鳴と怒号。どこかでガス爆発の音とガラスが割れる音。炎に包まれている民家に、ゾンビの頭を近距離から拳銃で撃ち抜く人。

 この街には拳銃が普通にある!? そうか、アメリカ風の街並みなためここは銃社会なんだ。寝室の枕の下とか調べたら、銃を発見出来るかも知れない!


『キキィー』


 そこで走り去る車に全速力で追いかけるゾンビの姿が。やばいタイプのゾンビだ!

 そしてそいつが近くで俺たちと同じように家の前で棒立ちになっていた人へ、進行方向を変え襲い掛かる決定的瞬間を目撃する。

 ここにいては危険だ! 首を左右に振り何かないか探す。

 俺たちがいた家にはゾンビがいる可能性が高いため、もう戻れそうにない。兎に角ここから離れないと。そう、車で何処かに逃げないと!

 近くにあった車に乗り込むと、キーが挿しっぱなしだった。

 よし、これで移動手段を手に入れたぞ。

 助手席にソラが乗ったのを確認してすかさずロックをかける。

 そうだ、マップを開いてみよう!

 するとこの這いずる街の全体図が表示された。


 巨大な街の東と南には、海岸線が広がる。そして今いる地点は南地区の住宅街。

 ここから街の中心地に向かうべきか? そこからだとゾンビが少なそうな東地区の工場地帯へ行ける。このスタート地点でさえこのゾンビの数。ここに残るのは危険すぎる。いや、中心地にショッピングモールがあるからここに逃げ込めれば——


『バダンダンッ』


 運転席側の窓ガラスに女性のゾンビが素手で叩いてきていた。兎に角発進させよう!

 そして何処か大きな建物へ逃げ込んで十日間をやり過ごすんだ!

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― 新着の感想 ―
黒幕・光猫による今回の告知、短く端的で良いですね。 人をおちょくる愉快犯的トリックスターは理不尽でなきゃ。何がしたいんだこいつ感が凄い。 (小さな気付きと言うか感想なのですが。 前回の、初登場時光猫…
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