表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ホラーホラーオンライン 〜ホラーゲームに挑戦したら化け物達に追いかけ回され、しかも脱出不能で〜  作者: 立花 黒


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/37

第16話、三人娘

 非常階段へと続く扉を開くと、吹き荒ぶ風と一緒に横殴りの雨が出迎えてくれた。

 そして所々茶色く錆び付き塗装が剥がれ落ちている螺旋階段を上って行くと、二階フロアへの扉が現れる。それを先頭の眼鏡が、一階で入手した鍵で解錠し扉を開く。


 静まり返った室内。二階は病室が並んでいた。


「ナースステーションを調べるのは最後。まず他の部屋を調べよう」


 その言葉を受け鍵を探すため、文句も言わず黙々と汚い枕を動かし汚れた布団をめくる作業に入る田中とおっさん。

 因みに一階の薬品庫からは鍵が見つからなかったそうだ。田中とおっさんが嘘をついていなければの話なのだが。

 そして俺はと言うと、同じく黙々とベッドの下を覗き込んでいる眼鏡に疑問をぶつける。


「どうしてですか? なぜナースステーションが最後なんですか? 」

「学くんか、……ゲイリーのステージ、最初にカットインが入ったろ? 」

「はい」


 いきなりのピンチ、あれはキツかった。


「そこに入ると、ここでもカットインが入って、下の奴が上の階に上って来てしまう。だから取りこぼしがないよう、そこを調べるのは他の部屋を全て調べてからだ」

「つまり宝玉は、このナースステーションにあるのですか? 」


 すると眼鏡が意味深な笑顔を見せる。


「学くん、やはり君は他とは違うようだ。見所があるよ」

「はぁ、ありがとうございます」


 それからどれだけの時間が経ったのだろうか? ナースステーション以外の病室や、途中にあった薄汚れたトイレまで探してみたが、なんの成果も無いまま奥の部屋へと進み時間だけが過ぎていく。

 そして苛立ちを隠さない眼鏡。


「くそ、二階には鍵が無いのか? 」


 そこでそれは唐突に起こった。ノイズと共にカットイン。盲目ナースが二階へと続く階段をぺたっ、ぺたっとゆっくり、そして確実に上がってきている映像が流れ始める。

 そしてカットインが終わり、一同が話が違うじゃないかと抗議の意味を込めて眼鏡に視線を向ける。

 すると眼鏡は青ざめていた。


 うん? おかしい。何故眼鏡はこんなにも青ざめているのか? 盲目ナースが予測不能の行動をしているとは言え、また何処かでやり過ごせば良いだけの話じゃ無いのか? 幸いこの階は一階のようなバリケードが無いため、通路を左右どちらへ進んでも一周出来る。つまり体力がある限り走り回れば捕まる事はなさそうだ。

 もしかして足がゲイリー並みに早いのか?


 ホラーホラーに出てくる化け物たち、そのどれもが強敵だがある法則のもと強さ設定がされている。男の化け物の方が体力があったり、女の方が念力持ちであったりと。そして大体女で足が早い奴はいない。

 それに加えての盲目ナース、目が見えないため足が早い設定はないように思える。


 しかしすぐに眼鏡が青ざめた意味を知る。

 扉を開け侵入してきた盲目ナースが、いきなり山村を殺した金切り声を上げ始めたのだ。しかも足音からするに、小走りで移動している。

 これはただ逃げる分には良いが、探し物をしながらとかは簡単に出来そうにない。


 兎に角ナースステーションやどこの病室にも扉がないが、何処かに逃げ込んで身を隠さないと!

 そして隠れてみて思う。病室の廊下側の壁に張り付いてやり過ごそうとしても、かなり縮こまらなければ身体がはみ出してしまう事を。

 そこでふとトイレが目に入った。

 そうか、トイレなら扉がある個室があるじゃないか!

 早速トイレに向かうが、個室の扉が閉まっており中に入れない。さっきは普通に開いていたのに。すると中から田中の小声が。


「ここは俺の場所だ! 」


 くそっ、諦めるしかないのか!

 そしてトイレから出て他に身を隠す場所を探さないといけないと思っていると、すぐ近くから金切り声が聞こえ始める。

 駄目だ、今から外に出たら十中八九見つかってしまう。こうなったら、もう田中にどうあっても同席させて貰わないと助からない!


 とそこでふと目の端に違和感を感じとる。

 あれ? おかしい、目の錯覚か!?


 いや、見間違いじゃない!

 手洗い場の鏡の一つが、波打っている!?

 金切り声、頭の中身を震わすあの叫び声が上がる時、それに合わせて三つある内の真ん中の鏡がまるで波紋が広がるようにして波打っている。


 あの鏡だけが特殊、つまりあの鏡の先に何かがある!


 急いで鏡前に行くと、鏡に向かって腕を突っ込む。

 それから鏡の先にあるかもしれない物を得るため、突っ込んでいる腕を闇雲に動かし掴もうとするが何も感触はない。


 くそっ、頭を突っ込んで中を確認するしかないのか!?

 そこで金切り声がすぐ近くで鳴り、廊下に盲目ナースの影が見えていた。

 もうそこまで来ている!

 そしてついに通路を小走りで移動してくる奴の片脚が見えた!


 行かないとここで殺される!

 決死の思いで、手洗い場に片脚を上げ、両手で鏡の(ふち)を内側から掴むと、一気に飛び込む!


 そして転がり込む形で降り立った先は、トイレであった。

 もしかしたら飛び込む所を見られたかも知れない。鼓動がバクバク鳴る中、いっときの間波紋が出来ている鏡を注視する。それから十秒程待ったが、鏡から奴が現れるような事は無かった。


 やった、やったけどここは——


 先ほどいたトイレとは全くの別物。

 まず空間と言うか、空気そのものが赤色のライトに照らされているように赤かった。

 また床や壁は所々亀裂が走るほど痛んでおり、その痛んでいる箇所が赤黒く染まっている。


 隠しエリア、十中八九この先に次のステージに関するアイテムがあるはず!

 ただこの空間には、必ず良くない奴も潜んでいる事が容易に想像出来る。しかしただこの場に佇んでいると、もしかしたらあいつが俺を追ってこちら側に来てしまうかも知れない。


 挟み撃ちになる前にこっちを調べて、せめて安全な場所だけでも見つけとかないと!

 まずはトイレの外を窺う。

 すると長細い通路が奥へと伸びており、突き当たりに一枚の鉄扉が見えた。そしてその扉の先から時折聞こえてくる、ガシャンガシャンと言う金属音。


 何かがいる。

 ……行くしかないのか。

 後方を気にしながらも、足音を立てないようそろりそろりと進んでいく。そして鉄扉前まで来た。聞き耳を立てると、やはり鉄扉の先から音が聞こえて来ている。意を決して、しかし極力音を立てないように扉を開く。


 そこは真っ暗闇であった。通路の赤いライトも室内の入り口付近しか照らしてくれない。

 暗闇の中を進んで行くのはリスクが高すぎる。そして鳴り止まない金属音がさらに大きく鳴る。

 そこでゲイリーのステージのクリア報酬が百円ライターであることを思い出す。ポケットを弄りライターを取り出す。そしてシュボッと言う音を立て、揺らめく明かりが闇で支配される空間に灯った。

 と同時に音がする方へと明かりを向け、声を失う。奥へと続く長細い部屋の左側一面に鉄格子があり、その中に三人のナースが閉じ込められていたのだ。そしてその三人が三人、顔面が真っ青で恨めしそうな表情を張り付けている。そして手には各々鋭利なハサミが握られていた。


 あれ? おかしい。何故このナース達は今動かないんだ? さっきまであんなに激しく音を立てていたのに。

 いや、もしかして!

 ライターの光を向けている間は、まるで人形のように動きを止めているのではないのか?

 試しにライターの火を消してみる。するとまた鉄格子を揺さぶる程の金属音が聞こえ始める。そしてライターを再度点火してみると、音がやみピタリと動きを止めた。

 やはりそうだ! このナース、光を浴びると止まるんだ。


 取り敢えずライターがあるうちは安全が確保された。よし、次のステージのキーアイテムを探すぞ!

 そうして部屋の奥へと進むと、壁に引っ掛けられた文字通り鍵があった。しかし簡単に鍵が見つかった事により、ある考えが浮かぶ。この鍵を手に入れたら、鉄格子が開いてナース達が飛び出して来るのではないのか。

 しかし間近でガシャンガシャン音を立てられるのは心臓に悪いな。再度背後のナース達にライターを向ける。


 くそっ、ライターで照らさないといけない為、見たくもない気味が悪いナース達を見ないといけない。

 ……ここまで来たら腹を括るしかない。鍵を手にしたら、猛ダッシュするぞ!

 そして鍵を手にすると——


 頭にノイズが走り、視界が切り替わる。

 暗闇で蠢くナースたちが扉に殺到しその圧により錠前が破壊、ガシャンと音を立てて檻の外へ飛び出して来た。そこで自動で動く俺の身体。そして握り締めたライターの明かりで三人の動きを止めた所で、スッと身体の主導権が戻ってきた。


 つまりこれからライターの火を消さないようにして、このナースの密集地帯を抜けないといけないわけか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ