3話
私は〇〇 〇〇。十八歳二年前から不登校になり引きこもっている。
引きこもりの理由は顔にある大きな火傷跡。
家は裕福でお母さんは居ないけど暖かい家族関係を結んでいたと思っていた。
でも実際は違った。
家事は忙しいお父さんの代わりに家政婦さんが代わりにしてくれていた。
問題が起こった当日。
放課後友達と遊んで帰ってきた私は少し遅い時間に帰宅した。
いつもなら家政婦さんが出迎えてくれるのだけれど今日は出迎えがなかった。手洗いついでに首を傾け軽く探してみると家政婦さんはキッチンで揚げ物をしていた。
食材を揚げる音で気が付かなかったのだろう。
家政婦さんの背後からいつものように声をかける。
「ただいま」
いつもなら笑顔で「おかえりなさい」と言ってくれるけれどその日は反応が違った。
きゃ!っと悲鳴が上がり私の声に驚きいて揚げ物鍋を倒してしまったのだ。
最悪の事に頬から腕にまでかかり大火傷。
急いで救急車に乗り治療してもらったのだけれど先生から言われたの多少は綺麗になるだろうが完全には傷は無くならないそうだ。
家政婦さんには何度も泣いて謝られた。
正直結構痛かったけど家政婦さんは悪くない。タイミングが良くなかっただけだと恨んでないからと謝る度何度も伝えた。
そのおかげで目を合わせる度に辛そうな顔をする事はなくなった。
しばらくはお家で治療。学校休めてラッキー!いつかはパパのお金で皮膚治療しに海外に整形しに行けば良いか、それまでは化粧でごまかせばと気楽に考えていた。
現実はそう甘くはなかった。
回復過程だからと自分に言い聞かせていたが思っていた以上に火傷跡が黒く、肌がでこぼことただれて化粧ではどうにもならず復学するまでに見れるような状態に戻る事はなかった。
今まで楽観的に生きてた代償なのかと軽く人生を呪うこともしばしばあった。
でも友達も気にしないだろうし、いずれは治るから大丈夫!美容整形もあるしと深く考えなかった。いや考えないようにした。
復学当日
「久しぶり!」
ガラガラと教室の扉を開けるとクラス中が静かになった。
そして数秒遅れて戸惑う声で久しぶりと返事が来る。そこでようやく自分が思っていたより重症では無いにしろ酷い状態だと知った。
「全然気にしてない!パパにお願いして治してもらうし!」
元気なふりをして友達の話に混ざろうとしても可哀想なものを見る目はなかなか堪えた。
そしてクラスのどこからか「ざまぁ」と聞こえた。犯人はすぐに分かった私が彼氏奪ったとデマを流していた女の子だった。
いつもだったら無視決め込むのだが友達の対応もあつて今日は結構キツかった。
「ちょっとお薬塗ってくるね!」
適当に言い訳をしてトイレに行き勝手にポロポロと流れ出る涙を拭って目を洗い教室に戻るためトイレから出ようとした時。
「ねぇみたあの顔!ヤバくない!?」
「マジでそれ」
「男子もあれは無理だって」
トイレの外から私を非難する声をが聞こえてきた。私の事だったかは分からない。だけど今の私にはそうとしか取れず、大きすぎるダメージに1度止まった涙が止まらなかった。
そこからの記憶はあまりない。靴を履き替える事を忘れてスリッパで帰路を走りいつの間にか家に到着し自分の部屋にこもってしまっていた。
布団に潜り込み止まらない涙を流しぐちゃぐちゃの顔を枕に押し付ける。
わかっていた。今の顔の状態が酷く見せられるものじゃない事を分かってる。
でも分からないように気にしない用に元気いっぱいに装っていたけどダメだった。
女の子にはキツいよ。
全力で泣いて泣いて泣いていつの間にか深夜になっていた。疲れて寝てしまっていたようだ。まるで子供みたい。
喉が渇いて部屋を出ると扉の前にはご飯が置いてあった。
心の中で家政婦さんありがとうと感謝し部屋にご飯を置き階段をおりて冷蔵庫へ向かう。
すると事情を聞いてるでろうお父さんの声が暗い部屋から聞こえてきた。
「あれはもうダメだ。せっかく母親譲りのいい顔だったのだが・・・」
後半なんと言ってるのか全く分からなかった。ゆっくりと音を立てないように部屋に戻りまた布団をかぶり止まらない涙を拭い続ける。
ここでやっと知った私は一人なのだと。
あの日から二年私は引きこもり続けている。
「少し空気が重いな。換気しよ」
外からの視線が気になる引きこもりなので日光も浴びないよう日頃カーテンを締切っているがたまには換気をしたくなる時もある。
久々にカーテンとベランダに続くドアを開けると少し大きな椅子の上に黒猫ちゃんが丸くなり日向ぼっこをしていた。
「あれ!?猫ちゃんだ!あなた可愛いね!」
たまたまベランダに来た黒猫ちゃん。この子が人生を変えるとは思いもしなかった。