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2話

 私の朝は早い。

 目覚めてまず塀をのぼり家の屋根に登り全身に太陽の光を浴びる。そして町を見下ろし問題が起こっていないか一日かけて安全確認という名のお散歩をする。


 「今日はちょっと遠くまで行こうかな」


 短い四本の足をトコトコとできる限り大きく広げてゆっくり歩き暖かく調度良い風が長い毛を揺らし流れていく。

 気持ちよく風を感じ会社へ出社していく人々とは逆方向へ進む。その姿を見るものは誰一人としていない。皆私が存在していることには気付かない。

 

 私は幽霊の一種だ。誰一人として黒猫と認知出来るものはいない。

 たまに霊感を持つ人間に見つかることがあるがごくまれで見つかっても普通の猫を見た時のようにスルーされる。

 なので無意識に触れられ不幸を撒き散らし大量殺人を引き起こす事は無い。

 それに自分でも気配には気にしており触れられる前に逃げれるようにしている。


 「お!?金持ちそうな家見つけた!」


 今日はいつもより遠くまで散歩しているので今までで見たことの無い広い庭を持つ一軒家を見つけることが出来た。

 二階のベランダには人間が日光浴などする時に使うような野外用の大きめの椅子を発見した。


 「今日のお昼寝はあそこにしよう!」


 屋根を伝って目的の椅子まで向かいぴょんと乗るとしっかりとした安定感があり日が当たり日向ぼっこには最適な場所を確保することが出来た。


 「しばらくはここでもいいかも」


 気持ちよくお昼寝をしてつい声が出ちゃうほど大きな欠伸あくび蹴伸けのびをしする。

 完全に我が領土と言わんばかりにリラックスをし一日があっという間に過ぎ、また一日が過ぎ数日が経った。


 この場所は最高だ。人の気配はするがカーテンが空く素振りを見せず完全にリラックスできる。

 そう思って完全に油断していた。


 今まで開く素振りを見せなかったカーテンが全開になり、ドアが開き中から女の子が出てきたのだ。


 「あれ!?猫ちゃんだ!あなた可愛いね!」


 一般人には見えるはずのない私としっかり目が会う彼女。その頬には青春真っ最中の年齢には厳しい火傷跡が広がっており、そこ以外は整った容姿をしている。

 黒く綺麗に整えられた長い髪の毛。ほんのり丸顔で同棲の私でも見とれてしまう程だ。それだけに火傷の跡が痛い。


 ぼーっと顔を見ていると彼女は手を伸ばし私の頭に触れようとしてきた。

 咄嗟とっさに手から離れるため椅子から飛び降り、ベランダの端まで行き毛を逆立てシャー!と威嚇いかくをして触れるなと意志を伝える。


 「そんなに怒らなくても」


 のほほんと何も状況を知らない彼女は気を落とし悲しそうな顔をした。

 少し可哀想に見え申し訳なく思えたので威嚇いかくするのをやめてその場で座り一鳴きした。

 すると彼女は嬉しそうな顔をし、今度は私から来るように手を目線の高さに合わせて小さくパチパチと拍手をし呼び寄せてきた。

 もちろん危ないので無視をして近寄らずに顔を見続け、近寄る様子がない事を確認し毛ずくろいをはじめる。


 「はぁー落ち着く」


 しばらく毛ずくろいをし気を落ち着かせて寝転がり全身を地面に擦り付けた。

 彼女を見るとまた嬉しそうな顔をして今度はただ見つめるだけだった。

 しばらく見つめ合い彼女は満足したのか室内に戻った。けれどカーテンは閉めずに開いたま間にしてある。

 部屋を見るとスマホを触ってベットに寝っ転がりながら時々扉越し私を見ていた。

 これなら安全だと思い、また私は椅子の上に乗り丸くなり日向ぼっこに戻って数時間が過ぎた。


 うたた寝をしているといつの間にか彼女がベットから降り扉のガラスの前で手をつけてこちらを凝視ぎょうししてきていた。

 さすがにずっと見られているとなんとも言えない空気を感じ、こちらも目を合わせてやる。

 だが求めていた行動とは違うのかまだ凝視ぎょうししてきていた。

 このまま見られていても良いのだが居心地が悪いので仕方なくサービスしてやることにした。

 扉越しに手を合わせてやると彼女的に正解だったのか嬉しそうに笑いスマホで何枚も写真を撮っていた。それから満足するまでサービスしてやった。

 しばらくはここを使わせてもらうのだろうしこれくらいはしてやっても悪くないだろう。

 この日から毎日顔を合わせる事が日課になった。



 


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