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プロローグ

 

 この世界で1番美しい花はなんでしょう?


 ララは毎日幸せ過ぎたから、当たり前に綺麗な花には興味を無くしてしまいました。毎日毎日平和に過ごすうちに、脳みそがとろけてしまったみたいです。

 ある時、溶けた脳みそが見つけた格別に美しい花たちが、ララの濁った網膜に張り付いて離れませんでした。全ての始まりは、この時、普通だったはずのララが狂ったことが原因のようなのです。

 だけど、壊れた今となっては幸せしか感じません。


「あ!はっちんが来る時間です!」


 学校の屋上にある、ララの為に作られた美しい温室。

 そこに閉じ込められたララは、毎日毎日美しい花や木に水やりをし、肥料を与え、細やかに剪定などをしていきます。温室なので、空調管理も欠かせません。

 温度は、常に十度に合わせておかなければならないのです。

 ここにある植物たちは、少々特殊ですから。

 この温室に時計はありません。置いていても、すぐに狂ってしまうからです。

 ですが、ララの頭は正確な時刻が分かりますから、全く問題ありません。これが唯一の自慢です。

 いつも着ている上下真っ赤なジャージは、園芸部のユニフォームです。今からくるもう一人の部員にも支給したのですが、一度も袖を通してもらえていません。汚れますよ、って言ってもいつも制服でくるのです。園芸部部長としては不満しかありませんが、言うことを聞かない副部長にはいつも助けられているので目溢ししています。


「はっちん、はっちん、はっち〜ん♪」


 包帯にグルグル巻かれた右手からジョウロを手放し、手首に湿布を貼られた左手で外気温と室内の気温を確認すると空調管理ボタンを鼻歌混じりに弄りました。

 温室から出て屋上の扉の鍵を開け、そのまま温室の隣に建てられている園芸部の部室へ入ります。

 そうして、心の中でカウントダウンを始めます。

 10、9、8、7、6、5、4、3、2、1…

 ガチャッと外でドアノブが回る音が聞こえました。今日も私の体内時計は完璧です。

 そしてすぐに、私のいる夏休みの部室に、坊主頭の大柄な少年が機嫌よく入ってきました。


「おはよ、生きてるな」


 そう手慣れた様子で部室に入ってきたはっちんに、何時もみたいに抱き着きました。


「昨日ぶりです、はっちん!」


「お、前何時も言ってんじゃん!いきなり飛び付くなって!毎回受け止めんの大変なんだからな!?」


「はっちんは、大きいから大丈夫です!あとくそ暑いので、アイス食べたかったです!」


「早く言えよ、手ぶらできたわ」


 大きなため息を吐くはっちんをそのまま抱きしめて、カッターシャツにほお擦りしながら昨日ぶりのはっちんの匂いを堪能します。匂いも好きですが、はっちんの蜂蜜のような髪の色も綺麗で好きです。だけど、一番綺麗だと思うものは、真っ赤な薔薇のような赤色です(ちなみに、ジャージの色です)

 いつまでも離れないララに痺れを切らしたはっちんから、無理やり引き剥がされてしまいました。ここまでは、いつものことなので特に気にしません。

 部室にある一卓の白いテーブルに、備え付けてある小さな冷蔵庫から冷えた缶ジュースを二本並べました。

一本はサイダー、一本はオレンジジュース。オレンジジュースを手に取ったはっちんが、サイダーのプルタブを引こうとしたララの右手を優しく掴んで、代わりに開けてくれました。


「まだ痛いか?」


 問われた意味が分からず、笑ってしまいました。

 ケラケラ笑って、私専用のふかふかのシングルソファーに深く腰掛けます。


「もっと、痛い人を知ってます!」


「……そうだったな」


 はっちんも、困ったように笑いました。


「西條寺さんに、御礼を言いたいです!」


「やめとけ……ややこしくなる」


 壊させてくれて、壊してくれて、ありがとう。

 前に、そうお礼を言うことは罪深いのだと、はっちんが泣いて教えてくれました。


「……会いたいなぁ」


 そううっそりと笑ったララに、はっちんはまた悲しそうに顔を歪めました。

 そうして無理矢理この空気を終わらせるように、少し大きな声で話出しました。


「夏休みの宿題は終わってるわけだが、今日は何するんだ?」


「今日はですねぇ、青い向日葵を探しにいきましょう!」


「………それは、普通の向日葵だよな?」


 ララとはっちんの、二人だけの園芸部。

 私たちが育てているお花たちは、少しだけ変わっています。だから、仲間に入れてあげるお花もたまに変わったものだったりするのです。


「はっちん、セーラー服を着たのっぺらぼうの噂を知っていますか?」


「……知らん」


「はっちんは、本当に嘘が下手です」


「うっせぇ!で、その噂と向日葵がなんか関係あんのかよ?」


「あるんですよ!そののっぺらぼうさん、いつも四本の青い向日葵を抱えて歩いているそうなんですよ。ぜひ、それを譲っていただきたいわけです!」


「いらんいらんいらんいらん」


「まぁ、そう言わずに」


「切り花じゃねーか」


「生けてれば、いつものように種が取れるはずです」


「まじ、いらねぇ…」


 さて、部活動開始です!

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