第四話 VS灼熱
なぜ投稿が遅れたかというと、投稿をさぼっていたからです
「あんたは魔術で足止め!…あたしが顔面をブッ叩く!!」
ソラが全力で叫び、全力で踏み込みドラゴンの真ん前に飛び込んでいく。その瞬間俺は、数百の魔術の中からどれを使うべきか考えていた。一瞬で、最適解の物を作り出す…相手はとてつもない熱波を放ちつづけている化け物だ、水系譜は一瞬で蒸発して無駄になる。そして今ソラはまだ走っている最中…あいつなら多少的がずれても対応するだろ!!
「崩落岩破!!」
以前使ったら敷地内にクレーターができ、頭にメイドパンチを喰らった土系統魔法であるこの魔法は地面を抉り落とし穴を作り出す魔法だ。今回は右前足だけに落とし穴を作り出した。つまり…前にすっころぶよなあ?狙いどうりソラがいる方向にちょうどよく倒れてくれた訳だ。あとは頭殴りまくってGAMECLEARってわけよ!!
「衝撃に備えとけよ!!後輩!!」
そんな大声をあげながらソラは反雷拳を放つ。少量の雷系譜魔術を拳の中で反発させつづけることによって極限までエネルギーを高めそのあふれ出たエネルギーを拳に乗せながら相手にぶつける技で、高い耐久力がないと自らが瀕死になるようなハイリスクハイリターンな技だ。
ソラの拳が命中した瞬間目の前で雷が落ちたかのような轟音と振動が周囲に鳴り響く。
それを何発も何発も執拗に頭部に張り付きながら、吐血しながらも殴りつづける。
そしてその無慈悲とも呼べる連撃が終わった後に、目の前の物を見上げながら二人で…
「ねえ…あのさ…」
「なんですか?これ以上クソみたいな事実を突きつけないでください…」
「あーー、いや…あたし魔力もう尽きたし…あれ奥義みたいなもんだし…」
結論から言うと…まあ倒せなかった。魔術の元となる物質である魔力、それを吸収し攻撃を半減させるとか言う強すぎるパッシブ能力である『魔力吸収』…そのうえ単純に馬力ですら負けてる。
なにより情報が少ないというのが強すぎる。とにかく、このままじゃここで異世界ライフは終わりだ。このままじゃ…
「…後ろにいてください」
少し力を入れて一歩前に出る
「え?あんたは逃げれるでしょ?早く逃げて、ギルドに伝えてさ、災害級のやつを足止めしたやつがいるぞ~って語り継いでよ」
深く深呼吸する。頬を掌でたたいて目を覚ます。
「あんた、なんていうか…覚悟決めたみたいだけどさ、行くなら一つだけ聞いていい?…一つ、勝てそう?」
「余裕ですから、いい子で待っててくださいね」
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俺は少し力を込めながら体の中の魔力を開放する。魔力を出すっていうのは、例えると体の中の『栓』を開けるイメージだ。普段は圧縮して抑えている魔術がパンパンに入ったボトルを勢い良く開けることで、一気に膨大な魔力を術式を介してフルで魔術を打つことができる!!
まずは速度が大事だ。あの水晶基準で考えると俺は身体能力がものすごく低いらしいし、下手すると一発食らってお陀仏…なんてこともあり得るしな。
「『飛翔』+『俊敏』」
高速化した術式を使った0.1秒程度の爆速詠唱…
それを使って相手の背後まで回り込み、もう一度『崩落岩破』を使う。
先ほどのソラの攻撃は数秒つづいていた。その間相手は反撃はせず『魔力吸収』のみで防いでいた。
『魔力吸収』をどうするかはさておき、落とし穴を抜け出し反撃するほどの速度はないということだ。
「どうすればいいかわからないが…とりあえず『豪破水球』×『紫電雷球』!」
帯電した水が全身にいきわたって感電死…なんてものを狙ってみたが、近づいただけで蒸発して霧散しやがったぞ?『魔力吸収』以前にあの高熱をどうにかしないと無理ゲーだぞ。
なんていうことを考えていると、広範囲の爆炎が飛んでくる。威力で言えば上級魔術くらいの威力だし魔力結界で余裕で防げる…が落とし穴を抜け出す前にあいつへの有効打を見出さなければ、また一から隙を作り出さなければいけなくなる。
「まずあの高熱は何処から放出しているんだ?どんな生物でも体内に熱がこもりすぎたら運動能力が下がるはずだし…」
それならばどこかしらに排熱孔があるはずなんだが、上から見た感じそれっぽいものは存在しないしな…
こういう時は『鑑定』を使って体内の熱の移動経路を探ればいいんだが…
「まあ…そしたら炎撃ってくるよね…」
鑑定魔法にはものすっごい弱点があり、それが「相手に気づかれる」ことだ。
体の違和感や魔力の流れにより相手がこうやって反撃してくることが多い。
そして当然、熱源を見ているのに口から炎なんて撃たれてしまったら炎が熱源として優先して鑑定されてしまい体内の熱源が見れない。
「けど炎は口からしか出せないんだろ!?喉にちらっと見えたぞお前の『火炎袋』!!」
相手は術式を介して炎を撃っているのではなく、体内の器官を介しているわけだ。
ならそこさえ潰せばあいつは炎の攻撃ができなくなるし、俺も鑑定魔法で排熱孔の位置をしっかり確認することができる。そして魔術による攻撃が意味をなさないなら物理で喉をブッ刺せばいいだけだ。そこら辺の岩を魔術でぽんっと槍状にして耐熱魔術を施した特性武器を『俊敏』で飛ばす。
どうやら槍は見事に命中したようで、喉を刺された相手は一層強い殺意をこちらにに向けてくる。
「『鑑定』で見た感じ尻尾の先から排熱してるのか…」
本来の想定だと排熱孔だけを結界で塞げばOK!!なんて思っていたが、熱が魔力と同じく結界をすり抜けるタイプの物だとただ丸っこい物を尻尾につけただけになってしまう......
だが想定以上に物理攻撃が効いた。ならばさっき作った槍をもう一本排熱孔にも挿せばいいだけ...そして槍はもう"コピー"してある。『分析』と『複製』の魔術を組み合わせて使うと、物体を増やしまくることができる超便利コンビだ。この2つの魔術の開発によって軍事兵器の量産は魔術で行えばいいため、兵器に大量の機能と以前の数倍の金額を掛けることが可能になった……魔術史を語ると数話が埋まりそうなのでやめておこうか。
「足!首!胸!視線で狙いが!!バレバレなんだよ!!」
"コピー"した槍を手に握りながら尻尾と全速力で追いかけっこする。というかこいつ羽を剣みたいな形にできるのかよ!?喉に刺された槍のパクリか?待ってろ今尾っぽの穴にもう一本刺してやるから!!
相手が尻尾を振り回すのをやめた一瞬で『俊敏』の重ね掛けで急加速させ、尻尾を通り過ぎる一歩前の瞬間に腕を伸ばし手に持った槍を全力で刺す!!
「特大専用の縫い針だ……有難く受け取っとけ」
後は『魔力吸収』だけだが…これだけ攻撃すれば怒り心頭だろ。
たいていの生物は魔術による攻撃が使える…が魔力がなくなってしまえば体力が大幅に減少してしまうため「全ての攻撃手段を封じる」事と「判断力を低下させる」事でようやく魔術を引き出せる。
火炎袋は潰したし物理攻撃は当たらないと悟っただろう。さあ!どんな魔術が飛んでくる!?
『獄炎球』
ー炎系譜魔術の最上級かつ全魔術の中でもトップクラスの瞬間火力を誇る攻撃系魔術の代表格…
「そんなもんを……ドラゴンがポンポン撃って言い訳ねえだろうが!!!」
状況は最悪だった。
一番あり得ないと思っていた…いや願っていた最上級魔術。だが、最上級魔術の一番の弱点は圧倒的な魔力消費量…アホほど燃費の悪い最上級は大魔術師と呼ばれるほどの存在でも数発が限界の魔術なため、あんまりポンポン撃ちまくるとすぐ魔力切れを起こす。それまで結界を張って耐えればいいだけだ。
15分程度経過した
『獄炎球』の火力を見誤りすぎた…
この15分の間に3回くらい腕が消し飛んだ…一回目でもうガン逃げしたかったが、歯を食いしばりながら回復魔法で体を再生しながら気合で耐久する羽目になったぞ!!
だが耐え忍んだ地獄分の価値はあったようで、『獄炎球』の炎がプスプスと黒い煙を上げながら消え去っている…『魔力吸収』の術式も体表から消え去り、魔術の攻撃が通るようになった。
そして相手が持ってる最後の盾…それは単純に超硬度の鱗だ。最上級魔術でさえもはじいてしまう最後かつ最強の防御性能…喉元や排熱孔には鱗はなかったが背中や腕にはびっしり生えている。
だが、それに関しては簡単な話だった。"火力"ではなく"殺傷能力"という面で天下を取った貫通魔術…
対物理に関しては最強だ。
「『鋭牙』」
コインをはじく時のような動作とともに放たれたそれは、心臓を一突き…巨大なドラゴンをついに地面に「伏せ」させることに成功した。
勝利の達成感と疲労感を骨の髄まで感じながら、『飛翔』で飛び上がっていた10メートルほどの空中から落下した。