第二話 魔術を学びます
「うっま!」
広間で朝食を食べ、思わずそんな声が出た。
朝ごはんと言えば目玉焼きご飯とお茶づけ以外のレパートリーがなかったが、目の前に出てきた一口大にカットされたステーキはとろけるほどの口当たりとあふれ出る肉汁で声が出るほどおいしかったのだ。
こんなにおいしいものを毎日食べられるだけで、転生した甲斐があるというものだ。
「喜んでいただいてなによりです。」
隣にいるアイシャがそんなことを言ってくる。それに、この料理はアイシャが作ったようだ。
ほんっと完璧メイドすぎるな。
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俺は朝食を食べ終わり、自室に戻る。ようやく冷静になっていたので、今後にやるべきことを整理しておこう。
まずは、この世界についての知識をつけること。このまま何の知識もつけずに外に出ても、社会を知らないままマナーも仕組みも何も知らずに問題を起こし、最悪の場合には家の株を落としかねない。
そのためには、大量の書物が必要だ。書庫の位置に関してはアイシャに聞きに行こう。
「ということですので、わたくしアイシャここにおります。」
「ふぇっ!…声に出てた?」
「はい。そこそこの声量で。」
俺の独り言言いがちな癖は、前世からある悪い癖の一つだ。直さないと…
俺たちは少し気まずくなりながらも、書庫に案内してもらった…のだが、そこは書庫というよりかは大図書館というべきところで、天井まで続く本棚が体育館ほどの大きさの部屋にびっしりと並んでいる。
「これ…もしかして全部…」
「はい。ここにある社会,歴史,魔術,などのほとんどの書物をご自由に観覧できます。」
この場所に異世界のほとんどがある。
そんな現実に思わず胸をおどらせつつも、この世界での冒険が始まった気がした。
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俺は書物を読み漁り、この世界に対するある程度の知識がついた。
この世界は一般的なファンタジー世界のように魔物や魔術が存在していて、人間と魔物は対立している。人間側は複数の国家とその国に所属する王が存在しその国を統治していて、魔物側は魔王という一人の王が統治している。というものだ。
そして、武術や魔術を身に着けたものは冒険者となり一部の人間は大金と名声をを手にするらしい。
しかし、日々魔物と戦い命を懸けて戦う。いうならば命を賭けたギャンブルのようなもの。
冷静に考えて貴族という金銭面で困らない立場では…
「目指すべきじゃない…よなぁ」
だけど、このままいけば立場が変わっただけで前世と同じ生活になる。それに、この心躍る感覚を捨てて生きていくべきだとは思えない。確か国は国王が統治していて、貴族に大きな仕事はないんだろ?
それなら…目指してみるか。
魔術の頂と言うやつを…冒険者をーーー
~~~書庫に籠り中~~~
そして、10年がたった。
"私"は15歳になり、ようやく外に出る準備が整ったというものだ。
魔術の練習をしていた途中気づいたことだが、私の魔術の才能は規格外なもので、平均的な魔力量を大幅に上回っているらしい。その代わりなのか私は体力が無く、少し走るだけで息が切れる…がまあそんなことはどうでもいい。とにかく、私は魔術を習得した。だけれど、まだ足りない。この世に存在する新しい魔術や武術を知り尽くすため、極めるため。魔術の深淵とはどんなものなのか…楽しみだ…。
そんなことを考えているときアイシャが部屋に入ってくる。
「レイナ様、朝食の準備ができました。」
「ああ、今行くよ。」