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第九話 平和な旅と一匹の猫

門を跨ぎ、今までにない気持ちで見た外の世界はこれからの心配をすべて打ち消してくれる物だった。

伸びをしたりゆっくりと深呼吸したくなるような草原と青空が一面に広がっている。


「ようやく旅が始まったって感じするね~!」


ソラが腕を伸ばしながらそう言う。

さっきまでとは違ってとても明るい表情をしているし緊張もほぐれたんだろう、よかったよかった。


「まずは北の方向に向かう。途中で休憩しながら幹部の発見区域付近を探索することにしようか」


「「「出発!!」」」


そうして俺たちは遥かまで続く草原を歩いて進むのであった。




____10時間程度経っただろうか。

俺たちは大きな池の近くでテントを張り、野宿をすることにした。

既に日は沈み始め、オレンジ色の夕日が池の水に反射している。

ここに来るまでに草原を歩き、森を抜け、道中で魔物の群れに襲われることもあった。

これからもこんな苦難を味わいながら旅をすることになるのか……と委縮する気持ちもありつつ、くだらない話をしながらのんびりと歩くのというのはとてもいいものだった。


「そういえばさ…まだ自己紹介してなかったよわよね?」


食料を準備している際、メンバーの魔術師がそう話しかけてきた。

そういえばソラと勇者以外の2人とは全く話してなかったな。


「私はフィオナで…こっちの男の人がダンよ。よろしくね」


フィオナがニコッと微笑みかけてくる。

こちらもおおかたの自己紹介をして、雑談をしながらテントを張ったり料理の準備をする。

ダンは木を一本切り倒して焚き火の燃料を集めている。強化魔術なしであそこまでの力とは……普段から重そうな盾を持って戦っているし、これくらい朝飯前なのだろうか。


「そ、それと…言いにくいことなんだけれど…」


「……?」


フィオナが気まずそうな顔をしつつ顔を赤らめながら話し始める。

お互い名前を知ったばかりなのにそこまでして話すことなんかあるのか?


「私たち実は付き合ってて……その…隣のテントから音が聞こえてきても気にしないで欲しい……んだけど」


こういう時どう返せばいいのだろうか。

前世で彼女なしだった俺にはわからないんだが…困ったぞ?

あまりにひどすぎる空気感で窒息しそうだ。


「フィオナは寝言がすごいんだよ。気になるなら耳栓でもつけておけばいいさ」


後ろから勇者がナイスフォローを入れてくれた。

押しつぶされそうなほどのクソ重空気がフッと軽くなったぞ!!


「そ、そうなんですよ!!わたし寝言が酷くて……」


フィオナは愛想笑いをしながらそそくさと離れていく。

後ろを向くと、勇者がニヤニヤと笑いながら見下ろしてきていた。

……まあ今回はナイスタイミングだったな。たまにキモくなるのが弱点だけど



少し経つと奥の方からいいにおいが漂ってきた。


「みんな!!できたよ!!」


ソラがそう言いながら料理を持ってくる。

野菜と肉がたくさん入った具沢山シチューや、道中で倒した魔物の肉を使った串焼きだ。


「よくあたしの実家で作ってた特製メニューだ、さあさあ召し上がれ!!」


全員一気に料理を食べ進める。

一日歩きっぱなしでおなかペコペコな状態で食べるご飯は言葉で言い表せないほどおいしいものだ。


「このシチュー濃厚ですっごくおいしいわね」


「肉汁がジューシーでほっくほくだぞこれ!!」


フィオナも勇者も語彙力が吹っ飛んでいる。

そういう俺も食べ進める手が止まらない…最近は徹夜したりでまともなもの食べてなかったからな。


「パクパク…おかわり」


「もっちろん!!まだまだたくさんあるからね!!」


俺が皿を差し出すとソラは自慢げに料理をよそってくる。

それに続いて周りもおかわりし始めた。


「その料理さ、ボクも食べていいかな?」


唐突に…だった。

黒いフードを被った人物が横から、全くの気配無く表れた。

常時魔力探知は発動していたのにそれを"くぐり抜けた"だと?

そんな芸当は魔力操作がほぼ完璧な奴にしかできないはず……


「……誰」


「ボクはここらでフラフラとしていた冒険者だよ。良いにおいがしてたから釣られてここまで……」


まあ、嘘だろうな。

とてつもない不気味さがあるのもそうだが、何よりもその内包された魔力が桁違いだ。

魔術師のフィオナは気づいてるっぽいが……


「私には分かるわよ、あなた魔族でしょ?昔一度見たことがあるんだけれど…その魔力の癖が隠しきれてないわよ」


その一言で全員が臨戦態勢になる。


「……ボクはほんとに演技が下手だにゃあ。やっぱり最初から真正面から潰した方が楽だにゃ」


気だるさと殺意がこもったその声はその場の全員に恐怖を与え、そして奴は魔術の詠唱を始めた。


「ほら、ゆっく~り詠唱してやるからせいぜいあがいてみるにゃ」


「逃げなきゃ…なのに、体が言う事をきかない…一体…何者なのよ」


怯えきったソラの言葉に対して、極めて楽観的にこう告げた。


「ボクは魔王軍幹部のニャクスさまにゃ。あの世でボクの名を語り継いでくれにゃ~」


ニャクスは魔術を放つと、その衝撃で辺りは更地になり、ごおおおん!!と耳をつんざく轟音が広がる。


「んんん~!雑魚に魔術ぶっぱなすのは楽しいにゃ~!さて、残ってれば死体の回収を……」


信じられない光景だろう。

俺たちは死体どころか、無傷で立っているのだから。


「な、何で生きてるにゃ……!?『獄炎砲』を防ぐなんてまず不可能なはず……」


「ああ、色々改良したんだよ俺の結界。それよりも…想像以上に面白いな、ただ術式をコピーするのとはモノが違う……」


だがもう少し見てみたい。

完全に解析するためにはまだデータが必要だし……

ここで遭遇したのも何かの縁だろうしな。


「せっかくだ……遊ぼうか?にゃん吉」


「上等だよ魔術師……その皮ごと貪ってやるにゃ……」

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