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第一話 貴族の体に転生しました

ある朝、俺は目を覚ます。いつもと変わらず、起きて学校に猫背で行くだけの朝…のはずだった。起きて目にしたのは、あちこちに細かく掘られた木の装飾があり、フリルや金属の装飾のついたベッド。大きさで言えば、人が4人ほど余裕を持って寝られそうな程だ。そんなものが置かれているこの部屋は、大きな鏡やこれでもかというほどの装飾で飾られた棚が置いてある。

第一ここはどこなんだ?

昨日の記憶は自室の布団で寝たところまでしか覚えていないし…


「ん?髪の毛が口の中に…」  


口をモゴモゴとさせて口の中にある異物をぺッと吐き出すと、そこにあったのは見慣れない髪の毛だった。

めちゃくちゃ長い上に黒髪でもない、茶髪だとかそういう次元じゃない…赤色?をしている。

一拍置き考えた結果、頭の中に「もしかしたら」の可能性が思い浮かんだ。明らかにおかしいロングヘアにフリルだらけのピンク色パジャマ……


「俺…もしかして…」


一瞬、脳が激しく混乱する。普通に考えてあり得ないだろ、こんな仮設。

それでも確かめないわけにはいかなかった俺は、好奇心に負けておそるおそる鏡の前まで足を運ぶ……


「女になってるじゃん…」


その鏡には、まったくとして身覚えのないワイン色の髪をした女の子が映し出されていた。

これが現実なのかと疑う気持ちがピークに達した俺は、無意識的に頬をつねっていた。


「い゛っ…ったぁ!! 」


想像していた以上の痛みだった…

しかしただ痛いというより、皮膚が薄い?痛みへの耐性が無い?感じがした。

ようやく目が覚めた俺はもう一度鏡に映った姿をまじまじとみる。


「改めてみると…身長的にまだ4~5歳なのか…?」


そういえば胸も……つつましやかな感じというか何というか

というか…だ、この体の記憶が一切ないという事は元々の人格がどこかにあるのか?

第一、現世で死んだ記憶もないうえに何かの拍子に呼び出されたというわけでもない。

俺は一体、どうやってこの世界に来たのだろうか?


「どこかにこの体をよく知ってる人がいれば…」


そう小声でつぶやくと、奥の方からどたどたと走る音が聞こえてくる。


「レイナ様!お呼びになりましたか!?」


ドアを勢い良く開けて飛び出してきたのは、メイド服の…黒髪ショートの…全く知らない女の人だ…

なんとかこの体にある記憶を思い出せないかと頭を捻ってみるが、学生だった頃の記憶しか思い出せない。


「どうか致しましましたか?先ほどから呆気に取られたような顔をして…」


(まずい!考えてるうちに相当時間が経っていた!とりあえず何か返答を…なんて答えればいいんだよ!?)

その結果出た返答が…


「す…すみません…昨夜どうしても寝付けず寝不足でして…わたくし呆けていたようですわ」


(っ…!どうだ!?思いつきのお嬢様言葉だけど…)


「お嬢様……」



「相当疲れていらっしゃるのですね…私は少しの間離れていますので深呼吸を…」


そういって部屋を出ようとする彼女を俺は…


「ちょっ…待て待て待て!!」


と叫びながら引き留める。


「何かお求めのものでも?洗顔用の水とか…」

「違う!とりあえずこっちに来て話を聞いてくれ!!」


その後、いろいろと状況を説明した。中身が全くの別人で別の世界のものであることや、この体に関する記憶が全くないと言うこと。その話を彼女は、意外にも理解しながら聞いていた。


「なるほど…ある程度の説明が必要ですね。ではまず名前から…」

「アイシャ.ララクルス、お嬢様に使えさせていただいているこの城のメイド長でございます。」


整った姿勢でアイシャはそう答える。


「そしてお嬢様の名前は、レイナ.ファー.シャールズ。独立国家リベロスの特級貴族であるシャールズ家の次期党首です。」


部屋の内装的に金持ってそうなところだと思ってはいたが、まさか貴族だったとは。


「じゃあここは…俺が今まで居た世界とは違う"異世界"って事でいいんだよな?」


「ええ、その通りです」


体が現世と全く違うし、やっぱり転生したって線が有力そうだな。

しかし、ここが異世界と言うのなら、未知の脅威やルールの存在する世界なはずだ。だがそんな世界だったとしても、立場に恵まれたこの環境なら何とか生きていけるかもしれない。


「とりあえず、朝食でも食べに行こうかな。」


伸びをしながらそう答える。

これからやる事は、この世界について詳しい情報を仕入れる事と転生した原因…それが神なのか魂なのかは分からないが、とにかく突き止めなければならない。

だけどその前に腹ごしらえだ!!お腹減った!!頭回らん!!


「了解いたしました。では、身支度が完了するまで部屋の外で待っていますね。」


「わかった、なるべく早く済ませるよ。」


そんな受け答えをしながら、金属の装飾が施されたタンスに手をかけたところで


「そういえば…」


アイシャは少し間を置いて、からかうような目線を送ってから


「お嬢様言葉、話さないのですね。」


少し笑いを含んだ声でそう言って来た。


「いやあれは…その…咄嗟に出て来たと言うか」


必死に言い訳をするが、アイシャは口元を隠しながら半笑いでこちらを見つめ続けてくる。

俺の異世界ライフ…初日から心配になって来たぞ?

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