第41話 ♯没データ
前の話を投稿したときは半袖だったのに、この話の時は長袖着てるんですけど、何が起こってる?
とりあえず、やりたい展開に持っていくところが書けないことは明らかになったよ。
どうしよう……。
「それじゃあ次のステージからは僕が敵を操作するから、そのまま進めていってね」
ニムはそれだけ伝えると自分の持ち場に戻ったのか、テレビが元のリザルト画面に戻った。
その後、神子都がストーリーを流し読みできる速度で進めると、すぐに次の戦闘が始まった。
「さあて、どのくらい強くなったんだ?」
「あっ、ちょっと待って! 先駆けはズルい。私も行く」
開始早々に神子都がダッシュで敵の下に駆け寄ると、それを見たチカも負けじと続いて駆け出して行った。
「じゃあ私はこっちに行こうかな」
姫乃も先に出て行った2人とは違う方向に向かっていったので、俺もそれに合わせてみんなとは違う方向に進んだ。
開始地点の近辺にはスライムやゴブリンなどの基本的な雑魚キャラがスポーンしているため、最初はこいつらを倒してレベル上げをしていく。
はずだったのだが……。
「ちょっと、敵強いんだけど!?」
別に、敵のステータスが増加して強くなっているわけではない。
ただ、格段にうまくなっているのだ。
今までの敵ならヒット&アウェイやカウンター嵌めのような、その敵にあった立ち回りをするだけで勝てたのだが、今回は相手がこっちの動きを見て学習をしてくるようになった。
「はぁっ!?、このゴブリンパリィまでしてくるのかよ」
「しかも、統率が取れた動きをとってくるね」
そのせいで、姫乃達もさっきよりは集中してプレイをしているようだった。
個人技のレベルも上がっているのはもちろんだが、敵の連携があまりにも取れすぎている。
まあ、敵を操作しているのはニムだけなので、そうなるのは当たり前なのだが。
特に動きが変わった点としては、相手が数的有利を取るようになったことだ。
いつもなら1体ずつ戦えるのだが、今は1対1の状況を作ると味方が寄って来るまで死ななように立ち回るようになった。
「でも、ステータスはこっちのキャラの方が上だろ?」
「敵が集まる前に殺ればいいんだよ」
確かに単体性能はプレイヤーの方が上なので、サクッと倒してしまえばいいのだが、俺の場合はステータスの差を技術でカバーされてしまう。
その分だけ受けるダメージも増えるので、回復にも時間を割かないといけなくなり、どんどんと周りとのレベル差が開いていく。
「そろそろ遠くの方にも手を出したいんだが、いけるか?」
「ちょっと待ってね。こいつ倒して拠点で回復したら行けるよ」
「命は私と行こっか」
「行くのはいいけど、ごめん俺レベル低いわ」
全力でやってはいるが、他の3人の領域までは流石に届かない。
それでも、いないよりはましな状態にできるように頑張るしかない。
弱くても何かしらは出来るはずだ。
......何が出来るかはわからないけど。
「命、それ避けて!」
「うわっ! やっちゃった」
今2人で戦っているのは、大きなコウモリの敵だ。
こいつは色んな種類の状態異常をばら撒いてくるので、如何に相手の攻撃を避けるのかが大切になる。
しかし、無駄なことを考えていたので操作が疎かになり、自分のキャラが混乱状態になってしまった。
「姫乃助けて」
「気をつけてよね」
必死に助けを求めると、彼女は武器を木の棒に持ち替えてキャラを叩くことで混乱を治してくれた。
その代わりに、キャラのHPが減少し、僅かな時間だけ無敵になった。
「ありがと、助かった」
1人の時に状態異常になるとその時点でやられてしまうので、本当に助かった。
その後は特に俺の活躍もなく、姫乃がほとんどダメージを与えて倒してしまった。
一応、いくつかの攻撃を引き付けることだけはできたとは思うが。
「そろそろ準備できた?」
突然ニムがウィンドウを出して話しかけてきた。
「まだ全然出来てない。見ればわかるだろ」
「ああ、そっちじゃなくて、指があったまったかなって聞きたかったんだよ」
「アップが終わったかってこと? あたしは大丈夫だが」
神子都は視線だけで周りを確認すると、チカと姫乃は問題ない顔をしていた。
俺も問題はなかったので小さく頷くと神子都が話を進める。
「こっちは問題ないぞ」
「オッケー。じゃあボス召喚!」
晴天の草原のど真ん中にポンッと召喚されたのは、明らかに場違いな雰囲気を持った細身な騎士だった。
全身に白を基調とし、金の装飾を施した鎧を纏っており、鎧の中は確認できない。
両手にはレイピアのような細めの刀身の片手剣を携えており、互いの柄頭がシルクのリボンのようなもので繋がれている。
「この子の名前はセクテラ。開発者が遊びで作った没データのキャラだよ」
ニム曰く、セクテラはこのゲームのラスボスの案の1つだったのだが、製作初期の段階で開発者ですら倒せなかったらしくデータだけ残して没になったらしい。
倒せなかったのをいいことに、その後も魔改造を繰り返し、更なる強さを得たのだとか。
クリアをするのが難しく設定されているゲームなので、僕が考える最強の1歩手前ぐらいを目指した結果の産物なのだろう。
「よし、やろうか」
ニムのその言葉に反応して即座に飛び出したのは、いつもの2人。
神子都は片手剣をチカはハンマーを装備したキャラでセクテラの元へ向かっていく。
「早く戦いたかったから、飛び出してきたけど作戦とかある?」
「作戦はやれなかった時に考えればいいだろ。とりあえずはあいつの情報が集められればなんでもいい」
そのまま攻撃が出来る間合いまで近づくと、相手が防ぎにくいように2人でタイミングを合わせて武器を振る。
両サイドから迫る片手剣とハンマーの攻撃に対して、セクテラは両手の剣を縦にして、振りかぶりもせずに受け止める構えをとった。
「っ! そっちはそのまま振ってくれ!」
いち早く違和感を察知した神子都は、剣と剣がぶつかる前に軌道を反らして空いたセクテラの胸に突きを放つように切り替えた。
「嘘!」
チカのハンマーが剣の刃先にぶつかると、ハンマーの頭がみるみるうちに光に分解されていった。
「チィッ」
上手く剣を避けてセクテラに突きを当てた神子都だったが、鎧の表面に薄い光の膜が張られており、それに攻撃を防がれてしまった。
あっさり攻撃を受け止められた2人は、その直後に真っ二つに切られて拠点にリスポーンさせられていた。
「おいおい、あの2人が瞬殺されたぞ」
「それくらいは強くないとね。とりあえず私たちも帰ろっか」
一旦、俺たちはセクテラに切られる前に拠点に戻って作戦を立てることにした。
最初に神子都達が突撃して確認できたことをまとめる。
「剣の刃先に触れたら、私のハンマーが光に分解されたよ」
「あいつの剣には武器破壊の特性が付いてるのは確実だろうな、武器に限定されてない可能性もあるが......。それと、あの鎧についている光の膜がこっちの攻撃を無効化してくるぞ」
「一振りでやられたから、剣には必殺の特性も付いてるかも」
剣と鎧について1つずつくらいは情報が得られたのはいいが、敵の情報を集めるよりも先にやることがあった。
「まだキャラが育ってなさすぎるな」
「装備も弱いしね。そこら辺の準備がさきかな」
操作のアップが終わったところでセクテラが召喚されたので、まだ全然レベルやら装備の状態が整っていない。
このまま何度も対戦しても効率が悪そうなので、とりあえずセクテラには待ってもらって準備を進めることに専念することにした。
「とりあえずレベルは最大まで上げる?」
「とりあえずな」
「普通にそれが大変なんだけど」
「そうなると思って、あらかじめこっちに準備しておいたよ」
ニムがそう言うと、拠点のアイテムボックスを示すように赤い矢印が表示された。
それを開くと中にはこのゲームで得られる全てのアイテムが揃っていた。
「ポーションのところにレベルを上げる奴もあるし、アイテムは減らないからじゃんじゃん使っていいからね。ついでに制限時間も無くしとくから」
まさに、至れり尽くせりである。
けど、このゲームの醍醐味って時間内にどれだけ効率良く育成と討伐をするのかじゃないのか。
そんなことも思ったが、こっちに都合が良いことが起こっているのでそれ以上は踏み込まない。
「姫乃はどうやって戦う?」
4人でレベルを上げる薬をがぶ飲みしている間に、姫乃にも考えを聞く。
「セクテラの攻撃を躱しながら小突いてダメージを入れられるところがないか確認したいかなぁ。だから速さに特化した装備で行く予定」
「俺はあの攻撃は躱せないな、流石に......。防御に特化させて相手の攻撃がどれだけ耐えられるかの確認するか」
他の3人が難しいことに専念できるように、俺は簡単なところの穴埋めをしておこう。
アイテムボックスの中から1番防御力の高い寺の鐘みたいな全身装備を身にまとい、頭にも同じ形の兜を付ける。
そして、ありったけの防御ドーピングもキメて、いざ出陣。
「......おっせぇ」
この装備は防御が高い代わりに機動力が大幅に減少するため、普通のプレイではほぼ使わない。
しかも無駄に大きいので、移動時の見た目はほとんど引きずられている鐘となっている。
その問題の鈍足は追加で速さドーピングをキメると、ある程度はマシになった。
その後、長い時間を掛けてセクテラの元に辿り着いたが、姫乃との戦闘の合間に一撃でやられた。
とりあえず、防御に力を入れなくていいことはわかった。
没データとかデバックルームとかバグとか、普段のプレイで見れないものに憧れを感じますよね。
無駄に強い敵と戦えたり、片方しか手に入らないアイテムを両方手に入れたり、沈んだり壊れたりしていけなくなった場所に行ったりするのを見るのはいつ見てもワクワクしますね。
進行度49%




