第30話 ささやかな元手
祭りが始まるまでのちょっとしたお話です。
今回はネラ側、次回は命側の話を書く予定でいます。
いつもより短めですが、勘弁してください。
祭りが終わってみんなと別れた後、ネラ達はシェール城のあった場所まで戻ってきた。
その城はネラが粉々に破壊してしまったため、その姿はもう見えない。
代わりにそこにあったのは、木製の小さな小屋だった。
「こちらがこれから姫様が過ごす家になります」
「こっ……、これ、ちゃんと機能してる?」
アルヴァが1日かけて建てた小屋は、シルエットこそ小屋の形をしているが、その他の要素は酷いものだった。
まず、壁と屋根の板は平行に固定されておらず、あちらこちらに隙間ができている。
そのせいで、扉を綺麗にはめ込むことが出来ず壁の上に貼り付ける形で取り付けられている。
しかも、壁を手で少し押すと生きているんじゃないかってくらい左右にすごく揺れる。
とは言え、こんなことはアルヴァはやったことがないので仕方がない。
そんな状態からよく1日でここまで作り上げたと褒めてやるべきだろう。
「時間と私の技術の都合上、これが限界です」
「そうよね。よく作ったね」
本当ならネラ自身が作らないといけないところを、代わりにアルヴァがやってくれたので、文句を言える立場ではない。
「ありがたく使わせてもらうけど、アルヴァはどうするの?」
前はネラのいる部屋には入れないと言っていたアルヴァだが、今回はどうするのだろうか。
「私は家の外で大丈夫です」
「そんなのダメだよ。……なら、こうしましょ」
ネラは小屋の中に駆け込み、ここを作る時に使ったであろうペンを手にとって、入り口を中心にして白い線で部屋を左右に区切った。
「こっちが私の部屋、そっちがアルヴァの部屋ってことにすればいいでしょ。明日にでもカーテンとか用意して、もっとちゃんと分けるから」
どうせ、「私が外にいるからアルヴァが使って」と言っても、アルヴァは聞いてくれない。
それなら、2人で部屋を使う方法を探すまでだ。
「これでもダメなら、私も外で過ごします」
テコでも動かなさそうな状態のネラを見て、アルヴァはため息をついてからその要求を呑んだ。
「分かりました。そうしましょう」
ようやく折れてくれたアルヴァに対して、よろしいと言わんばかりに大きく頷いてから小屋に入る。
部屋の中には家具などは一切ないため、薄暗くひっそりとした雰囲気を漂わせている。
ネラはそのまま床に横になり、アルヴァは壁に背を預けるようにして座り込む。
最初はアルヴァに背中を向けていたネラが、寝返りを打ってから呼びかける。
「ねぇ、アルヴァ」
「どうしました?」
艶やかなオレンジ色の髪を顔にかけ、目を瞑ったままネラは話を続ける。
「ふかふかなベッドも綺麗な装飾もない小さな部屋だけどさ、アルヴァといれるから前より幸せ」
「私と一緒にいて幸せですか? 姫様を閉じ込めていた張本人ですよ」
「そこは関係ないの……。私を守るためにやってくれてたってわかってるから」
アルヴァはネラのその言葉を聞いて、俯けていた顔を少し上げた。
自分の役割とはいえ、過剰と言えるほど外部との接触を絶ってネラの事を守ってきた。
ネラが無事であればそれだけでいいと、嫌われることもいとわずにやってきたが、ネラはアルヴァの立場も理解していたのだった。
しかし、ネラも全てを受け入れてくれるわけではない。
もう一度寝返りを打って、そっぽを向く形にしたネラはアルヴァにかろうじて聞こえる声で1つだけぼやいた。
「ただ、もうちょっと構って欲しかったかな」
「それは、無理です」
「なんでよ!」
そっぽを向いて寝ていたネラがガバッと起き上がって、不満そうな顔でアルヴァを睨みつけた。
「その代わり、それは神子都様に手伝ってもらえるように努力しますので」
「まあ、及第点ね」
ネラを助けることができる神子都の存在が、2人の関係を少しずつ良くしていく。
外に出てやりたいことを色々したが、ネラにとってはこれが1番の幸福だった。
神様達の祭りが本番なんですが、だいぶ道草を食っています。
寄り道するのが1番疲れるので、早く祭りのとこまで行って欲しいのですが……。
進行度 2.3%




