第29話 頼りになるのは結局……
いつかは地震の神様を出したいと思ってるんだけど、
またなんか地球様がヤバイ雰囲気を醸し出していらっしゃるんだが?
怖いですね……。
後、暑いです。
「わぁ、人がいっぱいですね」
今日はネラが待ちに待った祭りの日だ。
日はほとんど落ちかかっているが、屋台がずらりと並んでいるおかげでここら一帯は明るい。
そして、そこからは甘い香りだったり、揚げ物や焼いた肉の匂いが漂ってくる。
周囲の人達も浴衣や甚平を着ていたり、大きな髪飾りやネックレスを付けていたりと普段とは雰囲気が違う。
神子都とネラはちゃんと浴衣を身に付けているが、俺は普段着で参加している。
アルヴァに至っては鎧のままである。
「姫様、ここで私達が出来ることはないのではないですか?」
「そうだね、でも雰囲気だけでも味わえばいいんじゃない?」
流石に、神様が遊べるようには設計されていないので、横から眺める事ぐらいしかできない。
せっかく祭りに来たのだから、何か楽しめるようにはしてあげたいが、どうすればいいだろうか。
「あっ! あれは射的ではないですか。あれをやってください命様」
そんなことを考えていると、ネラから射的をやってほしいと頼まれる。
「いいよ、やろうか」
射的屋には3段の階段状の棚があり、下段には小さな駄菓子類、中段には箱系のお菓子、上段には手のひらサイズのぬいぐるみが並べられている。
特に、上段の中央には周りのぬいぐるみより1回り大きい茶色の黄色の色違いのクマが座っていた。
「あのクマは倒しがいありそうですね」
「そもそも動かせるのか? それすら怪しいんだけど」
俺は屋台の人にお金を払って、銃とコルク弾を3個受け取った。
銃に弾を込めてから、脇を締めて柄を頬に当てて構える。
そして、茶色のクマの眉間に狙いを定めて弾を撃ち込む。
運良く狙ったところに当てることはできたが、クマは軽々とコルク弾をはじき飛ばした。
「やっぱり無理じゃないか?」
「なかなか強いクマさんですね」
「威力が足りないなら、上げればいいだろ」
神子都が銃身に優しく手を乗せると、銃が薄い青色のオーラを纏った。
「ほら、そのまま撃ってみろ」
神子都に言われるままに1発目の様に弾をこめてから構え、狙いを定めて撃つ。
銃の威力を上げたため、さっきよりもかなり反動が大きくなっている。
そのせいで目をつぶってしまい、弾道を確認できなかったが、ちゃんとぬいぐるみに当たってくれただろうか。
目を開いて棚の上を確認すると、
「あっ……」
可愛いぬいぐるみのお腹に丸い穴が空いていた。
「いや、やりすぎ!」
「あたしがちゃんと『そのまま撃て』って言ったのに、お前が弾を込めるからだろ」
「そんなのありかよ……」
試しに空砲のまま撃ってみると、ちょうどいい強さで空気が放たれて、ぬいぐるみがコロンと後ろに転がって棚から落ちた。
「これでクマさんゲットですね」
店主が落ちたクマさんを拾って渡してくれたので、ありがたく受け取る。
穴が空いている事については、無理矢理銃の不具合ってことにしておいた。
最後のコルク弾はお菓子の箱に向けて撃ったが、落とせずに終了した。
射的が終わって銃を返却した後、店主がそれをまじまじと観察しているのを遠目に見てしまい、少し笑ってしまった。
「さーて、次は……あっ」
次の屋台を探していると、人混みの中に見覚えのある姿が見えた。
青いハッピに白の半ズボン、足には草履を履いており、ハッピの後ろには白く縁取られた赤い『祭』の文字が刻まれている。
そして、なぜか頭にハッピと同じ柄のプロレスマスクを被り、その上にねじりはちまきをつけている。
人混みの中でも見つけられたのはこの変な見た目のおかげだ。
「ハレハレさん、こんばんは」
「おー、命じゃねぇか。祭り楽しんでるか?」
ハレハレさんは祭りの神様で、祭りに行くといつも会える陽気なおじさんである。
「なんだぁ? 今日は珍しいのを連れてるなぁ」
「この子が祭りに行きたいって言ってたので、連れて来たんですよ」
ネラ達の方を示しながら経緯を話すと、『お前は大変だな』と笑われる。
せめて、『お前は』じゃなくて『お前も』と言って欲しかった。
あんたは暇なのかよ……。
「それで、どうだい、楽しいか祭りは?」
「はい、楽しいです。……けど、やっぱり自分でもやりたいかな、とは少し思います」
少し俯きながらネラは望みを口にする。
せっかくここまで来ることができたのに、見るだけで終わってしまうのは可哀想だ。
その上、目の前の奴が楽しそうに自分のやりたいことをやっていたら、そう思うのも必然だろう。
「ハレハレさんの力で、神様達が楽しめるような祭りを開くことは出来ないの?」
ハレハレさんだってこんな見た目をしているが、れっきとした神様だ。
そのぐらいのことは出来るんじゃないかなと、多少の期待を込めて聞いてみる。
「いや、出来んことはないぞ。出来んことはないんだがな……」
「何が問題なの?」
「神様を集めて騒がせると、どんな被害が出るか分からんからなぁ」
確かに、奴等を1箇所に集めたら何が起きても不思議ではない。
「やるなら被害が出てもいいような、何処か安全な場所を見つけないとな」
「安全な場所か……」
南極だったり、海の真ん中なら大丈夫なのだろうか。
それよりも、もっと被害が出なさそうな場所となると……。
考えを張り巡らせていると、ちょうど使えそうなものを前に貰ったことを思い出した。
「あるかも」
まだ確定したわけではないが、多分できる。
力になれることがあれば、いつでも呼んでくれって言っていたしな。
遠慮なく使わせてもらおう。
「これなんだけど」
「なんですか、それは?」
「なんとかしてくれるかもしれないもの」
俺が財布から取り出したのは1枚の名刺だ。
可愛いフォントの名前が入ったそれに向かって念じると、目の前にポンッとリテラが現れた。
「よっす〜、命君どうしたの今日は?」
「神様達を集めて祭りを開きたいから、そのための異世界を1つ用意してもらいたいんだけど」
「OK、ちょっと待ってね」
なんのためらいもなく、その場で承諾を得ることができた。
リテラはすぐにスマホを取り出して、異世界の神様に電話を掛け始める。
「もしもし〜、いますぐこっちに来てくれる? えっ、今忙しいって? こっちは命君の頼みだよ? うん、そう。分かったら早く来てね」
リテラはそう言って相手の返答が来る前に電話を切った。
「すぐ来るってさー」
「別に忙しいなら、急いで呼ばなくてもいいよ?」
「いやいや、前の事もあるし、しっかりやってもらわないとね」
急いで来てもらうのはこちらとしてはありがたいが、前のような事がまた起こらないかが心配だ。
「すみません、お待たせしました」
異世界の神様は息を切らせながら走ってやってきた。
しかし、そこから一息着かせる暇も与えず、リテラは会議を始める。
「異世界の広さはどのくらいいる?」
「大きめの公園ぐらいの広さで足りると思うぞ」
「だって、分かった? あとはいい感じに作っといてよ」
「……はい」
『いい感じ』という不確定要素が追加された仕事を渡されて、すごく表情が暗くなっているが、全く気にされずに話を進められる。
「用意しといたほうがいい屋台は何かあるか? ネラちゃん」
「そうですね……。射的と金魚すくいとビンゴ大会、花火とかですかね。あとは、定番のものを並べてもらえれば」
「おしっ、じゃあそこらへんを中心に屋台を準備しておくで、楽しみにしといてな!」
ネラは自分のやりたいことが盛り込まれた祭りに参加出来る事に目を輝かせていた。
「神様は一応こっちでも集めておくが、もし誘いたい奴がいたら、遠慮なく誘ってくれよ」
誘うならチカちゃんとリアン、シアトあたりだろうか。
あとは、チコちゃんも呼んでもいいかもしれない。
本当なら姫乃も誘ってあげたいが、今回はちょっと無理だろう。
「決めることは、こんなもんかな?」
「そうだな、色々準備なんかがあるから、開催は1週間後でいいか?」
ここにいる全員その日で問題がなかったため、日程についても1週間後に決まった。
そして、祭りの準備をするハレハレさんとリテラ達と別れようとしたとき、祭りの終わりを彩る花火が打ち上がり始め、皆足を止める。
赤や黄色、オレンジなどの鮮やかな光が、夜空を埋め尽くす。
ネラもその綺麗さに目を奪われて、夢中で眺めていた。
「どうだ、花火は?」
「綺麗です。花が開くまでの間も、花が開いた時の力強さも、すぐに散ってしまう儚さも」
「そうだな。でも、まだ花火に満足するなよ」
これだけ綺麗なものを見たのに、なぜ満足してはいけないのか分からず、ネラは首を傾げた。
「どうしてですか?」
「来週はもっと凄いの見せてやるからよ」
「楽しみです!」
次の約束をしたところで花火が終わり、ハレハレさん達は祭りの準備に向かっていった。
ネラが花火の余韻を堪能していると、
「姫様、私達もそろそろ帰りますよ」
とアルヴァに声を掛けられたので、急いで向かう。
命達に感謝と別れの挨拶を伝えて、アルヴァと共に城があった場所に戻る。
ネラの初めての祭りは、やりたい事は出来なかったものの晴れやかな気分で終えることができ、満足な結果となった。
異世界の神様と転生の神様って名前付けてないことに、小説を書いてる途中で気がつきました。
ついでに、これを書いてる途中で点Pの神様も名前を付けてないことに気づいた。
あいつはなくてもいっか。
進行度 2.2%




