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第23話 1対3

前回でリアンとチカの話は終わる予定だったんですけどね、ケーキのせいで終わりませんでした。

だから、今回こそは終わらせるぞ、って思って書いたんですけど、まだ続くようです。


どうしてこうなった?

「おーい、神子都ー」


 魂の抜けた神子都に呼びかけを行うと、すぐに正気に戻ったが、少ししんなりしていた。


「これのデータ戻せるか?」


「ああ、すぐに戻せる」


 神子都がゲーム機にフーッと息を吹きかけると画面が切り替わり、消える前のセーブデータが表示された。


「これならそんなに落ち込む必要ないんじゃないの?」


「そうなんだが……、なんか自分のデータじゃなくなった感じがして、嫌なんだよな」


「そうなのか」


 消えたデータが復活したら万々歳だと俺は思っていたが、神子都にとってはそうではないらしい。

 あんまり共感出来ないが、感じ方には個人差があるので、特に何も言わないでおく。

 先程と同じく俺のセーブデータを選択し、今度は人数を4人に設定してゲームを始める。

 その間、チカはリアンに操作方法を教えて貰っていた。


「作戦はさっきと同じで、チカは(みこと)の方について行って」


「何もわからないから、大人しく従うわ。頼むよ、(ミコト)くん」


「まあ、多少は任せて」


 頼りきれない返事をすると同時に、カウントが0になってゲームが始まった。

 そして、もちろんボスにあっさりやられた。

 今回は4人でプレイするので、制限時間がかなり短い。

 それに加えて、初プレイのチカと初心者のリアン、頼りない俺がいるので、もう少し練習する必要がある。

 チカはまだこのゲームを理解しきれていないのか、合わないのか、まだあまり乗り気じゃない。


「やっぱりイチゴの方が良かったじゃない」


「このゲームをクリアしてもそう言えたらお前の勝ちでいいぞ」


 確かにクリアするまでやった方がいいだろうけど、どんだけやるつもりだよ。

 4人でやれば短時間で終わるけど、このメンバーだと多分何回も挑まないといけない。

 それに、このゲームをやると脳も目も疲れるので、神子都達はいいのかもしれないが、人の俺にはなかなかキツい。


「まあいいわ、クリアするまでは付き合ってあげる」


 チカの同意も得られたところで、もう1度挑戦する。

 とりあえずは何度もやってコントローラーに慣れたり、神子都の指示通りに動けるように知識を蓄えるしかない。

 負けて、修正してを繰り返すこと5回。

 やっと、ステージをクリアして次に進めるようになった。


「結構ボス強かったけど、もう終盤だったりする?」


「まあここから敵が強くなってくるからな。そして、ここがちょうどストーリーの折り返し地点だな」


 まじか、難し過ぎるだろ。

 すでに全力なのだが、まだストーリーは半分しかいってないらしい。

 俺は足手まといにならないようにだけ注意して、後はリアンとチカの成長に期待しよう。

 その後も材料が集まりにくかったり、制限時間がやけに短かったり、移動するたびダメージを受けたりするなどの様々なステージをクリアしていき、最後のステージまで辿り着いた。

 そこそこ長いことやっているので、日もほぼ沈みかかっている。

 神子都の指導のおかげもあって、上達スピードがみんな早い。

 俺とリアンの成長速度はほぼ同じだが、チカのそれは異常に速く、すでに俺より上手くなっている。

 なんなら、神子都に意見を言うようになり、それが採用されることもあった。


「ここがラスト?」


「そうだ、ここが最後のステージ」


「そう、ラストなのね」

 

 目を伏せたチカは、少し悲しそうな声をしていた。

 リアンの勘違いミスで笑ったり、理不尽な設定や仕様に怒ったり、ストーリーで泣いたり、ボスを倒してみんなで喜んだりと、すでにチカはゲームの楽しさをたくさん感じていた。

 もう、「ゲームごとき」と言う彼女はいないだろう。


「どうした、名残惜しくなったか?」


「そうね、少し……」


「安心しな、長いのはこっからだ」


「困るね、そうじゃないと」


「じゃあ行くか」


 ラストステージは時間も資源の豊富にあるが、雑魚敵も最初から強く、まさに真っ向勝負といったステージである。


「うーわっ、時間めっちゃあるんだけど」


 時間が多いということは、その分ボスも強い奴が出てくるということだ。

 ラスボスだからそれは全然いいんだけど、負けた時に最初からになるのがキツい。


「作戦は今まで通り、あたしとリアンはマップ左側、(ミコト)とチカは右側を探索して。あとは、死なないことだな」


 チームは実力が均等になるように分けられている。

 左側を担当するのは、最強の神子都と俺よりちょっと下の腕前のリアン。

 右側を担当するのは、かなり上手いチカとまあ出来る俺である。

 勝敗を分けるのは、右側の探索がうまく行くかにかかっているだろう。

 作戦を聞いた3人がコクリと頷くと、戦闘が始まった。






「だぁ〜、負けた〜!」


 コントローラーを床に投げ捨て、伸びをしながら後ろに倒れる。

 結果は惨敗だった。

 初見のボスなので行動パターンも分からなかったし、準備も十分に出来ていなかったので、リスポーン祭りだった。

 このステージをクリアするには、最低でもチカぐらいの実力が必要そうだ。


「今の何倍ぐらい頑張らないといけない?」


「ちょうど倍ぐらいか? 装備も全部出来上がってなかったし、それだけじゃ能力値足りないから、追加でバフアイテムがいる」


「神子都の防具を削って、攻撃回避してもらうことは出来ない? そうすれば、こっち3人の装備が整って死ににくくなるんだけど」


「ランダムで1人に回避不可の弾が1発飛んでくるからな。一応、上手くやれば他の人が代わりにダメージを受けたり、受けさせたりすることも可能だが、あたし以外がやろうとしても安定しないから防具を削るのは厳しいな」


 神子都とチカは休憩もせずに、作戦会議を開いていた。

 しかも、しれっと2人とも名前呼びになっている。

 リアンを近くに呼んで、2人に聞かれないように小さい声で話す。


「もうあの言い争いは終わったってことでいいのかな?」


「そうっぽいから、あんまり掘り返さない方がいいかもね」


 バレないように相談していると、


「よし、再戦するぞ」


「なに、そっちも作戦会議してるの?」


 と急に話しかけてきたので、驚いて心臓が跳ね上がった。


「いや、難しいなって話してただけだよ。それで、作戦は決まった?」


「作戦も何も、まずはステージに慣れるところからだな」


 当たり前だが、ステージごとに敵や鉱山などの配置は変わる。

 初見はマップの把握に脳のリソースが割かれるので、操作がもたついてしまう。


「まだ1回目だからね」


「作戦の基本は変わらないからな、そこをしっかりやればなんとかなる」


 作戦をしっかり遂行するためには、最短ルートを通ることと、被弾を最小限に抑えて回復回数を少なくすることが重要になる。

 スピードを落とさずにそれをやろうと思ったら、多分人間を辞める必要がある。

 2戦目、3戦目と戦闘回数が増えていくごとに、ボスの残り体力が少なくなっていったが、あと2割のところから減らせなくなった。

 原因は、俺が毎回1回は大きなミスるからである。

 体力を確認し忘れて敵に突っ込んで死亡。

 今度はギリギリ引いたかと思ったら、帰りに毒沼に1歩足を踏み入れて死亡。

 ボスの回避不可の弾が連続で飛んできて死亡。

 最後のは運だが、大体俺がやらかしている。

 チカは体力管理はしっかりしているし、尚且つ作業も速い。

 リアンは戦闘以外の材料集めや装備、アイテム制作を主に行っているので、ほとんど死なない。

 そして、神子都は言うまでもなく完璧だ。


「ごめん、俺がミスってばっかだ……」


「時間が多いからミスが出るのは仕方ないな」


「そうだよ、リアンだって材料間違えて変なアイテム作ったりしてるんだから。本人は秘密にしてるみたいだけど」


「言ってやるな、バレてないと思ってるんだから」


「神子都はまだわかるとして、なんでチカまで知ってんだよ」


 恥ずかしいの隠すようにリアンの口調が強くなるが、顔が赤くなっているのでバレバレだ。

 みんなのフォローのおかげで、沈んでいた気持ちから復活できた。


「よし、もっかい行くか!」


「まあ待て」


 勢いだけで乗り切ろうとする俺に対して、神子都がストップをかける。


「このまま行っても同じ結果になるだけだ」


「そうだろうね。(ミコト)のミスはそんなに簡単に減らないだろうし、私もカバー出来るほど上手くはなってないからね」


「そこでメンバー分けを変える」


「そこ変えるの!?」


 神子都が両手を顔の前に出し、チームの人数を指で表す。


「右側は(ミコト)、チカ、リアンの3人でやれ」


 神子都の小さな手は、右が3、左が1を示していた。


「左側はあたしがやる」

リアンが出したくて書いてたのに、チカと神子都の話になってしまった。

全然喋らせられないし、派手なプレイもしてないしで置き物状態になってる。

まあ、イチゴ落とした罰やな。

しゃーなし。


進行度0.9%

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