第21話 今いいとこ……
前回の余りが残ってたのと、楽しく書ける部分だったので割と早く完成しました。
本当なら前話から1週間後に出したかったんですけどね。
やっぱりダメなんですね。
さて、リアンを匿うのはいいが、何もせずにそのまま放置するのはなんか違う。
急に来たので何も準備は出来ていないが、せっかく3人いるのだからできる事はあるだろう。
まあ、3人と言っても半分以上は神様なのだが。
困った時はあそこから探すしかないと、ゲームの箱を取り出してゴソゴソと中身を漁る。
「リアン、どうせ時間が経つまでどうしようもないだろうし、一緒にゲームでもやるか?」
「そうだな、ここから動くのも怖いしな。ゲームやってるのがバレたらもっと怖い目に遭うんだろーけど……」
「うん、そうだろうな」
本当ならさっさとケーキを買い直して、チカに渡すのが得策なんだと思うが、今の状態の彼女に会ったらケーキを渡す前に頭が吹き飛ばされるだろう。
リアンもその事を分かっているので、今はこうしてここに隠れているのである。
まあ、そっちのことは自分でなんとかしてくれるだろう。
匿う事ぐらいはしてやるから、後は勝手にしてくれと思いながらゲームを探す。
「えーっと、3人プレイで初心者でも楽しめそうな奴は……」
あーでもないこーでもないと探していると、俺を押しのけて神子都が1本のソフトを引き抜いた。
「ならコレだろ」
もうゲームをやっていることは隠さないと決めたのか、神子都がやけにやる気になっている。
神子都が吹き飛ばされて逆さまになった俺に見せつけてきたのは、「Rapid Life」というゲームだった。
ってか、このゲームもやったことあるんかい。
「あー、それね」
「何そのゲーム?」
もちろん、リアンは初めて見るゲームなので内容は知らない。
こっちに顔を伸ばしてパッケージの説明を読むリアンに、神子都は不敵な笑みを浮かべる。
「まあ、やればわかるよ」
このゲームの内容はシンプルで、決められた時間内でキャラを強化して、最後に出てくるボスを倒そうというものだ。
このゲームの特徴は圧倒的なスピード感である。
鍋を火をかけている間に木材を集め、風呂を沸かしている間に雑魚狩りをしてレベル上げ、パンをかじりながら発掘をするなど、全速力で準備を行う。
このゲームがコンセプトに掲げているのは「1秒も無駄にするな!」で、本当に瞬きの暇も無いくらいにキャラを縦横無尽に走らせ続けないといけない。
早速、カセットをセットして電源を入れ、ゲームが起動する間に操作方法を超ざっくりとリアンに教える。
「なんとなくはわかったから、後は実践だな」
「そうだな、1回やってみないとな」
口頭の説明受けるのも大事だが、やはり実際にやるのが1番良い。
タイトル画面を過ぎるとセーブデータが3つ表示され、上から父さん、俺、そして当たり前のように神子都のデータがある。
もちろん、父さんと神子都のデータはクリア済みとなっているが、俺は最後までクリアしたことは無い。
「これも全クリしてるじゃん」
「当たり前だろ、あたしだからな」
神子都は腕を組みながらドヤ顔をしていたが、反応したら負けだと自分に言い聞かせて、俺のセーブデータを選択して人数を設定する。
人数を増やすとその分効率よく素材集めが出来るが、その代わりに制限時間が短くなる。
初心者のリアンに途中からやらせるのは少し申し訳ないと思うが、難易度が変わるだけで、やることは最初と変わらないから許して欲しい。
最初の方は簡単過ぎて物足りないと感じるだろうから、やらなくても大丈夫だろう。
昔の俺がクリアできなかったステージに入ると、カウントダウンが始まった。
「最初はあたしがマップの左側やるから、命は右側やって」
「おっけい」
「リアンは指示が無い時は自由に行動してて」
「わかった」
「死んでも復活出来るけど、時間のロスになるから死なないように」
大まかに担当する範囲を決めると、カウントが0になりゲームが始まった。
それと同時に神子都と俺は左右に分かれて素材を集める。
「最初にテントのレベルを上げるぞ」
テントとはこのゲームの最も重要なものであり、ゲームの開始点、リスポーン地点、作業場などの要素を兼ね備えている。
そして、ここを破壊されたらゲームオーバーになる。
テントを強化すると見た目が家や砦などに変化し、耐久値の増加や作業時間の減少などの恩恵が得られる。
「こっち側は近くに鉱石が取れる場所が無いけど、そっちはあるか?」
「こっちにはあるよ。でも、敵が多くてすぐには取れないかも」
「わかった。なら、リアンはすぐに命の補助に向かって」
「はいよ」
「木と食料はあたしが集めとくから、2人は最優先で鉱石集めて」
神子都の指示を受けてすぐに、リアンの操作するキャラと合流して敵を倒し始める。
まだ操作がおぼつかないので倍速まではいかないが、敵の減りが目に見えて早くなっているのが分かる。
「倒し終わったら、一旦テントに帰って回復して。あと、ピッケルと料理も作っといたから、持って行って」
3人とも同じキャラを使っているので、性能に差はないはずなのだが、神子都のキャラだけやけに仕事量が多い気がする。
このゲームをクリアしたことがあるだけあって、動きが洗練されているし、指示にも迷いがない。
「鉱石とったらテントのレベル上げといて、あたしは先に強い奴倒してくる」
「装備は大丈夫?」
「武器だけは作った。攻撃は全部回避すればいけるだろ」
なにそれかっこいい、俺も言ってみたいわそのセリフ。
でも正直なところ、神子都にはそれぐらい働いてもらわないと、初心者のリアンのマイナス分を埋められない。
なんなら、俺も久しぶりにプレイするので多少マイナス側である。
「このペースでクリア出来そう?」
「ギリギリだな。少しでもミスったら無理かもしれん」
流石の神子都でもここまでハンデがあると厳しいらしい。
俺も脳を焼き切れんばかりに回転させてやってはいるのだが、練度や知識が足りないので、多少いいプレイが出来るぐらいである。
リアンは1回目の戦闘なので操作はまだまだって感じだけど、楽しそうにやっている。
時間もかなり経過して素材も集まってきたので、ボス戦に備えて準備を始める。
「一旦砦に戻って素材をしまっておいてくれ。そろそろボスが来るからな」
指示に従い、俺とリアンの集めた素材をまとめて砦にしまうと、神子都が装備や薬を作り始めた。
「2人はあたしが準備している間に、少しでもレベルを上げておいて」
「「了解」」
再び外に飛び出して、1匹でも多くのザコ敵を倒す。
ここまできて負けたくないし、再戦する気力も残せそうにないぐらいに1試合で疲れる。
瞬きも忘れるぐらいにゲームに集中して、最速で最短の道を走れるように気をつける。
「装備とか作り終わったから取りに来て。すまんが、リアンの装備だけ少し弱くなってしまったが、いいか?」
「全然問題ないよ、ありがとう」
神子都が作った装備に着替えると、丁度画面に「WARNING」の表示がされてボスが現れた。
滲む手汗を服で拭ってからコントローラーを握り直し、1度フッと短く息を吐いて気合いを入れる。
「行くぞ!」
神子都の合図でボスに向かって走り出した所で、ゲーム画面がブチッと音を立てて消えた。
何が起こったのかとコンセントを確認すると、プラグが抜けて宙にフワフワと浮いていた。
そして、意識がゲームから解放されると、3人の後ろで禍々しい圧を放つ何かがいることに気がつく。
「リアン、こんなところに隠れてたのね!」
恐る恐る振り向くと、ピンクのツインテールにピンクに白のフリルの付いたワンピースを身に付けた般若がそこには立っていた。
拳を固く握りながら、ズシンズシンと音がするような足取りでこちらに近づいてくると、俺の部屋にあるあらゆる物が浮かび上がった。
この子がリアンの彼女で力の神様のチカである。
「私のイチゴ落とした挙句、こんなところでゲームしてるなんていい度胸してるね」
「ごめんってチカ、ちゃんと明日になったらケーキ買い直して持ってく予定だったんだって」
「だからって、ゲームをしてていい理由にはならないんじゃない?」
チカが淡々と急所を突いてくるので、リアンは何も言い返せなくなっている。
ゲームに誘ったのは俺なので共犯みたいなものだが、それはチカには内緒にしておく。
「大体リアンはいつも……」
「おい……」
小さいが圧倒的な存在感を放つ一言が聞こえると同時に、チカの加護で浮いていた家具達が一斉に床に叩きつけられるように落ちた。
神子都がコントローラーをゆっくり置き、振り向くとそこには2人目の般若がいた。
「イチゴが落ちたぐらいでピーピーうるせぇぞ、拾って食えばいいだろ。こっちは今いいとこだったんだよ」
「はぁ!? あんたこそゲームごときでいちいちムキになってんじゃないわよ!」
争う内容のレベルは底辺だが、人が人である。
神子都とチカが言い争っている間はまだ平和である。
とりあえず、部屋が破壊されないことを願いながら、壁際に避難する。
「しまったなぁ」
リアンをゲームに誘った事を少し後悔したが、楽しんだ代償が来たのだと思えば少し納得できる気がした。
本当はホラーゲームにして、ゲームよりチカと神子都の方が怖いよっていう展開にしたかったんですけど、いい感じのゲームが思いつかなかった。
進行度0.8%




