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第19話 とばっちりビーチ

前回投稿したのが11/26、今日が12/28......

ずいぶん逃げたな

 神子都達が鬼ごっこを遊び終わる少し前。

 (ミコト)達、ほとんど姫乃だが、熱心に砂の城を建てていた。


「よしっ、形は出来たから後は模様を入れればおしまい。(ミコト)、神子都ちゃんの方はどんな感じになってる」


 堀を作る仕事を終えた(ミコト)は暇になっていたので、神子都達が遊んでいるであろう方向を眺めていた。

 最初は何も見えなかったが、途中から水のドームが出てきたので、遊んでいる位置だけは確認する事が出来る。


「水のドームがあるのは見えるけど、何やってるのかはこっからじゃ見えないな」


「なに? 水のドーム? 私も見る」


 姫乃は城の製作を中断して、駆け足で俺の隣に来た。

 遠くがよりハッキリ見えるように、額に手を当てて覗き込むようにしている。


「かなり大きいんじゃない、あれ」


「この距離であの大きさで見えてるから、相当だと思うよ」


 姫乃と水のドームの大きさについて話していると、その側面が大きく盛り上がったのが見えた。


「あれ、絶対に神子都の仕業だろ」


「閉じ込められてるみたいだけど、大丈夫かな? 今の奴じゃ出られてないと思うけど……」


 そんな風に心配をしていると、唯一見ることが出来ていた水のドームが崩れて何も見えなくなった。

 そうなると神子都達は見えず、城には触れずとやる事が無くなってしまったり

 また暇になった俺はそこら辺をウロウロしていたら、


(ミコト)ちょっと来て! この城動かしたいんだけど」


「えっ? そこで作ってちゃダメなの?」


 どうして城が壊れるリスクを冒してまで移動させたいのか、その時は理解できなかった。

 ここまでなんの問題もなく来ているので、このままやればいいのではないかと思っていると、


「このままここで作ってたら、波が来ちゃうよ!」


 と言われ、海を目をやったところでやっと状況を把握する。

 1つだけ、やけに不自然に盛り上がっている波がある。

 おそらく、先ほど見ていた水のドームを形成していた水が、一気に解放されたことによって発生したものだろう。

 

「動かしたい理由は分かったけど、どうやって運ぶのこれ?」


 姫乃が建てている城はランドセル程の大きさがある。

 しかも、所々に軽くつついただけで崩れそうな細かい作りが含まれているので、運びにくさと崩れやすさの両立が完璧である。

 どう転んでも落城ルートだろうが、可能性がまだギリギリ残っているのは運ぶ方だろう。


「クリアファイルを下に挟めば持ち上げられるでしょ、(ミコト)は他の荷物を運んで」


 姫乃はカバンから中身を抜いたクリアファイルを取り出すと、それを城の足元に滑り込ませた。

 そして、城の背後から両手を砂の下に潜らせて、すくい上げるように持ち上げる。


「よし、離れるよ!」


「いや……。うん、急ごう」


 その状態を保ちながら逃げ切れる気がしないが、姫乃があまりに自信に満ちているため、心配するのをやめてしまった。

 波はもうすぐそこまで迫って来ている。

 しかも、近くに来た波は思っていたよりもかなり大きい。

 全力で走ってはいるが、砂に足を取られるし、荷物が邪魔だしで、上手く走れない。

 姫乃は俺よりも動きに制限がかけられているので、目に見えて遅くなっているのが分かるが、それでも俺の前を走っている。

 そして、全力疾走しているにも関わらず、腕で上手く振動を抑えているので、城の形も保たれたままだ。


「ねぇ! これ、まずくない?」


「城まで守ろうとしたのは、やっぱりやりすぎだったかな?」


 2人で仲良く波に飲まれ、押し流される。

 少しぐらいなら踏ん張れるかと思いきや、ティッシュのように吹き飛んだ。

 しかも、押された後は沖の方に引き込まれる。


「グボッ、ガボッ」

 

 直前まで全力疾走していたのに、満足に息が出来ない状態になるのは流石にやばい。

 パニック状態になった俺はもがき始めるが、もちろん波はそんなのお構いなしに流れ続ける。

 本当に死ぬと思ったその時、金網のようなものに引っかかって体が止まった。

 最後の力を振り絞ってそれをよじ登ると、体が待ち望んでいた空気と再会した。

 

「はぁーっ、はぁーっ」

 

「大丈夫か? すまん、遅くなった」


 声のする方に顔をあげると、神子都がいた。

 どうやら、神子都が金網で俺のことを助けてくれたみたいだ。


「なんとかね……。ありがとう、助かった」


 神子都と離れてすぐにこれなので、これからは極力離れないようにした方がいいと確信した。

 しばらく金網に張り付いていると、波はだんだんと落ち着きを取り戻し、来た時と同じ大きさまで小さくなった。

 やっと落ち着けるかと思ったが、姫乃の姿が見当たらない。


「姫乃ー!?」


 必死に呼びかけていると、浅瀬で姫乃が立ち上がるのが見えた。

 左手にクリアファイルを持ち、わかめを乗せた頭を俯けながらこちらへ向かってくる。

 頑張って守っていた城は結局崩されてしまったようだ。

 遠目にみても特に怪我は見当たらないが、足取りがやけ重たそうに見える。


「大丈夫、怪我でもしたか?」


 近付きながらそう言うと、姫乃は何も答えずに右手で頭のわかめを掴み砂浜に叩きつけた。


「くそ〜、間に合わなかったか〜」


 目を瞑りながら空を見上げている姫乃は、とても悔しそうにしている。

 人としての能力が限界にまで達しているとしても、人である以上出来ることには制限がある。

 光の速度では走れないし、生身では宇宙空間で生きられない。

 とはいえ、波にさらわれたのに普通の服で何事もなかったかのように戻って来たのは流石である。

 姫乃にかける言葉を探していると、神子都達が何やらコソコソと打ち合わせをしているのが目に入った。


「……それじゃあ、全力で……、うん、頼んだ」

 

「何やってんの?」


「いや、あたし達のせいで酷い目に合わせたからな。その埋め合わせをな」


 ノメノメと神子都で何かやるようだが、見当がつかない。

 2人でイルカショーのような事でもするのだろうか。


「何やるかなんて考えてなくていいから、あいつに早く教えてやれ」


「そうだね、楽しみにしてるよ」


 それについてのことは神子都に任せて、俺は姫乃に今から始まる事を知らせる。

 俺達が話している間、姫乃は1人で棒倒しをやっていた。

 極限まで砂を削られたそれは、最後までチョコたっぷりのライバル商品みたいになっている。


「なんか神子都達が面白いことしてくれるらしいよ」


「なんで急に?」


「迷惑かけたお詫びだって」


 そんなことを話していると、さっき聞いたばかりの音がまた聞こえて来た。

 唯一違う点は、前回のよりも遥かに大きな轟音を立てているということだ。


「さあ、来たぞ!」


 神子都の言葉が聞こえると共に目に入ったのは、空をも飲み込まんとするほどの巨大な津波だった。

 気持ちが良いほどの晴天にカンカンに照りつけてくる太陽、暑さを和らげる涼しい潮風に巨大津波。

 どう考えても呼んでない奴が混ざっている。

 早く帰ってもらえないだろうか。

 ついでに太陽ももうちょっと離れてほしい。


「これって、被害無しで楽しめる奴なの?」


「あたしに任しとけば大丈夫だ」


「じゃあ、今回はノメノメに勝ったんだ」


「それは……、ほぼあたしの負けだったな」


 本当に大丈夫なのだろうか。

 今からでもノメノメにこの津波を止めてもらうのが賢明な判断な気がする。


「まあ、信じて待ってな」


「今回は流石に不安だよ」


 いつもは助かるけど怖いという感じだが、これは助かるか分かないという1つ上の怖さがある。

 俺がこんな会話をして不安な様子を見せているので、姫乃も本当に面白い事がこれから起こるのか疑い始めた。


「なんか(ミコト)の反応が怪しいけど、私まだ死にたくないよ?」


「一応、神子都はいけるとは言ってる」


「ならいけるんじゃない?」


 そんなにあっさり受け入れられるものなんだろうか、自分の感性が間違っているのでは無いかと少し心配になる。

 そう言う俺も、神子都に頼るのが1番助かる可能性が高いとは思っているし、最早そうするしかない。


「本当に頼んだぞ神子都」


「だから、大丈夫だって」


 神子都は俺たち背を向けて津波と対峙すると、空に回し蹴りを放った。

 そして、回し蹴りの衝撃波と津波が衝突した。


「おぉ、凄いな」


「……これが神様か」


 巨大津波は神子都の1撃で見事に全て弾け飛び、空に見事な虹を描いていた。

 それを見た姫乃は、神子都達との力の差を感じているようだ。

 虹が出たことより、虹を作ったことに対して反応しているように思えた。

 せっかく神子都達が頑張って作った虹だったが、数十秒経った所で徐々に薄くなり始め、最後には消えてしまった。


「こんな感じでどうだ?」


「いい感じだったよ、最初は不安だったけどなんとかなって……。いやでも、こんな力使っていいのか? 前は使えるけど使わないとか、代償がなんとかって聞いたけど」


 それを聞いた神子都は手を後ろに組みながら、目を横に逸らした。


「……今日の海はこんな所にして、早く帰って寝た方がいいんじゃないか? 色々あって疲れただろ」


「それはとりあえず姫乃に聞いてみるよ、この話はまた帰ってから詳しく教えてもらおうかな」


 話をすり替えようとする神子都に逃げられないように釘を刺しておく。

 苦虫を噛み潰したような顔をしている神子都は置いておいて、姫乃に次に何をするのか聞く。


「今からどうする?」


「今日もう海はいいかな、いいものも見れたし」


「それじゃあ帰るかって言いたいけど、これじゃ電車に乗れんな」


 波のせいでずぶ濡れになった服は、この暑さでもまだ乾かない。

 しかも、カバンも濡れたので、中に入っている教科書もお釈迦になっているだろう。


「乾くまで歩くしかないね」


「乾いても塩がなぁ」


 やっぱり着替えの準備をしてから来ないと駄目だなと思ったが、神子都がいたら準備をしてもどうせ無駄だ、ということに気付く。

 俺達が色々と準備している間に、神子都達は別れの挨拶を済ませて、海を後にする。

 テストの日なのにやたらと重いカバンを持ち、夏なのに風邪を引きそうなほど冷たい服を身に付けた状態での帰り道は、思っていたより長く感じた。

 

なんか、城の大きさを表す例がランドセルぐらいしか思いつかなかった。

あと、最近鼻水が止まんない。


進行度0.6%

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