第16話 替え時スピーカー
前回投稿したのが9/29、今が10/11……。
まだ大丈夫が積み重なるたび、時間が加速しながら過ぎていく。
異世界から戻って来てからは、特に問題も無く見慣れた通学路を進んで高校まで行くことができた。
教室に入って席に着くと、毎度お馴染みの奴が机に座って来た。
「おはよう命。今日もちゃんと一夜漬けしてきたか?」
「おはよう、姫乃。今日は一夜漬けも出来てないけど、謎の自身に満ち溢れてるよ」
昨日の夜は課題を終わらせている途中で寝てしまったが、恐らく、というか確実に神子都が助けてくれたので、全然勉強をしていないのに、無駄に余裕がある。
「へぇ〜、でもその自信の時に、点数高かった事あるっけ?」
姫乃は今までの俺を見て来ているので、信用を得られないのは仕方がない。
結果で示すことでしか、これは払拭できないだろう。
「まあ見てなって、今回はいつもと違うから」
「期待はしてないけど、楽しみにしておくね」
姫乃がそう言った後に、チャイムが鳴って先生が教室に来たので、彼女は自分の席に戻って行った。
コミュ英の問題用紙と解答用紙が裏向きで配られ、ちょっとした説明がされる。
「今配った紙はチャイムが鳴ってから見るようすること。後、リスニングはテスト開始から5分後に放送されます」
それを聞いた神子都が俺の頭上でボソッと、
「ああ、そんなのもあったな」
と言った。
この様子だと、リスニングの問題は自力で解かないといけないようだ。
いつも、テスト前は教科書を覚える事しか意識していないので、リスニングは毎回ぶっつけ本番でやっている。
それでも、俺のリスニングの得点率の平均は50%程度と、苦手とも得意とも言えないぐらいにはある。
テスト開始まで少しの沈黙が流れた後、再度チャイムの音が鳴り紙を裏返す音が部屋中に響く。
昨日は途中で寝てしまったのにも関わらず、最初の5分で問2の「適切な単語を①〜④から選べ」と「適切な単語を入れなさい」を終わらせ、問3の長文問題に取り掛かれるほどスムーズに解けるようになっていた。
そこまで進めたところで、遂にリスニング問題が始まった。
黒板の上にあるスピーカーから、音質の悪い音声が流れ始めたので、意識を耳に集中させる。
「Hi,Ken.
I went to ^]?|+|!\!<%,[*|£,+?€<!]$\%,€\!]$|~ yesterday.」
最初の1文を聞いて理解した。
今回のリスニングは聞き取れない方の奴だということに。
さっき俺の得点率の平均が50%と言ったが、振れ幅が大きい。
聞き取りやすい時は満点近く取れるし、逆に聞き取れずにほとんど外すこともある。
そして、今回は外れの方に当たってしまった。
(やばい、どの選択肢もそれっぽく見える……)
時々出てくる超初歩的単語だけを聞き取ったが、それだけでは選択肢を絞ることが出来ない。
しかし、まだ2周目が残っているので、次こそはと1周目よりも更に集中して聞く。
(なんとか、2択までは絞れたな)
絞れた2択の内に正解があるのかどうかは分からないが、1番自信のある選択肢を選んで、なんとかリスニング問題を切り抜けた。
残りの問題は教科書に載っている長文から出題されているので、1度も手を止めることなくスラスラと解いた。
20分程時間が余ったが、見直しをしたい問題がリスニングだけなので、諦めて寝ることにした。
ここで見直して、選択肢を変えても変えなくても後悔する未来は変わらない。
それだったら見ない方が精神的に良い。
よだれが垂れないようにプリントを裏返して机の隅に寄せて、机に突っ伏して少しの間眠った。
テストの終わりを告げるチャイムが鳴り終わる頃に目を覚まして、解答用紙を前に回す。
寝ている間に少し固まった体を伸びをしてほぐすと、血液が勢いよく流れ始め、目眩がしたので急いで机に手をついて堪える。
そして、その場面をちょうど姫乃に見られていた。
「ねぇ、大丈夫?」
「大丈夫、ちょっとクラッと来ただけ」
まだ目眩が治っていなかったので、下を向いたまま返事をした。
それから、10秒も経たない内に目眩は治ったが、体と頭にはまだじんわりとした熱が込み上げて来ていた。
「それで、どうだったテストは?」
「リスニングがちょっと難しかったかなって思ったぐらいかな」
「確かに、リスニングはちょっと難しかったね」
姫乃が学校のテストに対して「難しい」なんて言うのは滅多にないので、少しばかり驚いた。
「やっぱりそうだよな、今回は聞き取りにくかったよな」
「そうそう、機材の調子が悪いのか今回はノイズが酷かったからね。まあ、多分あってるからいいけど」
「なんだよ、英語関係ないところじゃん」
せっかく難しいって言ったんだから、どこかの英単語が聞き取れなかったとか、聞き取れたけど意味をド忘れしたとかであって欲しかった。
勿論、今までそんなことがあったことは無い。
「この完璧超人め」
負け惜しみのような言葉を吐き捨てるが、姫乃は自分の事をそんな風には思っていないようだった。
「いや、この程度じゃまだまだだよ」
姫乃はまだ神様を倒すことを諦めていないし、俺もどこまでやれるのか気になっている。
姫乃が優れていると言っても、それは人間の中での話である。
俺が今まで見てきた神様達と比較するとなると、まだ手も足も出ないだろう。
「まあ、そうとは言いづらいけど……」
「まあ見ててよ、いつかはやってみせるから」
「姫乃なら本当にやりそうだな」
俺がそう言うと、姫乃はニコッと笑った。
休み時間の終わりを知らせるチャイムが鳴り、先程とは違う先生が入って来て、プリントを配り始める。
すると、隣に座っている姫乃が小声で話しかけて来た。
「そういえば、今日は調子良さそうだからアレやる? 点数勝負」
「いいよ、今日は負ける気しないからね。だけど、数Bだけにしてよ」
神子都の力で解けているだけなのに、随分と大きく出てしまった。
これを聞いていた神子都に、
「あんまり調子に乗りすぎるなよ」
と言われるぐらい、調子に乗った。
「じゃあ、その条件でやろっか」
この勝負を受けたのは良いが、姫乃が相手だと負けか引き分けしか取れない。
ご存知の通り、姫乃は満点しか取らないからだ。
先生の開始の合図を聞いてから問題を解き始めるが、さっきのコミュ英の時と違って不安要素は無い。
手こずることなく全ての問題を終わらせて、シャーペンを置くと隣でも同じ音が聞こえた。
姫乃も既にテストを終わらせたようだ。
神子都の加護がついている俺と素の状態で張り合う姫乃は、化け物であると再度ここで認識した。
何もする事がない暇な時間を乗り越えると、チャイムが鳴り最後のテストが終了した。
神子都にやってもらった課題を提出して、中身がスカスカの軽いカバンを背負う。
「よし、帰るか」
「あっ、ちょっと待って命。今日暇?」
帰ろうとした矢先に、姫乃に呼び止められた。
「今日はもうする事ないから暇だよ」
もうテストは終わったし、明日は土曜日なので多少の無茶は出来る。
「テストも終わったし、夏だしこのまま海でも行かない?」
「おっけい、じゃあ行くか」
即決でこのまま直接海に行くことになった。
その点については問題無く姫乃は喜んでいたが、俺の行動に1つ不満があった。
「それより、なんで1人で帰ろうとするんだよ」
「ごめんて、今度からちゃんと誘うから」
両手を合わせて謝罪すると、
「次は無いからな」
とイエローカードを出された。
なんとか許してもらえた俺は姫乃と一緒に、学校の最寄りの駅に向かって行った。
設定を固めてなさすぎてどんどん崩れていくのがわかる。
まあ、プリンとか茶碗蒸しは崩れてても美味しいから、設定が崩れても問題ないのか。
ただし、作品が面白い場合に限る。(絶望)
進行度は0.3%です。これ書くのすぐに忘れる。