表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/41

第15話 2回攻撃

王宮の間取りを調べてたんですけど、よく分かんなかったので、勝手なイメージだけで書きました。

そっちの方が逆に共有しやすそうな気がするのは自分だけでしょうか?


とりあえず、ごめんよ、王宮。自分には難し過ぎた。

「それで、どこに降りる?」


「ちょっと待ってろ」


 神子都が目を凝らして、王宮全体を隅々まで見始めると、すぐに降りる位置に指を指した。


「偉そうな人達が長い机を囲んで会議をしてるのが見えたから、そこに行くぞ」


 指先は王宮の角の部屋を指していたが、考えなしに王宮のど真ん中を目指していたお陰で、落下する位置については大丈夫だった。


「わかったけど、そんなとこに突っ込んで来る奴に情報なんてくれるか?」


「いざとなれば、強引に聞き出せばいいだろ」


「それは、やめてくれ」


「冗談だ。だが、相手の出方次第では本当になるかもな」


 神子都と話しているうちに、王宮の屋根がもう目の前まで迫って来ていた。

 神子都が落下地点に大きなふかふかのマットを用意して、そこに俺がダイブする形で、王宮の上に着地をした。

 「ベッドに飛び込む」のレベル最大をやっている気分になるので、結構気持ちよかった。

 ふかふかで気持ちいいのは良いが、手足が沈みすぎるので立つのが大変である。

 俺が這いずって抜け出したところでマットの仕事は終わり、神子都が回収した。

 屋根に着いた所までは良かったが、そこから下に降りれるようなものが1つもない。


「降りるとこ無いけど、どうするの? 壁に張り付いて降りてから、窓割って侵入するの?」


「そんな事出来るのか?」


「……」


 脳内でシミュレーションを行ってみたが、何度やっても落下する結果しか得られなかった。

 イメージですら出来ないのに、実際にやって出来るはずがないので、この案は一旦置いておくことにした。


「無駄な事考えてないで、ここに立て」


 身を乗り出して王宮の外壁を見ていた俺が振り返ると、屋根に身長計の足を乗せる部分にある、足跡のマークが描かれていた。

 言われるままに移動して、そのマークの上に立つ。


「これは?」

 

「エレベーターみたいなものだ」

 

「なるほど、ここから真下に降りていくのね。……でもそれって、会議のど真ん中に行かない?」


「珍しく察しがいいな、じゃあ行くか」

 

 神子都が話し終わると、いきなり足場が無くなった。

 今度は重力の言いなりになって、真下に落下する。

 しかし、すぐ下の部屋で会議をやっていたらしく、落ちたと思った次の瞬間には、純白のテーブルクロスの上に両足で着地していた。

 俺はその着地の衝撃を上手く吸収出来ずに、尻餅をついた。

 

「イッテ〜!」


 すぐ下の階に降りたと言っても無駄に天井が高く作られているので、足裏が焼けているかのようにジンジンと痛んだ。

 その痛みに気を取られている内に、お偉いさんの護衛であろう人達から首元に無数の武器を突き付けられていた。

 槍に両手剣、短剣、レイピア、鉄扇などの綺麗な装飾だったり、かっこいい紋章が入っている武器が、目線を下げると沢山見える。

 首の後ろにある武器については、見えないので何があるのか分からない、ただ1つや2つでは無い事だけは確かだ。

 俺の身動きが取れなくなっていると、丁度、喉仏の下にレイピアを当てている、光を吸い込むような深い緑色の髪をした女騎士が警戒した声で話しかけてきた。


「貴様、何者だ? どうやってここに侵入した?」


「えっ? どうやってって……、普通に上から落ちて来ただけです」


「……」


 考えがまとまらないまま質問に答えたが、そこから何も動きが無い。

 視界にいる人達は鋭い目つきを変えないまま、瞬きもせずにこちらを睨み続けている。

 相手は動かないし、俺からは動ける状態に無いので、完全な膠着状態になっている。

 そして、この状況を打開したのはここにいる誰でもなく、突如目の前に現れた、黄色いベレー帽を被った手のひらに乗るほど小さい少女だった。


「ちょっと、ちょっと、ちょっと〜! あんた、なんでウチの作品の中にいる訳!? どうやってこの世界に入って来たの!? ていうか、あんた誰!?」


 その少女は初対面の相手に対して指を指しながら、耳が痛くなるような高い声でキィキィと喚いている。

 さっきもこんな事聞かれたなと思いながら、今度は出来る限り丁寧に答えた。


「僕は(ミコト)って言います。元の世界の曲がり角で神様とぶつかって、この世界に来ました」


「……あ〜、なるほどね。ちょっと待ってて」


 茶色いクマさんのポシェットから、黒のスマホを2台取り出して、同時に電話を掛け始めた。

 少女は眉間にしわを寄せ、つま先で宙をトントンと叩きながら、相手が電話に出るのを待っている。

 しばらくすると、両方の相手と電話が繋がり、それと同時に、


「あんた達! 何やってんのー!」


 目の前で花火が弾けたんじゃないかと思うほどの、大音量の可愛い声に鼓膜が悲鳴を上げる。

 恐らく、電話越しの相手も俺と同じように、耳をやられただろう。

 しかし、そんな事はお構いなしに、少女は怒り続けた。


「さっさとこっちに来なさい! ……どこって、『餓死したって伝えたのに、このスキルはないですよ!』の世界だよ! 王宮の会議室にいるから、急ぎなさい!」


 言いたい事を言い終わったら、すぐに電話をブチ切りした。


「ふーっ、今呼んだから、もう元の世界に戻れるよ」


 電話中はあんなに怒っていたのに、それが終わったらすぐに冷静になっていた。


「ありがとうございます。それに加えて、もう1つお願いがあるんですけど……」


「何?」


「この武器って下ろせますか?」


「ああ、ごめんごめん。すぐに下ろさせるね」


 少女が先程電話を掛けていたスマホをいじると、護衛達が武器を納めた。

 しばらくすると、会議室の扉が勢いよく開き、作業服の男性2人が息を切らせて来た。

 片方は曲がり角でぶつかった時に見た神様だが、もう片方は初めて見る神様だった。


「「ご迷惑をお掛けしてしまい、申し訳ございませんでした!」」


 その2人は部屋に入った勢いそのままに、俺と神子都に深々と頭を下げて謝罪をした。

 そして、それぞれ胸ポケットから自分の名刺を取り出して、渡し始めた。

 俺とぶつかった方は異世界の神様、もう1人は転生の神様で異世界の神様の世話役をしているとのことだった。

 曲がり角でぶつかったことに関しては、俺の方にも責任があると思うので、こちらからも謝っておく。


「こちらこそすみませんでした。でも、この世界を楽しめたので良かったです」


 ほとんどの時間は頭痛と吐き気に悩まされていたが、元の世界では絶対に出来ない事ばかりだったので、なかなかに貴重な時間になった。

 少女も同じように名刺を渡してきたが、前の2つと比べてやけに丸みを帯びた字体で、「作者の神様 ペンネーム リテラ」と書かれていた。


「ごめんね、ウチの部下達が迷惑かけて。お詫びと言っては何だけど、力になれることがあったらいつでも呼んで。その名刺を持って念じてくれれば、いつでも行くから。……あんた達、分かったね?」


 リテラが異世界と転生の神様に目を向けると、2人ともコクコクと頭を縦に振って頷いていた。

 

「それじゃ、(ミコト)君を元の世界に戻してもらっていいかな?」


「じゃあ、僕をすり抜ける感じで歩いて来てもらっていいですか?」


 言われた通りに、異世界の神様に向かって歩いて行き、体をすり抜けるとそこは異世界の神様とぶつかった所だった。

 時間はどうなっているのかスマホで確認したが、時間の進み方が違うのか遅刻になるほどのロスは無かった。

 近くの壁に立て掛けてあった自分の自転車に乗って、いつもより曲がり角に注意しながら学校に向かう。


「異世界はどうだった?」


「思ってたより普通だったな」


「神子都にとってはあんまりだったかもね。俺にはなかなか刺激的だったけど」


 朝から予想外の寄り道をさせられて疲れたのに、ここからまだテストが残っている、中々に濃いスケジュールになってしまった。

 こうなるぐらいなら、異世界から帰って来ない方が良かったかもしれないと、馬鹿なことを考えながら学校という地獄に向かい始めた。

異世界ものじゃないから、ささっと帰りました。

「力になるよ」って言わせたけど、こやつらはこんな風に出せたらいいなってイメージが1つも無いからマズい。

再出演させてあげたい気持ちはあるんですけどね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ