#6
そしてその夜、レイチェルはおばあさんと別れて、一人でベッドに入っていた。
僕は廊下に立っていたが、やがて足が冷たくなってきたため、フカフカのじゅうたんが敷いてあるレイチェルの部屋に入った。
レイチェルはもうベッドの中に入っていて、眠っていた。
「寝るの早いな……」
そう思いながら、僕は壁に寄りかかって座っていた。
その一時間後、レイチェルはパッと目を開けて、廊下に出た。
僕は壁を通り抜けて廊下に出た。
泥のようなムカッとするにおいがした。
それに、さっきと比べて廊下に土がついてる。
「何だろう。いやな感じがする……」
レイチェルはそう言いながらも、恐る恐るおばあさんが入った部屋に入った。
僕は、ドアの裏でこっそり見ていた。
「――ッ⁉」
部屋の中に大きな狼がいた。
おばあさんは動いていなくて、部屋には血が飛び散っている。
「キャ――ッ!」
レイチェルは飛ぶように走って、家から降りた。
しかし、その悲鳴を聞いた狼は驚いて、そのままレイチェルを追いかけ始めた。
僕は彼女を抱えて逃げるか、声で導こうかと思ったけど、僕は今透明だ。
手が通り抜けてしまうし、僕の声も聞こえないから、見守ることしかできなかった。
レイチェルは物置小屋に駆け込んで、ボロボロの木の閂を駆け込んで、奥でビクビクと怯えながら隠れていた。
しかし、狼も野生の勘が鋭く、嗅覚もいい。
だから、じりじりとレイチェルのにおいをかぎ取って近寄っていた。
そして、居場所を突き止めたオオカミは、気のドアに体当たりしていた。壊れるのも時間の問題だろう。
そう思った時、僕の体を銃弾が貫いた。いや、正確には通り抜けただ。
僕の背後から、誰かが猟銃で撃ったんだ。
「大丈夫かい?」
まだ煙が立っている猟銃をケースに入れて、物置小屋にいたレイチェルを保護した。
「うぅ、うわぁーーーん!」
レイチェルに近づいたのは、猟銃のケースを背中に背負った男性だった。
「怖かったね。僕は家の中を見てくるから、ここで待っていてくれるかい?」
「ぅ、うん」
そう言って、男性は家の中に入って行った。
僕なら、こんな小さな子をこんな真夜中に置いていくなんて絶対しないけどな。一瞬そう思ったけれど、ついさっきまでレイチェルはあの惨状を一人で目の当たりにしたんだ。あの男性は家の中のでのことを知らないけれど、また中に入ったらパニックになるかもしれないと考え直して、さっきの考えはすぐに消えた。
僕はこの世界に干渉できないから、何もトラブルが起きないようにレイチェルを見守っていた。
十分ほど経って、家の中から男性が出てきた。
「家は分かるかい?」
「うん」
「そうかそうか。じゃあ、そこに送ってあげるから、一緒に行こう」
「おばあちゃんは?」
「大丈夫さ。今、ちょっとだけ眠っているのさ」
男性は、それ以上何も言わずにレイチェルの手を取った。
最後まで読んでくださりありがとうございます。