#5
――ここ、どこだろう。
何もない真っ暗なところ。
目の前には、ドアが一つ。
「行くしかない」
ドアの向こうは、森だった。
そうだ、もし迷子になっても戻れるように、目印を……。
そう思って振り向いたら、何もなかった。
ドアすらなかった。どこを見渡しても森。そうだ、これはきっと夢なんだ。
じゃあ、ここを歩いてもいいんじゃないか?
何かに導かれるように、僕は歩き出した。
少し歩くと、赤い一軒家が見えた。
誰かいるかもしれない。
そう思って、ドアをノックしてみようとした。
すると、右手がドアの向こう側に行ってしまった。そう、感覚こそないが、どうやら僕は今透明人間らしい。
もっと夢っぽくなったな。
「じゃあ、明日おばあちゃんの家に行ってきてちょうだいね」
「うん! おやすみなさい」
赤い服を着た女の子と、その母親らしき人がいた。
女の子は母親と別れて子供部屋に行った。
僕は透明人間だから、気づかれることもなく子供部屋に入った。
壁には「レイチェル・ホワイト」とサインが書かれた飾りが掛けられている。
ってことは、この部屋を使っているこの子が子供のレイチェルか。
それに、母親といるなら、孤児院に来る前の三歳くらいということになる。
その時、目の前が真っ暗になった。
「じゃあ、ママいってきま~す!」
レイチェルは次の日の朝、花の入ったかごを持って外に出て行った。
鼻歌交じりにルンルンと、スキップしながら歩いてる。
しかも何回かコケながら。その度に声を上げながら大泣きして、目に映った虫や花に気を取られて、涙が止まる。
“おばあちゃんの家”らしきところに着くと、ドアをノックした後にすぐ入った。
「おばあちゃん! おみまいに来たよ~」
「おやおや、ありがとうねえ」
「うん」
おばあさんも優しそうな人だ。
レイチェルの頭をなで、微笑みかけていた。
そして、昼食を食べて、おばあさんはレイチェルにこういった。
「今日はいつもより日の入りが早いから、今日はここに泊って行きなさい」
「え、でもママが……」
「大丈夫。ママにはもう連絡しているからね」
「分かった」
レイチェルはおやつを食べながら、そう言った。
最後まで読んでくださりありがとうございます。