#4
「さてと、僕も部屋に戻ろうか」
エールは今日も一人。寂しがっていないだろうか。
――明日、屋敷に行ってみよう。
僕は眠りについて、翌日を迎えた。
「じゃあ、行ってきます」
「行ってらっしゃい」
エールの好きな作家の新作を買って来たけれど、読んでくれるかな。
それに、彼女が外の世界へ行く日は来るのだろうか。
来る……。いや、やっぱり来なくていい。
だって、もし外で生きてしまったら……僕も一人になるじゃないか。
エールはベッドの上で本を読んでいるだろう。
そう思って、僕は寝室の窓をノックした。
「久しぶりだね、エール」
「ええ、今開けるわ」
寝室に入ると、彼女はせき込みながらベッドに座った。
ベッドサイドの机には大量の本が積み上げられている。
「エールは、寂しくはないのかい?」
そう言いながら、僕もベッドに座った。
「――平気よ。一人の方が良いもの」
「そう……」
「でも、あなたには離れないでほしいわ。……おかしいわね。だって、一人がいいのに、あなたが私の世界から消えたら、私壊れちゃいそうなの」
――ッ! いや、違う。もう彼女は壊れているんだ。
だって、彼女と会う時はいつも頬に涙の流れた跡があるんだから!
僕の前で泣いたことはないけれど、一人きりの時はいつも泣いているんだ。
「どうしたの?」
「ううん、何でもないよ! あ、今日は星がきれいに見えるらしいんだ。だから、エールも外を見るといいよ」
「ええ、分かったわ」
「うん、じゃあね」
屋敷から出て、僕は持っていた本を見た。
「あーあ。結局渡せなかったなあ」
日本にはチョコレートを好きな男の子に渡す日があるらしい。
僕もそんな日の女の子みたいだ。
「あ、おかえりなさい! 先生」
「うん、ただいま」
最後まで読んでくださりありがとうございます。