#1
「えっと、君がエドワードだね」
「はい。エドワード・ホームズです」
「僕はジョン・ワトソン。ここの孤児院の管理者だ。みんなは『先生』って呼んでるよ」
優しすぎて、頼りなさそう。でも、博士号を持っている人にしか与えられないバッジを白衣に着けているから、頭が切れることは確かだな。
「これからよろしくね」
「僕も、よろしくお願いします」
少しだけ頭を下げると、僕の頭の上に頭を載せられた。
「えっと、じゃあ、中に入ろうか。君にはみんなに渡してる手帳も渡さないといけないし」
「手帳ですか?」
「うん、みんなに日記をつけてもらいたくて、渡してるんだけど……。最近はみんなその日に起きたことを絵に描いてるんだよ。あ、それでも構わないけどね」
そう言いながら、施設の中に入った。
「ここは三階建てで、ここがロビー。左側のあの木でできたドアの向こうが食堂だよ。エドワードが使う部屋に案内しようか」
そう言いながら、ロビーの隅の階段で二階に上がった。
「ここがエドワードの部屋」
ドアには僕の名前のイニシャルのドアプレート。中は木目調の本棚とベッド、それと椅子と机が置かれているだけの殺風景な部屋。
「あ、エドワードは本は好きかい?」
「はい」
「それなら、上の図書館を使うといいよ。でも、まずはみんなに挨拶するといいよ。他の部屋にいるから」
「分かりました」
「あっ! それとこの手帳だね」
もらったのは深緑色のカバーの付いた小さな手帳だった。
「じゃあね。夕食にまた会おう」
そう言って、どこかに行った。
「あっ! 君がエドワード?」
右隣の部屋から、赤髪の子が出てきた。
「あたし、レイチェル・ホワイト! よろしくね!」
「うん、よろしく」
「えっと、今宿題中だから、じゃあね!」
「うん、頑張って」
レイチェルの隣の部屋には「S・A」の文字。
ドアをノックすると、すぐに部屋から中性的な顔立ちの小柄な子が出てきた。
「あ、君がエドワード?」
「私はアメリー・スミス。よろしくね」
「うん、よろしく」
僕がそう言うと、アメリーの向かい側にあるドアが開き、金髪の女の子が出てきた。
「ダメよ、アレン。エドワードは今日来たばかりなんだから、信じてしまうわ」
「あはは! ごめんね、エドワード。僕はアレン。あ、男だよ。じゃあね!」
そう言って、ドアを閉めてしまった。
「ふふっ、ごめんなさいね。わたくしはフローレンス・スノーよ。ああ、エドワード。好きなお茶はあるかしら? 色々あるのよ」
ああ、フローレンスは紅茶が好きみたい。
でも、僕はそんなに詳しくないから断っておこう。
「ごめん、他の子とも挨拶しないといけないから。紅茶はまた今度」
「そう……。でも、仕方ないわね。分かったわ。引き留めてごめんなさい」
「じゃあね」
そう言って、僕はフローレンスと別れた。
隣の部屋はネームプレートが付いていない。
ドアをノックすると、眠そうな男の子が出てきた。
「誰だ? お前」
「エドワード・ホームズです。これからここで生活するのでよろしく……」
「どーでもいいや。まあ、名前だけ言っとく。セシル・アーノルズ。ほら、行った行った」
動こうとすると、シャツの襟をつかんで耳元でこう言った。
「隣のエティのとこ行くなら、あいつに話合わせろよ。口下手だから」
「分かった」
隣の部屋をノックすると、小さな声が聞こえた。
「……は、はい……」
ドアの向こうに現れたのは、パーカのフードを深々と被った子だった。
「えっと、初めまして。エドワード・ホームズです。今日からここでクラスから、よろしく」
「あ、えっと、あの、お話は先生から聞いています。えっと、私はエティ・ローゼンです。こちらこそ、よろしくお願いします」
最後まで読んでくださりありがとうございます。