ありふれた異世界召喚 その2
お待たせしました。
ようやく異世界へ!
「おぉ……!」
と、喜びと唖然さが籠った声で僕はふと目を覚ました。
……目を覚ました?
その言葉に違和感を覚え、思考を巡らせる。
いつのまに僕は寝ていたんだろうか? もしかしてあの魔法陣に睡眠ガスが含まれていて僕たちが眠っている間に誘拐されたのだろうか?
…………。
そんな現実逃避をしてもキリがない。僕は現実を確かめるために自分の頬をつねるが痛みはちゃんとあった。
夢でないのなら……信じがたいが、ここは異世界と言うわけだ。
深呼吸を一度だけし、辺りを見渡す。
頭上には眩い光の石で照らされているシャンデリア。
床は正面のみ、レッドカーペットのようなものが敷かれている。
他の床は磨かれた灰色の石の様なタイルで敷き詰められているようだ。
正面には数段床から高く作られている金の装飾が付いた紫を基調とした玉座があり、そこには僕らを値踏みする様な視線で数を数えている豪華な服装の太った男が座っている。
そしてその男の両隣にはその男を守る様に立っている二人の騎士らしき格好をした者が立っている。
そして玉座から少し高い所には神聖的な雰囲気を感じられる背景に描かれている女性の壁画が飾られている。
そして僕らを包囲している十数人の兵士らしき者たち。
突然だが、僕が読んでいたラノベの中多くは異世界モノだ。
内心自分にもチート能力が目覚めてたりするかも……!
なんて少し心を躍らせたが、今僕たちは包囲されている。 浮かれるわけにはいかなかった。
状況を少しずつ把握し、落ち着きを取り戻すうちに一つ、おかしなことに気づいた。
アメジスト色の瞳の黒髪で左耳の方がサイドテールのロングヘアーの少女。
彼女はなぜか僕たちと同じ中学の制服を着ていた。
そんな目立つ人物は全校集会でも見たことがなかった。
何より彼女は教室にいなかったし、時間的考えても朝のホームルームの途中だったから生徒は教室にいる筈だ。
どう考えても怪しい少女にも気づかないほどにクラスメートはパニック状態だった。
このままじゃ駄目だ。
……とは言え、僕一人ではどうしようも無い。
だから僕と同じく趣味で異世界モノの小説を読んでいる輝羅に視線を向ける。
ーーしかしそこには悲しげな、なんて一言では表せない複雑な表情で動揺している輝羅がいた。
僕はこんな輝羅の表情は見たことなかった。
僕と綺羅は親友としての付き合いは短いが綺羅の視線の先は僕だった。
何か迷っている様にも見える。
一人の友として、親友として何とかしてやれないだろうか?
そう思いながら輝羅に近づこうとするとちょうど玉座で踏ん反り返っている男が喋り出した。
「よくぞ召喚に応えてくれた。感謝するぞ勇者たちよ」
その一言で段々とクラスメートたちは冷静さを取り戻し、怪しい少女にも気づいている人たちが増えてきた。
そんな中、冷静さを失っている者が一人……。
「召喚だと! ふざけているのか? ここは何処だ! 警察を呼ぶぞ!」
啓成先生だった。
啓成先生は学校では並大抵のことでは怒らない……と言うよりは興味がないらしく最低限度をこなすような印象の先生だった。
だが、中学生の僕らが殆ど冷静になってきていたのに大人である啓成先生が冷静じゃないのはどうなのだろうか?
そう僕が思っていると啓成先生は怒り気味に最新型のスマホを出して警察に電話をかけた。
……………… 。
『お掛けになった電話番号はーー』
啓成先生は途中で電話を切った。
「…………クソっ! 圏外か。おいそこで踏ん反り返っているお前、ここは何処だ!」
啓成先生は玉座に座る男……明らかに偉そうな人であろう者を指差して怒鳴った。
明らかにそうな人にそんなことしたら不味いんじゃ……。
その考えが的中し、次の瞬間玉座に座る男は怒鳴り声を上げた。
「無礼者が! この者を今すぐ最下層の牢へと入れよ!」
これは非常に不味い事態だ。
生徒を導く立場の先生が捕まるってことはクラスは荒れ放題だ。
それこそ岡田がチート能力を手にしてしまったのなら事態は悪化することは目に見えている。
まぁそれがここで許されるかは別だが。
「王よ! 勇者は貴重な存在では無かったのですか?」
純白の鎧を着た騎士の青年の一人は不満そうにそう言った。
どうやら僕たちは勇者と呼ばれる貴重な存在らしい。
異世界召喚モノのラノベでよく聞いた響きだ。
そして予想通り玉座に座る男は偉い人ーー王様だったようだ。
「この儂に口答えするのかライトよ?」
そしてこの青年の騎士はライトと言うらしい。
この様子を見るにこの国(?)では絶対王政の可能性もある。
僕らを奴隷にして手駒にするつもりなのかもしれない。
「いえっ! とんでもありません! 出過ぎた真似をして申し訳ございません!」
少なくとも今の会話から絶対王政の可能性は高いと分かった。
「うむ、分かればよい。兵士たちよ、この者も仮にも勇者の力を持つ危険な者だ! 牢の最下層へとぶち込め!」
勇者の力……それはやはり『チート能力』というやつなのだろうか?
「「「「「はっ!」」」」」
5人程の兵士と呼ばれた者たちが本物の鋭い槍を持って啓成先生を囲い、どこかへ……恐らく牢屋へと連れて行かれてしまったのだった。
次話も「ありふれた異世界召喚」の続きとなります。
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