騎士と魔族
真っ白に視界が染まった後、元の部屋の景色が目に映った。
「戻ってきた……のか?」
そんな息を吐く暇もなくドアを誰かがノックをして来た。
「誰?」
「休憩中に悪いけど俺は君に忠告するために来たんだ。入れてくれるかい?」
「忠告って……答えになってない。君は誰だ?」
すると声の主はため息をついてドア越しに名乗った。
「俺は紅蓮竜也。君と同じ日本人さ」
紅蓮竜也……魔王も言っていた奴だ。謎の預言者はコイツが僕に世界滅亡をさせることを望んでるとも言ってたっけ。
どちらにせよコイツを入れるわけにはいかない。
なんとかして帰ってもらおう。
「悪いけどクラスメートでもない君を入れるつもりは無い。帰ってくれない?」
「……おかしいなぁ。これまでの世界線では気づいた可能性はなかったのに……。こうなったら無理にでもその力を奪うしかないな」
紅蓮竜也がぶつぶつ言った後、次の瞬間、部屋のドアが吹き飛ばされあ。
僕は咄嗟に机を盾にし、ドアに直撃することは免れた。
「紅蓮竜也、君の目的は何だ?」
「なーんだ、気づいていなかったんだ。てっきり気づいてたから入れようとしなかったと思ったんだけどなぁ。……まぁいいか」
だけどここは王城だ。扉を壊したんだから騎士やらなんやらが助けにくるかもしれない。
「どうやら助けを求めてるみたちだけど無駄だよ。俺が入ってきた時点で防音結界を張ってたからね。誰も気づかないよ」
そう言って紅蓮竜也は僕に近づいて……
廊下の方から足音が聞こえてくる。
騎士ライトと綺羅が走ってやって来た。
「何事だ!」
「晴兎! 大丈夫!?」
「綺羅……それに騎士の人。どうしてここに?」
「凄い物音が晴兎の部屋の方からしたから騎士の人を呼んで駆けつけたんだよ!」
どうやら綺羅が助けを呼んでくれたらしい。
「貴様! 我が王が用意した部屋を破壊するとは……打ち首にしてくれよう!」
……まともな騎士じゃなかった!?
僕以外にも人はいるはずなのに……
「僕はやってない! そこの男が……あれ?」
紅蓮竜也はいつのまにか姿を消していた。
「問答無用!」
騎士ライトは背中に納刀していた大剣を抜き、咄嗟に反応できなかった僕はお腹を少し斬られ、部屋の壁に叩きつけられた。
「がはっ!?」
「ライトとか言う騎士、どうして晴兎を攻撃したの!」
「その者を庇う気か? その者は我が王が用意した部屋を破壊したのだ。その罪は死して償ってもらう」
「待って、ください。僕は何も……ゴホッ!?」
ルーアならなんとかなるかもしれない。
「ルーア、頼む」
[マスター!? どうしたのですかその傷! とにかく任せてください。少し体を借りますよ]
「アクセス神聖魔法10、無詠唱。発動します」
ルーアが僕の体でそう言うとすぐさま傷が塞がり、元通りになった。
「なっ!? 傷が全回復しただと!? 人間ではありえない回復速度……魔族か」
「魔族って……晴兎は人間に決まってるじゃん! 何言ってるの?」
「先程といい、魔族を庇うとは……貴様、内通者か?」
「……頭固いねーこんなんでどうして騎士が務まるのやら。とにかく! ここは僕に任せて晴兎はこの城から逃げて!」
「に、逃げるって……」
こんなどこかもわからない土地で逃げれるものなの!?
「いいから早く!」
「わ、わかった」
僕は綺羅の見たことも無いような剣幕に圧倒されて部屋を出て城の出口を探して走り出したのだった。
「紅蓮竜也って何者?」「ルーアって名前の付け方不自然じゃない?」「続きが気になる」
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