頭の悪い生徒
都内の某高校の教室の一室にて。
生徒:「先生、先生」
先生:「何ですか、田中君」
生徒:「頭が悪いから、早退しても良いですか?」
先生:「これは赤点者を対象とした補講ですよ、田中君。頭が悪いのならきちんと受講してください」
生徒:「言い間違いでした。頭が痛いので早退しても良いですか?」
先生:「奇遇ですね、田中君。先生も早く家に帰ってキンキンに冷えたビールが飲みたいです。なので、次からは事前に欠席の連絡をください。先生も休めますので」
生徒:「ちっ!」
先生:「舌打ちですか?田中君。腹立ちますが、今日は早く帰りたいのでスルーします」
生徒:「先生、先生」
先生:「何ですか、田中君」
生徒:「数学を勉強して、将来なんの役に立ちますか?」
先生:「(私が)学校からお給料が貰えます。皆さんの成績が良くなって、先生の評判が良くなれば教頭先生に出世できるかもしれません」
生徒:「先生の人生に興味ありません。文脈を読んでください」
先生:「ちっ!」
生徒:「えっ、先生が舌打ち?」
先生:「失礼しました。舌が滑りました」
生徒:「先生のそういうところ、大人としてどうかと思いますが面倒臭いのでスルーします」
先生:「数学は論理的な思考力を育みます。数字という客観的な観点を基に物事を判断するため、会話に説得力を持たせることができます」
生徒:「凄いですね!具体的には?」
先生:「頭が良く見えます」
生徒:「シンプルな理由だ!」
先生:(-。-)=3
生徒:「うわっ、ため息ついた!しかも顔文字使ってる!」
先生:「駄菓子屋で買い物をするとき、おつり計算が出来るようになりますよ」
生徒:「先生、投げ槍にならないでください。それと四則演算は小学生の算数の学習範囲です」
先生:「……。」
生徒:「先生!無視しないでください!」
先生:「失礼しました。田馬鹿くん」
生徒:「田中です、先生。それより私から一つ提案があります」
先生:「何ですか、田中くん」
生徒:「私、実は前のテストの答案用紙に名前を書き忘れてしまって、今回赤点になりました」
先生:「ええ、他に赤点いなかったので『面倒臭いな、こいつ』と思ってました」
生徒:「ダメなところ隠そうとしなくなりましたね、、、。で、自己採点したところ95点でした。なので追試を受けても一発合格する自信があります」
先生:「そうですか、それは良かったですね」
生徒:「そこで提案ですが、今すぐ追試を受けさせていただけませんか?そうすれば、先生は自宅に帰ってキンキンに冷えたビールが飲めて、私は空調の聞いた自室で昼のワイドショーが見れます」
先生:「意外な時間の過ごし方ですね。しかし、提案は論理的で且つ、合理的で先生も異論はありません。追試を用意したので3分で解いてください」
生徒:「3分って、どんだけ補講が嫌なんだよ!って思いますが面倒臭いのでスルーします」
サラサラサラ(追試用紙を記載する音)
生徒:「先生、出来ました」
先生:「田中くん、採点しました。満点です」
生徒:「採点、早っ!」
先生:「問1の答えを2倍にすると、問2の答えになります。あとはこれは問20まで繰り返すと採点完了になります」
生徒:「途中そうじゃないかな?と思っていましたが、面倒臭がりすぎですよ、先生」
先生:「それでは本日の補講はお終いです。良い夏休みを」
生徒:「さようなら、先生」
■■■ 完 ■■■